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 沸きに沸く侍ジャパンの宮崎強化合宿ブルペンに緊張感が走った。ずらりと4人並んだスカウト集団。ドジャースで編成トップを務めるアンドリューフリードマン編成本部長らが視察に訪れたのだ。

 「こんなに才能あふれる選手たちが、1カ所に集まることはなかなかない。敬意を込めてきました」

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 フリードマン本部長は日本メディアにも対応。レイズから2014年にドジャースへ引き抜かれた同氏は、2020年にはチームを32年ぶりの世界一へ導き、最優秀フロントに選出された超大物。28歳だった2005年に当時のデビルレイズのGMに抜擢され、その道のプロとして業界トップを走り続けてきた。

 侍ジャパンは、メジャーリーガー予備軍でもある。オリックス山本由伸(24)、ヤクルト村上宗隆(23)、DeNA今永昇太(29)はメジャー志望をはっきりと口にしている。楽天松井裕樹(27)、ロッテ佐々木朗希(21)も将来的にメジャー挑戦へと舵を切る可能性は高そうだ。そんな金の卵たちを、実際に目の前で焼き付けようというのだ。

 過去にも2006年の第1回大会の松坂大輔を始め、多くの日本人メジャーリーガーたちがこの大会を登竜門として海を渡っていった。

 史上最強との呼び声が高い今回の栗山ジャパンが、それだけ逸材揃いだという裏付けとも取れる。もっとも、こうした編成トップ含む4人ものスカウトによる視察に対して、球界では「パフォーマンスにすぎない」と冷ややかな見方もある。

 というのもドジャースには前科があるからだ。2017年の第4回WBCへ向けた、2016年11月の侍ジャパン強化試合メキシコ戦。当時のメジャー球団は、計り知れないポテンシャルを秘める日本ハム大谷翔平に夢中だった。そこでドジャースが奥の手を講じた。対戦相手のメキシコ代表には所属選手のエイドリアン・ゴンザレスがいた。そのゴンザレスがグラウンド上で堂々と大谷に近づき、リクルート活動を始めたのだ。

 チームロゴが入ったドジャーブルーの大きなドラムバッグをプレゼント。中にはたくさんのドジャースグッズが詰め込まれていたという。ゴンザレスは「米国でも注目されているし、我々ドジャースとしても注目している。是非うちのチームに来てもらいたいと思っている」と高い評価を口に。加えて「将来来てもらえたらいいなと思って、Tシャツとかドジャースのいろいろなグッズを渡したんだ。来たくなかったら、仲間に配ってもらえればいい」と話した。

 これにはメジャーの他球団も黙ってはいなかった。不正交渉にあたるタンパリングではないか、と強い非難の声が上がったのだ。スカウトは直接接触はもちろん、強化試合ではグラウンド上に立つのも禁止されている。そこを、所属選手を通じて狡猾に近づいたというわけだ。

 翌年オフ、結局大谷は移籍先としてはドジャースではなく、同じロサンゼルスを本拠地とするエンゼルスを選択した。ゴンザレスの行為は「気遣い」の一つで終わったわけだが、多くの関係者の不興を買っていたのは確かだ。

 今回、フリードマン編成本部長は「特定の選手名は挙げられないが、すごくいい選手がいっぱいいる」と選手の個人名を挙げることは避け、タンパリングへはしっかりとした線引きをしていた。もっとも、この時期に編成トップがわざわざ日本まで足を運ぶのは、異例中の異例。将来海を渡るであろう若き侍たちに「いつでも見ているよ」というメッセージを伝える、名刺代わりの電撃訪問といえた。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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