ゴミ清掃員としても働く芸人の滝沢秀一(マシンガンズ)が、ゴミを回収していて気が付いた事実、それが「金持ちの家から出るゴミは少ない」ということ。長年にわたりゴミを見続けた滝沢氏だからわかる、ゴミに隠された秘密を教えます! みんなでゴミを少なくして、金持ちになろう!

【画像】今週のゴミトリビア

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東京都って、会社から出るゴミ(事業系ゴミ)の回収方法が他の都道府県と比べて特殊なんですよ。たとえば大阪だと、会社から出るゴミはすべて産廃業者にお願いして、お金を払って回収してもらわなければいけません。しかし東京では中小企業に限り、申し込みをした上でゴミ処理券のシールを貼れば、一般家庭のゴミを回収している僕らも回収することができるんです(少量という条件付きになります)。

だから僕たち東京の清掃業者は、企業やその他いろんなところのゴミを回収をしますが、僕の経験上、ゴミの分別をちゃんとしてない会社って、大体6年以内に潰れるんですよね。

シュレッダーゴミの中にビンとか缶とか、紙に穴を開けるパンチとか平気でごちゃごちゃに混ぜて捨てられていたりすると、自分の感覚としては「なんでそんなことするんだろう?」と信じられない気持ちになります。

ひどいゴミを回収すると記憶に残りますから、しばらくして「そういえばあの会社どうなった?」と他の清掃員に聞くと、「なくなりましたね」と言われることがよくあって、大体それが6年以内なんですよ。

今の時代、企業は生き残るだけでも大変ですから、ゴミの分別だけが理由ではないとは思います。しかし「金持ちのゴミは少ない」という話は、会社にも当てはまるんだなと確信しました。

分別もせずにゴミがそのまま出されるというのは、少なくとも愛社精神はないですよね。自分の会社が好きで一生懸命やりたいのなら「こんなゴミを出したら周りはどう思うだろう?」って、ちょっとでもよぎりませんかね? 上司が部下を管理できてないんだろうし、ゴミを分別するシステムにも気が回っていないんじゃないでしょうか。

そんな会社には「表ではサービスしてるけど、裏は適当でいいや」みたいな気持ちを感じちゃいますよね。そういう精神がほころびになって6年持たずに潰れるのかな、なんて思ったりもします。

沖縄に産廃業者の友達がいるんですが、先日彼が「滝沢さんがよく言う"金持ちのゴミは少ない"的な話が、沖縄の米兵にあるんですよ」と言うんです。

「どういうことですか?」と聞いたら、沖縄には米軍基地関係の米兵がいっぱい住んでいて、そのなかで階級の高い米兵たちはゴミをきちんと分別するそうです。でも、新人だったり階級の低い米兵はあまり分別をしない、という話でした。

米兵は階級に応じて住む地域が決まっているので、そんなことが見えてくるんだそうです。

その友達が言うには、米兵はパーティーをよくやるそうで、パーティーが終わった後、テーブルの上にあるビンやピザの空き箱とかを、広げたゴミ袋の中に一気にザザザザッて突っ込んじゃう人が多いと。そういうシーン、映画で見たことがある気がしますよね。

引っ越しで出たゴミ。もったいない&水分は捨てられないので、中身を処分してから捨てて!
引っ越しで出たゴミ。もったいない&水分は捨てられないので、中身を処分してから捨てて!

階級の低い米兵たちは、それをそのままゴミとして出すパターンがとても多いそうです。「分別してください」と張り紙を付けて注意を促しても、全く聞く耳を持ってくれないと。しかし、階級の高い米兵の住む地域ではそんなゴミはほぼ出ないそうです。

僕が「階級の高い米兵のゴミが綺麗なのは、年配の方が多くてパーティーをしないからじゃないですか?」と言ったら、「いや、間違いなくやってる」というんです。

なんでそんなことがわかるかといったら、パーティーの飾り付けがしっかり分別されてゴミに出されているからだと。その上で、パーティー後の残骸は可燃ゴミは可燃、ビンや缶は資源と、ちゃんと分別して出しているとのことでした。

ニワトリと卵の話じゃないですけど、ゴミの分別もできるちゃんとした人間だから偉くなるのか、偉くなったから気を使えるようになるのか、どっちが先かはわかりませんが、僕が常々言っている「金持ちのゴミは少ない」という感覚は、日本だけのものじゃないみたいなんですよ。

イギリス人としゃべっていたら、イギリスも全く同じで、金持ちの出すゴミは少ないんだそうです。

ただ、イギリスと比べて日本があまりも特殊なのは、洋服のゴミが多いことだと。「イギリス人は同じ服ばっかり着てるよ。だって、大事なのは中身だろ」と。カッケー!と思いましたね。

他国であっても「いいな!」と思うところはとことんマネして見習って、僕も早く金持ちになりたいと思います!

滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数

※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。

イラスト/北村ヂン

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