第8波が終息に向かい、今年5月には2類相当から季節性インフルエンザなどと同じ5類へと移行される新型コロナ。だが「アベノマスク」をはじめとする、新型コロナをめぐる混乱と検証は、ウヤムヤにしてはいけない。

 人材派遣大手のパソナは2月10日大阪府枚方市吹田市、そして兵庫県西宮市から委託を受けた、新型コロナウイルスワクチン接種に関するコールセンター業務で。3市に計10億8000万円を過大請求していたと発表した。

 2月11日付の読売新聞によれば、パソナは受注費10億円を3市に全額返済する方針だというが、返済だけでは済まされない問題が3つある。都内の区役所職員が話す。

「今回の3市では受付件数に対してワクチン接種者の数が異常に少なく、自治体が調べたところ、水増し請求が判明したのです。パソナはさも自分たちが被害者のように語り『下請け業者への損害賠償請求と刑事告訴』をチラつかせていますが、クライアントである我々自治体の職員が受電件数を調べて不正が発覚すること自体、パソナの監督責任です」

 この区役所職員はさらに、ワクチン事業の裏側を次のように暴露した。

「大手人材派遣会社は入札金額から中抜きして、下請けに発注します。下請け業者はワクチン接種の受付業務にあたる電話オペレーターの人件費や、維持費に割くべきお金をすでに『ピンハネ』されていますから、労働に見合わない安い時給でしか募集をかけられず、人が集まりません。東京と大阪、兵庫の人件費を一概に比較はできませんが、23区が想定する時給は看護師が2500~3500円、資格のないオペレーターでも2000円以上でした。ところが実際に求人サイトで募集されているオペレーターの時給は、1000円前後」

 オペレーターに支払われるべき1000円あまりが、どこかに消えたことになる。区役所職員がさらに続ける。

「ピンハネされず時給2000円の高待遇であれば、有期雇用でも就業希望者はいたでしょう。ところが求職者も住民も、実害を被っている。今回の水増し請求は、氷山の一角にすぎません。政治家とズブズブの人材派遣会社による『下請けイジメ』『派遣イジメ』、そして『既得権益の濫用』が絡んだ不正です」

 区役所職員がここまで怒るのは無理もない。住民に実害が出ているからだ。

 家族がガンや喘息を患うなど、切実な理由でワクチンを希望している住民がいくら電話しても、繋がらない事態が全国各地で相次いだ。それもオペレーターが定数の30%しかいなかった、ということなら合点がいく。

 筆者が知る限りでも、ワクチン接種を受けられなかった両親から新型コロナをうつされた妊婦、白血病を患う娘を抱えながらも、ワクチン接種を受けられず陽性になった父親がいた。国民の命がかかっているピンハネなのだ。

 本来なら厚生労働省が監査に入り、47都道府県の自治体の実態調査をすべき案件だが、厚労省には何の期待もできない。パソナの元会長といえば、長きにわたり安倍晋三氏のブレーンを務め、政府や省庁の会議の委員を歴任した竹中平蔵氏(昨年8月に退任)。ともすれば東京五輪汚職に続く、コロナ汚職になりかねないこの問題を、「検討使岸田文雄は掘り起こすこともなく、我々にさらなる増税を課していくことだろう。

 下請けの人材派遣会社は大手人材派遣会社に「契約内容などを外部に漏らす守秘義務違反をしたら訴える」という不当な誓約書を書かされている。取材には困難が伴うが、続報を書いていく予定だ。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

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