エステサロン大手「たかの友梨ビューティークリニック」を運営する不二ビューティの女性従業員が、組合活動を理由に同社の高野友梨社長から長時間に渡る詰問を受けたとして、厚生労働省に公益通報者保護の申し立てを行なった。

女性が加入するブラック企業対策ユニオンが22日に記者会見を行おうとしたところ、それを知った高野社長が21日に仙台店を訪れ、女性を問い詰めたという。朝日新聞デジタル版にその抜粋がアップされているが、飲食店の個室で録音された音声はクリアで生々しい。

たたき上げ社長が「労働法規の無知」を自ら露呈
誰も知らないでしょ、36(サブロク)協定なんてね」
「社員の代表の名前を労基に届けないといけないの。各店。でもさ、みんな各店うやむやだよ」

従業員に残業や休日出勤などの時間外労働をさせる場合、労働基準法36条はあらかじめ労使間で書面の協定を結ぶことを義務付けている。通称「36協定」と呼ばれるものだが、高野代表はこれを軽視している、と解される発言をしている。

「うちは残業代といって改めて払わないけれども、頑張れば頑張った分というのがあるじゃん。そうやって払っているわけだよ」

従業員に時間外労働を行わせた場合には、割増賃金を加えた時間外手当を支払わなければならないのも、労働基準法37条で定められたとおりだが、これも守っていないらしい。さらに落ち着いた声で、その行為をこう正当化している。

「労働基準法にぴったり沿ったら絶対成り立たない。潰れるよ、うち。それで困らない?」
「この状況でこんだけ赤字が出ているのに。そういうふうにみんなに暴き出したりなんかして、会社を潰してもいい?」

残業代を支払ったら会社は潰れ、一番困るのは従業員だというわけだが、これはネットで「典型的なブラック企業経営者の言い訳」とされているものだ。他の従業員に「組合に入った?正直に言って?入ってない?」と確認する場面もあった。

店長が社長の手紙代読「私を好いて、私を信じて」

出典:「セオリー」(講談社

その後、高野社長が各店舗に送ったFAXを女性店長が読み上げた。やや芝居がかった読み方で、「会社を誹謗することは、自分のこれまで頑張ってきた道を汚すことだと私は思います」「私を好いて、私を信じて、ついてきてください」と忠誠を求めている。

高野社長による詰問は2時間半にも及び、女性は精神的なショックを受けて出社できなくなってしまった。この手紙については、ネットで「社長からのお手紙が感謝系居酒屋と同じかほり」「女ワタミ」などと揶揄されている。

また、高野社長の「労基法に沿っていたら会社が潰れる」という発言に厳しい疑問を投げかける声も大きい。違法行為が問題なのは当然だが、それによって高野社長が大きな利益を得ていた可能性が高いというのだ。

2008年に刊行された講談社のムック「セオリー」Vol.5は「リアルリッチの世界3」という特集を組んでいるが、高野代表は富裕層のひとりとして登場。見出しには「ハワイに3軒目の別荘を10億円で購入しました」という言葉が踊っている。

文中で「宝石も不動産もすべてキャッシュで買ってます」と豪語しているが、それが事実とすると、この豪華別荘も現金で購入したことになる。

一方で、「たかのビューティークリニック」の従業員が働く環境はかなり劣悪だったようだ。女性を支援する「エステ・ユニオン」のブログによると、休憩時間はほとんど取れず、仕事中に立ったままでお昼ご飯を食べることも。有給休暇も消化できない。

「10年近く働いてきた従業員でも、一度も有給休暇を取得したことがない」
数十万円する美容器材の「自爆営業」も?

朝9時から夜22時前後までの長時間勤務が常態化し、月末には零時まで働くこともあり、終電を逃してタクシーで帰宅することもあるが、

「その際、タクシー代は自腹です。さらに、こうした長時間残業の大半は、残業代未払いの状態になっています」

自社の商品を自腹で購入する「自爆営業」も存在したようだ。売上目標が個人や店舗に定められており、達成できないと賞与に響くだけでなく、異動や追加研修の対象になる。

未達の場合は上司からの圧力もあり、数十万円する美容器材を自腹でローンを組んで購入することもあるそうだ。これが10億円の別荘に化けていたとすれば、会社が潰れて一番困るのは、高野社長ではないかということになる。

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