ANAグループでは、東南アジアを主なマーケットとする新航空会社「Air Japan」の就航準備が進められています。このエリアにはANA本体とAir Japanの2社が就航することになりそうですが、どのように差別化するのでしょうか。

既存の787を使って「新しいビジネスモデル」

新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに大きく変革を迫られた航空業界。ANA(全日空)、ピーチなどの航空会社を傘下にもつANAホールディングスもそれは同様で、コロナ禍でさまざまな施策を打ち出してきました。そのひとつが、系列では3つ目となる、新規航空会社の立ち上げです。

2022年に「Air Japan」の名で発表されたこの新航空会社は、これまでANAブランドとして短・中距離国際線の運航を担当してきた傘下の航空会社「エアージャパン」を母体とし、これを発展させる形で立ち上げられます。機材はANAグループで現在使用しているボーイング787-8を活用し、これを300席規模に改修。成田空港を拠点として東南アジアの主要地域に就航し、今後拡大が見込まれる訪日・レジャー需要の獲得を狙う計画です。

現在のところ、「Air Japan」の運航開始は2023年度下旬の予定。LCC格安航空会社)に分類されながらも、「LCCと競合可能な運賃水準で、自分好みに選べるサービス、今までになり快適さを提供する」(ANAホールディングス)とし、「LCCとフルサービス両方の良いところをあわせた新しいビジネスモデル」とアピールします。

カブる路線多数のANA・AJ、どう差別化?

その一方、2023年2月に実施されたANAホールディングスの中期経営戦略発表会で報道陣に公開された資料によると、「Air Japan」の就航が見込まれる都市は、バンコククアラルンプールホーチミンシティ、マニラなど。ただ、こういった地域は、ANAブランドの路線ネットワークとも”カブる”ことになります。ここをどのように棲み分けしていくのでしょうか。

ANAは「Air Japan」が使用する成田空港のほか、羽田空港も拠点とします。都心に近く、よりビジネスマンに好まれる羽田空港の使い方が、2社の棲み分けを大きく分けるポイントになりそうです。また、2社で便数や運航ダイヤなども、それぞれが工夫して組むと見られます。

また、ANAブランドとしては中期経営戦略期間中に、プロダクトやサービスを強化することで、収益(イールド)を向上させる方針が掲げられています。ここに関して、ANAホールディングスの芝田浩二社長は次のように話します。

「2025年度には、ボーイング777-9や737MAXといった新機材の納入が始まります。また、国内線国際線の旅客サービスシステムをひとつのプラットフォームに統一し、国内・国際と一緒になったシームレスなサービスの向上が図られ、結果的にサービス強化へつながると考えています」

なお、777-9は長距離国際線737MAX国内線がメイン。その一方でグループを通じて、ANAの東南アジア路線の主力機のひとつであるボーイング787を、2030年度には100機以上に増やします(現在79機)。「Air Japan」就航後も、ANAは発着空港や快適性の高い最新旅客機の導入、システム面の向上などを重ね、両者が食い合わないように差別化を図ると見られます。

グループ3社のモデルプレーンが並ぶANAホールディングスの会見の様子(乗りものニュース編集部撮影)。