瀬戸大橋明石海峡大橋レインボーブリッジなど、大型吊り橋の橋桁の下には鉄鋼でできた箱型の空間があります。鉄道を通している橋もありますが、実はあれそのものが安全確保のために重要なのです。

橋が揺れないようにする「補剛トラス」とは?

瀬戸大橋明石海峡大橋レインボーブリッジなど、大型の吊り橋には橋桁の下部に、鉄骨が張り巡らされた箱型の構造物があります。これは「補剛トラス」または「補剛桁」と呼ばれるもので、アメリカで発生したある事故を教訓として生まれました。

アメリカのワシントン州ピュージェット湾口の海峡、タコマナローズにかかる当時世界3位の長さを誇ったタコマ橋(タコマナローズ橋)は1940年11月7日、完成から4か月しか経ってないにも関わらず突如、落橋します。その直前、橋に大きなたわみが起きたことから通行止めがなされ、人間の犠牲者はなかったものの、橋の上に停められたクルマにいた犬1匹が犠牲となりました。

事故後、模型による風洞実験による検証がなされ、原因は風速19m毎秒という風によりねじり振動が増大し、ケーブルが破断された結果、落橋したことが原因とされました。理論上はもっと強い風にも耐えられるとされていたのにも関わらず、あっけなく落橋してしまったのは、横風が作り出した空気の渦により、つり橋がねじれるように揺れたためとされました。

このタコマ橋は、橋桁を薄くし、意図的にたわませることで強度を確保していた当時の最新技術の吊り橋でした。しかし、この設計だと、横風による揺れに対応できないということが教訓に。以降多くの大型吊り橋には、剛性を高め強風時における桁の安定性を確保し、致命的な揺れを防止するため、橋桁の下に三角形状の骨組みによるトラス構造を追加した、補剛トラスが備わることになりました。

また瀬戸大橋では、この補剛トラスのスペースを活用して2層式構造とし、道路の下にJR瀬戸大橋線が走っています。レインボーブリッジに至っては、新交通ゆりかもめに加え、一般道や歩道も通されています。ちなみに、淡路島と徳島を結ぶ大鳴門橋には新幹線を通す計画が当初あり、その名残として2層式になっています。

なお、タコマ橋の落橋の話は、初めて「ブロック工法」と溶接を多用し大量生産されたリバティ船の溶接不良による損壊事故、初のジェット旅客機であるコメット号の金属疲労による空中分解事故と並び、現在でも技術発展における重要な教訓として工業・工学系の学校に入ると学ぶこともあるほどです。

レインボーブリッジの補剛トラス内を走るゆりかもめ(画像:写真AC)