映画「ラーゲリより愛を込めて」が大ヒット上映中。主演を二宮和也が務め、第2次世界大戦後のシベリア強制収容所(ラーゲリ)に不当に抑留され、過酷な状況下でも生きることへの希望を捨てなかった実在の日本人捕虜・山本幡男(二宮)の半生を描いた作品となっている。同じ捕虜仲間でありながら昔ながらの帝国軍人として山本に厳しく当たる相沢光男を演じる桐谷健太と、過酷な状況下で心を閉ざしてしまう原幸彦を演じる安田顕に話を聞いた。

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■桐谷「“本当に僕が演じていいんだろうか”と悩みました」

――本作は実話を基にした映画となっていますが、どういったアプローチで作品に向き合ったのか教えてください。

桐谷:戦争映画で、さらに実在した人たちの話だと聞いたときに、「本当に僕が演じていいんだろうか」と悩んだんです。でも、今作を今の子供世代が見ることで、「戦争はイヤだな」と思ってくれたら、その意識が未来を変えてくれると思ったんですよね。それからは、気持ちを切り替え、より強い思いで挑むことができました。

■安田「実話なので、より真剣に演じなければと思いました」

安田:どの作品もそうですが、実話となると、より真剣に演じなければという気持ちになりました。そういえば、桐谷さんが歌っている「海の声」は沖縄出身の島袋優(BEGIN)さんの作曲ですよね。あの優しさ、明るさって、いろんな歴史を経た沖縄だからこそ生まれた歌だと思うんです。今回の映画を経て、より戦争と対峙した桐谷さんが歌い継いでいく姿を想像すると、さらに深いものになるんだろうな、と思いました。ちょっと話がそれてしまいますが…(笑)。

桐谷:いえ、ありがとうございます! 今回は沖縄が舞台ではありませんが、同じ戦争で深い傷を負った沖縄の人たちって、何周も回った上で、「なんくるないさ」という言葉を使っているんです。なので、今作を見ていただいた方たちにも、最終的に“みんなが幸せな方がいいよね”という意識になってもらえたらいいですよね。

■桐谷「人が笑うことってこんなにも大事なんだと実感しました」

――お互いの役どころで印象に残っているエピソードはありますか?

桐谷:安田さんが劇中でかなりボコボコにされているのに、微動だにしないシーンは衝撃的でした!

安田:映画で見たらあまりにも動かな過ぎて、もはや合成でも良かったんじゃないかと思いましたから(笑)。

桐谷:あはは! それにしても、二宮さんが演じた山本は、どんな状況でも許し、勇気を与えるって、まるで菩薩のような存在ですよね。

安田:本当にそうですね。それに、桐谷さんが演じられた相沢も、すごく重要な役でした。彼がいるから、日本が正しい、ロシアが悪いではなく、立場を変えればそこに非があるかもしれないということを教えてくれるんです。だからこそ、戦争はいけないよねということを体現していると思ったんですが、その分、演じていてつらかったのではないでしょうか。

桐谷:本当につらかったです。一度絶望に打ちひしがれて、「このまま戻ってこられなくなるんじゃないか」という思いになったんです。そんなときこそ、「絶対に今後、戦争が起こらないように」という希望を強く持って演じていました。そして劇中に、僕を除くみんなが野球をやっているシーンがあるんですよ。その撮影の休憩中に、安田さんと冗談を言い合って爆笑していたら、ふと心が温まって、体温が上がったんです。そのとき、人が笑うことってこんなにも大事なことなんだって実感しました。

■安田「今後共演できるなら、SとMの役を是非一緒にやってみたいです」

安田:今回僕たちはつらい役どころでしたが、もし今後共演できるなら、全く違うお芝居がしたいですね。何となく、桐谷さんには若干のSっ気を感じるんです(笑)。

桐谷:若干ですか!?

安田:はい。ちなみに私は若干のMをにおわせているので、極端なSとMの役を是非一緒にやってみたいですね。

桐谷:いいですね! もしかなうなら、僕が監督となって、強烈に悪い役を安田さんで撮ってみたいです。安田さんって、明るいイメージもありますが、底知れぬ深さがあると思うので、新境地を引き出した作品を作りたいですね。ちなみに本当にMでいいんですか?

安田:Mで、お願いします(笑)。

◆取材・文=吉田可奈

桐谷健太×安田顕/撮影=柿沼琉(TRON)