映画「オールド・ボーイ」で主演を務めた名優・チェ・ミンシクの約25年ぶりのドラマ出演作「カジノ」。同作は、「私の解放日誌」「D.P.」のソン・ソック、「恋のスケッチ ~応答せよ1988~」のイ・ドンフィ、「イカゲーム」のホ・ソンテ…と、旬の実力派俳優が続々登場することなどでも注目を集め、韓国ではディズニープラスのローカル制作オリジナルシリーズとして歴代で最も視聴された作品となった。今回は、2月15日より配信開始となったシーズン2(以下、S2)の鑑賞に備え、シーズン1(以下、S1)を振り返る。(※以下、S1のネタバレを含みます)

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■「カジノというランタンに欲望を追いかけて群がる“蛾”たちの物語」

「カジノ」は、お金もコネも無いところからフィリピンでカジノ王となったチャ・ムシク(チェ・ミンシク)が、殺人事件に巻き込まれて全てを失い、人生の崖っぷちに追い込まれた後、命がけの最後の賭けを始めることになるクライ超大作ディズニープラス「スター」で、S1全8話に続き、S2が2月15日より第1話から第3話まで一挙、その後は毎週水曜日に1話ずつ配信され、全8話の構成となる。

監督は「カジノ」について「この作品は、カジノというランタンに欲望を追いかけて群がる蛾たちの物語です。チャ・ムシクという人物を中心にカジノで繰り広げられる様々なハプニングを見せながら、人間の傲慢と貪欲さを描写したかったんです」と説明し、それを表すために、オープニングタイトルに蛾の映像を入れたそうだ。

■S1の大半をムシクの半生に割いた理由

S1では、ムシクの生い立ちが数話に渡って丁寧に描かれた。これにも監督の意図がある。

「カジノで起きている事件だけを扱うと、末梢神経だけを刺激するありふれたドラマになりそうでした。1人の人物にずっと付いていかないと、後半部で大きな力を発揮できないと思ったんです。ムシクは、相手によってはいい人かもしれないし、悪い人かもしれない。単純に善と悪ではない彼のキャラクターを見せたかったし、皆さんもそんな彼を支持することになるでしょう。生い立ちのパートが長すぎる、という声もありましたが、S2を観れば理解していただけると思います」

と、新シーズンをさらに楽しむために必要な長さだったと語った。確かに、ここまで丁寧にムシクの生い立ちを見せられると、とても知ってる人のような気がしてきて、感情移入して観てしまう。監督の術中にまんまとハマってしまった方も多いのではないだろうか。

■S1で描かれた 山あり谷ありの“ムシクの半生”

ムシクは、刑務所に出入りを繰り返すクスリ漬けでDVの父親と、そんな男と離れられず食堂を細々と営む母親の元で育った。貧しい生活だったが、そのおかげで彼は自身でお金を稼ぐ喜びを知り、金稼ぎに卓越した才能を発揮するようになる。

学生闘争や陸軍の諜報部隊を経て、彼は地方でトップの英語塾を経営していたが、後輩との再会から賭博場をいくつも経営するように。大金を手に入れるが、国税庁の査察が入り、彼は友人を頼ってフィリピンへ逃亡。一度はフィリピンのカジノで持っていた大金をほとんど失うが、現地でカジノを経営するミン会長(キム・ホンパ)と知り合い、持ち前の才覚を発揮して認められ、カジノ王の道を歩み始める。

■顔も声も若返らせた最新のAI技術

ムシクの青年期をイ・ギュヒョンが演じているのだが、最新のAI技術とCGで、チェ・ミンシクとイ・ギュヒョンの顔を混ぜて、全くの別人に見えないようにしている。ムシクの30代もこの技法でチェ・ミンシクを若返らせているが、長い尺で使うにはまだまだ向上の余地があり、かなり苦労したとのこと。

同様に声もAIで変えているが、監督は「ミンシクさんの若い頃の声を本当にいろいろな値を組み合わせて見つけました。過度に変えたら偽物みたいになるし、加工しなさすぎても違いがわからなくなるので、その調整がカギでした」と、撮影後のインタビューで苦労を吐露していた。

■ムシクと敵対する人々…

ムシクは、フィリピンに住む韓国人たちに一目置かれ、権力者や警察にも顔がきく存在になっていく。頼れる存在の反面、ギャンブル中毒になった社長をカモにしたり、大金を横領した者に裏で容赦ない制裁を加えたりする恐ろしい一面も持っている。ムシクが力を持つにつれ、彼を疎ましく思ったり敵対視する者も現れる。

フィリピンの韓国大使館の領事・チョ(イム・ヒョンジュン)はムシクを目の敵にし、フィリピンの警察に初の韓国人デスクとしてやって来たオ・スンフン(ソン・ソック)も、最近起きた2件の韓国人絡みの殺人事件がどちらもムシクの影がチラつくことに着目し、ムシクの動向を追うようになっていく。また、ムシクが弟分に「面倒をみてくれ」と頼まれたソ・テソク(ホ・ソンテ)は、ムシクに対して妬みや嫉妬心がどんどん膨らみ、シーズン1のラストで寝ているムシクに銃口を向ける。

銃声でS1は終わり、2人がどうなったか知りたくてS2を早く観なければ!という気持ちにさせる。また、スンフンは拳銃を非合法に手に入れ、ムシクとの対決を予感させた。

そして、S1の冒頭で描かれたムシクがミン会長殺害容疑で逮捕されてしまった経緯や内幕もS2で明らかになる。この事件が「カジノ」のメインとなる出来事で、状況が大きく変わるポイントだ。

「S1ではカジノの生態が描写されたとすれば、S2ではカジノという空間でムシクに吹き荒れる嵐のようなストーリーが展開されます」と監督が語るように、栄華から一転、全てを失うことになるムシクの一世一代の賭けと、彼を取り巻く人々との攻防がS1での伏線の回収と共にスピーディーに描かれる予定だ。

◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部

(写真左から)ソン・ソック、イ・ドンフィ、チェ・ミンシク/「カジノ シーズン2」より(C)2023 Disney and its related entities