人気キーボードアプリ「Simeji」がアプリ内で実施したアンケートの結果を発信する「Simejiランキング」の中の「トレンド寸前!次世代SNS TOP10」で「mixi」が第5位にランクインした。「mixi」は2004年に誕生した趣味で繋がるコミュニティサイト。いわばソーシャルメディアの先駆けのような存在であった。2004年ごろにガラケーを有したかつての若者たちは、いまのZ世代がTwitterやInstagramを使うようにmixiを使っていた。そのmixiがなぜ、いまになってZ世代からの注目を集めているのだろうか。その秘密を紐解いていきたい。

参考:【写真】Z世代が注目する次にくるSNSランキング

(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000657.000006410.html)

<足跡機能による初めての「SNS疲れ」>
 実は筆者自身もmixi世代。「前略プロフィール」を書いて「リアタイ」を更新する高校時代を過ごしていたが、ちょうど大学に入学するというタイミングでmixiが爆発的に流行した。同級生や先輩などとマイミク(mixi内でのフレンド)になり、そこで交流したことがきっかけで大学での新生活にスムーズに溶け込めたという経験も。当時のmixiは確信的で、非常に熱中できるサービスであった。

 mixiの主要な使い方は今も昔もそう変わらず、Twitterのように短い文字数の内容を投稿する「つぶやき」機能、ブログのような「日記」機能、Instagramのような「フォト」機能が主なコンテンツとなる。さらに当時は、多くの物議を醸した「足跡」機能もあった(2011年に廃止後、現在は復活)。現代のように様々なプラットフォームにアカウントを持つのではなく、当時はmixi一つで友人のつぶやきから最新の写真、はては長文の日記まで、見ることができたのだ。また、サービス開始時のmixiは完全招待制だったため、仲の良い友人と共にスタートする人がほとんど。匿名ではなく、すでに気心知れた友人と一緒にSNSに参加することで、リアルと地続きでmixiを楽しんでいた。

 一方で、多くの人がはじめての「SNS疲れ」を経験したのも、このmixiである。mixiには前述の足跡機能があったため、誰かが自分のプロフィールページを訪れるとそれがマイページに通知されてしまう。さらにはつぶやきや日記へのコメント返しなど、誰からともなく始まった「マナー」によって疲弊してしまう人も。だが、この足跡機能があったからこそ、mixiが何よりも楽しくて人々を惹きつけていたというのも事実なのだ。意中の人からの足跡に一喜一憂したり、こちらはなんとも思っていない人が繰り返し足跡をつけていることに気づいてしまったり……これまで肌感でしか知り得なかった「人間関係」をログのように可視化させてしまっていた。まだSNSがほとんどなかった、あの当時の私たちには非常に刺激的な機能でもあったのだ。

<人々はTwitterの後継SNSを探している>
 そんなmixiがなぜ今、Z世代のトレンドにランクインしたのだろうか。実はこれにはTwitterが大きく関係している。アンケートの集計時期にTwitterのCEOがイーロン・マスクに変わったことで経営方針の変更が明るみとなり、サービスの仕様に大きな変化が予想された。多くのTwitterユーザーは一時的な避難所、またはTwitterが消滅した際の次の“居場所”を探すために、主要SNS以外のプラットフォームに注目をすることになる。ここで30代~40代のかつて楽しんだ世代がmixiを話題にする機会が増えていった。これがTwitter上で拡散されZ世代の耳に届くことになるのだ。

 実はこの「トレンド寸前!次世代SNS TOP10」は「Z世代が注目している」SNSであり、必ずしも実際に普段から愛用しているSNSという訳ではない。あくまでも「これからくるのではないか」という期待を感じているSNSとしてランクインしているのだ。実際に、第1位~第3位までのSNSについてはZ世代が実際に使用してみて使用感が良かった、便利だった、というコメントが目立つなど本当に次世代を担う可能性を感じさせる。だが、mixiに関しては「10代が好きそう」「よく耳に聞く」など、使っていないが名前を知っているからという理由で票を投じたZ世代も少なからずいた様子。どうやら今現在、爆発的にZ世代mixi利用者が増えているというわけではなさそうだ。

 しかしこのランキングの通り、mixiが再起を果たす可能性は大いにあるだろう。Twitter上では未だ不安定なサービスに不安を感じて外部SNSのアカウントを新たに取得するユーザーの動向が見られる。さらに、こうしたランキングの存在も影響したのか、かつてのmixiアカウントにログインしてみたという声もSNS上にかなりの数あがっている。このような動きの中で、再びmixiが盛り返していく可能性もある。

 最後に、いま今のmixiについても言及しておきたい。mixiを現在主流のSNSと比較すると、UIに洗練された印象がなく、Z世代の求める使用感には達しきれていない印象もある。だが、このシンプルさが一周回って新鮮だと捉えられる可能性もなきにしもあらず。また現在のmixiが持つ機能は、誰もが馴染みがある機能ばかり。筆者が学生だったころ頃のように、友人との仲を深め、コミュニティ機能で趣味の仲間と繋がるなど楽しむための可能性は広がってきている。加えて、mixi内の情報は非常にクローズドで、mixiにログインしていないと読めないものや、マイミクにしか公開されていないものがほとんど。Google検索にさえ引っかからない。そのため、不特定多数からの視線に疲れてしまっている人にとっては向いているプラットフォームといえよう。

 懸念されるのは、クローズドであることが問題行為の温床になってしまわないかという点だ。昨今はSNSをきっかけに迷惑行為が発覚するケースも多い。こうした問題行為が、クローズドな空間の中で見過ごされてしまわないかが安全管理の上で重要になる。そのコミュニティがZ世代やその下の世代が安心して利用できる環境であるかは、保護する立場にいる大人たちがしっかりと精査していくべきであろう。

(Nana Numoto)

pixabayより