昨年9月に宮崎駿監督が引退してから約1年、スタジオジブリの今後の展開について、様々なニュースが報じられ話題となっている。こうした一連の報道やジブリの今後について、ジブリ映画の出演者はどう思っているのだろうか。『もののけ姫』でアシタカを、『風の谷のナウシカ』でアスベルを演じた松田洋治氏に話を聞くことができた。

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 松田洋治氏は1967年生まれの46歳。6歳で子役デビューしてから40年のキャリアを持つベテラン俳優だ。舞台を中心に活動する一方、声優としても、レオナルド・ディカプリオ吹き替えやナレーションなど、多方面で活躍している。

 そんな松田氏が、スタジオジブリの製作体制が変わるというニュースに対して感じた思いは「さすがは鈴木(敏夫)さん」というものだった。

 「動きが早いなと思いましたね。スタジオジブリって映画一本でおそらく何十億、ときには100億円というようなヒットを飛ばさないと、維持できないんじゃないかと思うんです。それができるのは宮崎(駿)監督くらいで、今後は難しい。だから今のうちに製作体制を変えるというのは、さすがだなと。それに、発表のタイミングも考えられているなと思います。『思い出のマーニー』の公開が終わってからだと、マーニーの興収との関係を邪推されますからね」。

 さらに松田氏は、「だからこそ、今後のスタジオジブリ作品が楽しみです」と期待を口にする。

 「もしかしたらスタジオジブリも、製作規模や予算を落とせば維持できるのかもしれません。でも、そんなの見たくないですよね。今後は作品が出るペースが遅くなるかもしれませんが、製作体制を変えることでクオリティを保ってくれると期待しています」。

 『風の谷のナウシカ』のアスベル、『もののけ姫』のアシタカと、過去に二度ジブリ作品へ出演している松田氏。当時の思い出を語ってもらった。

 「『風の谷のナウシカ』に出演したときのことは、正直あまり覚えていないんですよ。30年も経っているというのもあるのですが、あのときはまだスタジオジブリも存在せず、自分の中でも特別な意識はなかったんです。宮崎監督が現場にいらっしゃったかどうかもわからないレベルで……その後、ジブリ作品は『風の谷のナウシカ』でアニメファンに知られるようになり、『となりのトトロ』で一般層まで浸透しました。そんなジブリ作品の原点ともいえる『風の谷のナウシカ』に出演できたことは今にして思えば幸せだったと思います」。

 ナウシカから13年後、再び松田氏はスタジオジブリ作品に出演することになる。宮崎駿監督の集大成ともいえる『もののけ姫』のアシタカ役に抜擢されたのだ。

 「一度、鈴木さんになんで自分をアシタカ役に選んでくれたのか聞いたことがあるんですが、鈴木さんの答えは『芝居が好きで、(松田氏が出ている舞台の)ポスターを見たから』とだけ(笑)。僕はナウシカからの13年間、きちんと演劇と向き合って芝居をやってきて、特にセリフと向き合うことを重要視してやってきました。それを鈴木さんが見てくれたことは、僕がやってきたことへのご褒美なのかなと解釈しています。現場では、宮崎さんが厳しかったですね。怒鳴ったりはしないけど、作品作りに関しては絶対に妥協しない。“戦う人”という印象です」。
 
 今後は10月11日、12日に朗読ライブを行う他、様々な舞台や映像、イベント出演を控えている松田氏。ジブリでの経験が、松田氏の俳優人生の糧となっている。(取材・文・写真:山田井ユウキ

『もののけ姫』でアシタカを、『風の谷のナウシカ』でアスベルを演じた松田洋治氏にインタビュー クランクイン!