Blackmagic Designによると、アメリカの公共放送サービス(PBS)のドキュメンタリー「When We Were Shuttle」がBlackmagic Pocket Cinema Camera 6Kデジタルフィルムカメラで撮影され、編集、グレーディング、VFX、オーディオプロダクション・ソフトウェアであるDaVinci Resolve Studioがカラーグレーディングに使用されたという。

「When We Were Shuttle」は、PBS系列局のWLRN(フロリダ州マイアミ)によるドキュメンタリーで、スペースシャトルの発射に関わった類まれなる6名の男女の目を通してスペースシャトル計画を掘り下げる。本作は、彼らの思い出と資料を基に、計画の裏で展開した人間模様を紐解いていき、2011年の終了までにスペースシャトル計画が、関係者の人生に与えた影響を独自の草の根的な視点で映し出している。

ディレクターはザッカリー・ウェイル氏、撮影はカイル・マコノヒー氏が務めた同作は、2022年10月にケネディ宇宙センターのIMAXシアターで封切られた。

子供時代、ウェイル氏は宇宙飛行が大好きだったという。南フロリダで育った同氏は、NASAを訪れた時の思い出が今も心に深く残っていると語る。

ウェイル氏:宇宙少年団の一員として、初めてケネディ宇宙センターに行った時のことを今でも覚えています。着いた瞬間に、この場所とその歴史に非常に強い結びつきを感じました。

2019年、同氏はWLRNのドキュメンタリー「When We Were Apollo」も制作している。同作は好評を得たため、同局により次回作の制作も依頼された。

ウェイル氏:スペースシャトルは、この最初の作品からとても自然に流れるテーマのようですね。

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同氏はマコノヒー氏と以前に何度か仕事をしたことがあり、すでにとても良い仕事仲間であったという。様々なインタビューやフッテージを計画しており、また過去の映像も使用する必要があったので、使用するカメラ機材の選択肢は両氏にとって明らかだった。マコノヒー氏は次のようにコメントしている。

マコノヒー氏:いくつかの候補について話し合いましたが、Blackmagic Pocket Cinema Camera 6Kのサイズと形状は非常に大きなセールスポイントでした。被写体を実際の生活環境と仕事場でできるだけ多く撮影したかったので、Blackmagic Pocket Cinema Cameraでは何も装着せずに目立たないように、完全な背景として撮影でき、本当に良かったです。

このカメラは非常に扱いやすい設計ですね。カメラを手に持って被写体を追うことができました。フッテージを見ると、少なくともEasyrigか、何か他の本格的なスタビライザーを使って撮影しただろうと思うような映像が得られました。サイズと重量は、ハンドヘルドの撮影に最適ですね。

撮影の多くは速攻スタイルだったが、両氏は可能な限りシネマライクな高品質のイメージを少ないストレージ使用量で撮影したいと考えていた。

マコノヒー氏:美しいイメージとカメラのサイズに加え、長尺のインタビューにBlackmagic RAWを使用したことで全てが変わりました。フル6K(6144x3456)の固定クオリティQ3かQ5で撮影したのですが、わずか1〜2枚のCFastカードに保存できるフッテージの時間数に驚かされました。

ウェイル氏は、カメラがコンパクトであることから、思い描いていたようにインタビューできたことに満足しているという。

ウェイル氏:本作でインタビューした人々と極めて密接で、個人的なつながりを築いていると感じさせるような映像を撮りたいと考えていました。インタビューにおいて、作り過ぎた設定や構図を避けようと務めました。60年代や70年代のドキュメンタリーから多くを学びました。当時は、インタビューはもっとシンプルで、多くの場合、一台のカメラのみで、割と被写体の顔に近づいて撮影しています。

つまりは、とてもベーシックで、余計なものがないんです。Blackmagic Pocket Cinema Camera 6Kと共に、1x1パネルライトをキーライトとして使用し、バウンスカードかネガティブフィルでそれを和らげました。

また、窓などからの自然光も活用しました。これは、極めてシンプルなセットアップでインタビューを撮りたいという願望に起因していますが、近年のドキュメンタリーのように多くの照明を使わず、古いドキュメンタリーの自然なスタイルを選んだこともその理由の一つです。

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マコノヒー氏はDaVinci Resolve Studioを使用して、自身で同作のグレーディングを行った。

マコノヒー氏:ザックと共に、本作で使用するために集めた古い資料からルックのインスピレーションを多く得ました。多くが16mmのフィルムストックか、スチルではコダクロームでした。

そこで、宇宙という本作の題材と完全に逆をいくルックを作成し、発展させることについて、何度も話し合いを重ねました。宇宙は不毛で、冷たい環境だからです。しかし、最終的にその概念とは逆方向のルックにすることにしました。温かみがあり、親しみ感を感じさせる方法で被写体を撮影し、グレーディングしました。

マコノヒー氏はグレーディング段階におけるBlackmagic RAWの利点についても以下のようにコメントしている。

マコノヒー氏:このカメラではポストプロダクションが自在に行えます。Blackmagic RAWでは、ハイライトが極めて多く維持されるので、アーカイブ資料とマッチさせるために、フッテージを若干レトロなルックに調整するために役立ちました。

題材自体もウェイル氏にとってやりがいがあるものだったが、厳しい納期で制作する必要があった点でも充実感を覚える仕事だったという。

ウェイル氏:今回の依頼は、1年以内で制作を終えてほしいというものでした。少し撮影して、フッテージをチェックし、方向性を変えるなどの作業をする時間があまりありませんでした。準備段階から制作までを簡素化して、長時間にわたって撮影する必要がありました。これはドキュメンタリーでは非常に難しいのですが、優れた機材とチームで、カイルと共に素晴らしい作品を完成させることができました。

「When We Were Shuttle」は https://whenwewereshuttle.org/ で視聴可能。また、2023年初頭にAmerican Public Televisionで放送予定。

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Blackmagic Design導入事例:ドキュメンタリー「When We Were Shuttle」の場合