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 いよいよ、プロ野球キャンプも終わりオープン戦がスタート。開幕へ向けての実践が本格化する。一方で侍ジャパン強化合宿はWBC本戦へ向け、チーム練習はさらに熱を帯びてきた。そのメンバーの中にオリックス・バファローズからは山本由伸(24)、宮城大弥(21)宇田川優希(24)と先発二本柱、セットアッパーの三人が選ばれている。

 パ・リーグ連覇を果たし、日本一の称号を手にして今季を迎えるオリックス。四半世紀に渡り、優勝がなかったチームがこの数年、劇的に変化し、チーム全体のパフォーマンスが上がっている。

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「あえて教えない。まず観ること。観続けることですね。チームが一貫しています」

 昨季まで投手兼任コーチとしてオリックスリーグ連覇に貢献した能見篤史氏はこう語る。

 中嶋聡監督が二軍監督、そして一軍監督に就任してからは飛躍的にチームが結果を残すようになったオリックス。その指導法には特徴がある。特に2軍での育成期間には各選手の長所を見抜く作業を首脳陣が強く意識して行う。

オリックスの首脳陣の皆さんは指導することを敢えて我慢して、各選手のストロングポイントを集中的に見つけに行く。そして、その強い部分をいかに伸ばし、成長させていくかを考える。一軍も二軍もここは一貫していると思います。チームとして選手の特徴を理解し、長所を伸ばしていく指導法、選手とのコミュニケーションの取り方を考えている。それが結果に繋がっている」と野球評論家の鳥谷敬氏は分析する。

 山本由伸のやり投げ投法を変えさせることはしなかったオリックス。矢のようなキットを使いトレーニングを行う調整法にも彼の長所を伸ばすことを最大限に考えメスを入れなかった。その結果、宮城、宇田川山崎颯一郎(24)ら続々と若手が台頭し、気が付けば日本一の投手王国となった。野手も宗佑磨(26)、紅林弘太郎(21)らが台頭し、二軍でプレーしていた選手らが続々と一軍に上がってくるようになった。そして、どの選手も自らの特徴、独特のスタイルを持っていて観ていて非常に楽しいのである。

”教えず、まずは敢えて観る、見る“

 オリックス独特の指導法が開花し、選手の成長速度が一気に早まった。指導する側に首脳陣は時には我慢も必要であろう。教えたい…そこを敢えてまだ我慢する。ストロングポイントを伸ばす。そこを伸ばすために我慢する。このルールは簡単に見えて簡単ではない。

 吉田正尚(29)がボストンレッドソックスへ、移籍し入れ替わるように森友哉(27)らが加入した。投手力をはじめ、戦力はもちろん優勝候補の一角と言えるオリックス。今季はまたどんな選手が出てくるのか。また、その選手の特徴がどんなものなのか。ストロングポイントはどこなのか。この観点からオリックス・バファローズを観てみるのも楽しみのひとつだ。

文・田中大貴 (たなか・だいき)

1980年4月28日兵庫県小野市生まれ。小野高では2年から4番で打線の主軸を担った。巨人で活躍した高橋由伸氏にあこがれてか慶應義塾大学へ。4年春に3本塁打でタイトルを獲得。フジテレビ入社後は主に報道・情報番組とスポーツを担当。「とくダネ!」「すぽると!」ではバンクーバー五輪、第2回WBC北京五輪野球アジア予選、リオ五輪キャスターなど様々なスポーツイベントを現地からリポートした。

「あえて教えない。観続ける」オリックスが”日本一の個性派集団”になった理由