投資に振り分ける資金の量は「どれくらいの期間で利益を得たいのか」「どれくらいのリスクを許容できるのか」などで変動します。資産運用のエキスパート・伊藤亮太氏の著書『株で勝ち続けるための 上がる銘柄選び黄金ルール87』(ワニブックス)より一部を抜粋し、年代別の「儲かるためのポートフォリオ(資産構成)」を見ていきましょう。

「20代」は資産の30~50%で株式投資

■20代は積極投資でも構わない

まず、20代から投資を始めるケースから見ていきましょう。この場合、長期的な運用が可能になるため、全資産の30~50%を投資に振り分けても問題ないでしょう。投資可能な期間が長いため、他年代と比べると投資に振り分ける比率が最も高くなっています。

■「月々1万円×3資産」に投資していく

無理なくコツコツ資産形成を目指す場合は、日本株式投信、米国株式投信、世界債券投信といった組み合わせで、月々1万円ずつ3つの資産に振り分けて運用してみるとよいでしょう。最終的に株式部分の比率が30~50%程度になるように運用を行っていきます。また、個別株への投資を行いたい場合も同様に、まとめて投資するよりかは時間をわけて日本株式や米国株式に投資していくとよいでしょう。「時間を味方につけ、短期的な株価の変動は気にしない」「中長期的にならしたときにリターンが得られる資産運用を行う」ことが重要になります。

■定額の投資を続けるドルコスト平均法(図表1)

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<20代の投資で押さえておくべきポイント>

1. 短期的な株価変動に一喜一憂しない

2. 長期投資を心がける

3. 一度にまとめて投資するよりもドルコスト平均法でコツコツ資産形成を行っていく

4. 株価が大きく下落した場合に備えていつでも買うことができる資金を準備しておく

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「30~40代独身」は資産の20~40%で株式投資

■20代同様、積極運用も可能

30~40代独身の場合、今後のライフプランをどのように描くかによって資産配分も異なりますが、生活スタイルに大きな変更がない場合は、20代同様、積極的な運用が可能です。

この年代になると、余裕資金も増え始めることでしょう。一般的に3~6ヵ月分の生活費や利用することが決まっている資金を除き、特段使用することがない資金を余裕資金と呼びます。30~40代独身の場合、この余裕資金を効率的に運用し増していくことが可能です。

■「ドルコスト平均法」と「下落時の買い増し」を組み合わせる

毎月コツコツ資産形成を行いながら、ときには思い切ってまとめて投資することも検討してみましょう。例えば、つみたてNISAや一般NISAを利用して毎月3~10万円投資するといったスタイルと、株価が大きく下落したらまとめて数十万円投資する方法、またドルコスト平均法などを組み合わせてみるとよいでしょう。

20代に比べると少しずつ株式の比率は下げていくほうがよいですが、積極的な運用を行う場合は全資産の50%を投資に回すことも可能でしょう。

■30~40代独身者向けのポートフォリオ(図表2)

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<30~40代独身者の投資でのポイント>

1. 短期的な株価変動に一喜一憂しない

2. 長期投資を心がける

3. NISAなどを利用してコツコツ資産形成しつつ、大きく値下がりした場合にまとめて投資できるようにしておく

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※NISA:NISA口座内で、毎年一定金額の範囲内で購入し金融NISA商品から得られる利益が、非課税になる制度

※REIT:投資家から集めた資金で、オフィスビルやマンションなどの不動産を購入し、その賃貸収入などを投資家に分配する商品

「30~40代家族もち」は20~30%で株式投資

■教育費や住宅ローンがかさみがち…無理な投資は禁物

30~40代家族もちの場合、資産運用を考える前に教育資金確保や住宅ローンの返済をどうするかを考える必要があります。もちろん、子どもが幼い場合や住宅ローン控除を利用できる10年間は繰り上げ返済しないといった場合には、資産運用もできるでしょう。

しかし、基本的に30~40代家族もちは資産運用で無理は禁物です。資産運用で失敗して教育資金が確保できなくては本末転倒です。必要資金の確保を大前提として資産運用を検討する必要があります。資金が厳しい場合は、預貯金主体でも問題ないでしょう。

■余裕が出てきたら20~30%程度振り分ける

教育資金などある程度必要な資金に目途がついた場合や、資産運用で増やしていきたい場合は、20~30%程度株式へ振り分けていくこともよいでしょう。

ただし、この場合にも基本的にはまとめて投資するのではなく、分散投資を徹底しましょう。また、夫婦それぞれのNISAの枠内での運用にとどめ高配当銘柄などに投資し、配当金を必要資金に充てるといった投資方法も有効です。最もお金がかかる世代のため、老後資金構築は余裕ができてから資産運用を行うとよいでしょう。

■「30~40代家族もち」向けのポートフォリオ(図表3)

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<30~40代家族もちの投資でのポイント>

1. 教育資金確保や住宅ローン返済を重視する

2. 老後資金であれば長期投資を心がける

 ⇒教育資金や住宅ローンなど投資より優先する出費を優先する

3. NISAなどを利用してコツコツ資産形成、高配当銘柄を狙い配当金享受もあり

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※住宅ローン:金融機関からの借金であるため利息がかかる。住宅ローンの繰り上げ返済を行えば、将来支払うはずだった金利を節約することができるが、手数料はかかる

「50~60代独身」は資産の20~30%で株式投資

■リスク資産は少しずつ減らしていく

50~60代になると、いよいよ老後が間近となってきます。特に独身の場合は、健康リスク、介護リスクなどすべて自分で対処する必要が出てくる可能性があります。その際の資金準備も進めていく必要があります。

こうした時期は、急な治療費などに備えて、ある程度現金で保有しておくことを前提に、計画的な資産運用を行うとよいでしょう。

■いかに老後資金を確保するかがポイント

50代であれば、65~70歳まで時間があります。定職の引退時期に合わせて、少しでも資金を増やせるように資産運用を行うことができます。ある程度まとまった資産がある場合は、20~30%程度株式投資に充てるとよいでしょう。そのほかの部分は、現預金や債券中心とし、できるだけ守りも入れた運用にします。株式については、高配当銘柄やディフェンシブ銘柄を中心に、年金構築という視点から資産運用を行っていくとよいでしょう。iDeCoなど非課税制度を利用していくのも手です。

また、定職引退後は、株式比率20%以下を目安に徐々に株式比率を下げていき、株主優待などを目的に運用するとよいでしょう。

■「50~60代独身者」向けのポートフォリオ(図表6)

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<50~60代独身者の投資でのポイント>

1. 健康リスクや介護リスクも考慮して現預金を確保

2. 徐々にリスク資産の配分を減らしていく

3. iDeCoを使った老後資産形成、高配当銘柄を狙い配当金享受、株主優待を狙った投資もあり

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※iDeCo:掛金を自分で決めて積み立てて、投資商品で運用し、60歳以降に年金や一時金として受け取る私的年金制度

50~60代家族もちは20~40%で株式投資

■必要な老後資金を検討する

50~60代の家族もちの場合、子どもが学校を卒業して一段落するケースも多いでしょう。しかし、気を抜いてはいけません。ここからいかに老後資金を構築するかが大きなポイントとなります。

そこで、まずは50代から60代前半にかけてどのくらい老後資金を確保できそうか、シミュレーションを行う必要があります。自分にとってどれくらいの老後資金が必要か、定職先に退職金があるのかないのかを確認しましょう。

■必要に応じて資産運用を行っていく

現預金だけで老後資金が構築可能であれば、資産運用を行う必要はありません。ただし、インフレなどの景気変動への対策として、年2~3%程度でも資産が増やせる運用を行うとよいでしょう。

一方、50代から一気に老後資金を構築する場合は、NISAやiDeCoを最大限に活用しましょう。最初の5~10年間は20~40%を株式投資に充て、「増えた分+α(投資した分の一部)」を売却していき、少しずつ投資比率を下げていく方法がおすすめです。

一方で、ある程度資金が構築できている場合は、株式は10%程度、債券20%、現預金70%など保守的な運用に努めるとよいです。

■50~60代家族もち向けのポートフォリオ(図表5)

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<50~60代家族もちの投資でのポイント>

1. 子どもが社会人になるなど一段落したら一気に老後資金構築計画に移っていく

2. 徐々にリスク資産の配分を減らしていく

3. iDeCoやNISAをフルに活用し老後資産形成を行っていく

【iDeCoやNISAを併用して非課税で、効率よく資産形成を行う】

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「60歳以上で家族もち」は10~25%で株式投資

■生活資金が賄えるかどうか検証する

60歳以上で家族もちの場合、子どもが社会人になっていればあとは夫婦の老後資金対策を中心に資金計画を検討します。退職金などでまとまった資金がある場合は、一部を資産運用に振り分けることは可能です。

まずは、公的年金がどれくらいもらえるのか、年金定期便で確認してみましょう。公的年金で毎月の生活費を賄える場合は、余裕資金を運用にまわすことも可能です。

また、退職金などで直近の生活費は賄える場合は、年金の繰り下げを利用して、年金自体を増やすといった方法もあります。検討してみるとよいでしょう。

■すぐ利用しない資金は運用してもよい

すぐ利用しない資金を運用する場合は、10~25%を株式に振り分けることを検討してみましょう。これはインフレ対策といえます。

ただし、年代的にリスク許容度は低下していますので、無理は禁物です。基本的には現預金、債券を中心にしておきましょう。NISAの範囲内で運用する、株価の変動に影響されにくい株主優待や高配当を狙って、投資するのもおすすめです。

■60歳以上の家族もち向けのポートフォリオ(図表6)

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<60歳以上の家族もちの投資でのポイント>

1. すぐに利用しない余裕資金は運用してもよい。年金を繰り下げ受給するよりも、メリットがあるか検証しておく

2. 徐々にリスク資産の配分を減らしていく

3. NISAの枠内など枠を決めて老後資産形成を行っていく

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※年金の繰り下げ受給:国民年金厚生年金に加入していて条件を満たす場合、原則65歳から年金を受け取ることができるが、本人が希望すれば年金の支給開始を66歳以降、75歳まで好きなタイミングで、1ヵ月単位で受給を遅らせることができる

伊藤 亮太

キラージャパン株式会社 取締役、ファイナンシャルプランナー

慶應義塾大学大学院商学研究科修了。在学中にCFPを取得する。その後、証券会社時代には社長秘書、営業、経営企画部門等に勤務。2007年11月にスキラージャパン株式会社設立。現在は、資産運用や保険、年金に強いFPとして、数多くの執筆・相談を手掛けている。著書に『株取引の要点 買いのタイミングはココだ』(技術評論社)、『キホンから新常識までまるわかり!超図解 お金再入門』(PHP研究所)など多数。

(※写真はイメージです/PIXTA)