幼馴染の女性2人組YouTuber・むくえなちっく。2023年1月22日に登録者数100万人を突破するなど破竹の勢いを見せる2人は、2022年にスカイピースとのコラボを皮切りに人気が爆発。その後ヘラヘラ三銃士や、コムドットなどとのコラボを重ね、YouTube上で存在感を放っている。今回は登録者数100万人突破を目前に控えたタイミングで、むくえなちっくにインタビューを実施。2022年を振り返ってもらい、YouTubeへの想いを聞いた。

参考:【写真】むくえなちっく。インタビュー撮り下ろしカット

ーーお2人はYouTubeを始める前に、ミクチャで活動されていましたよね。YouTubeへの移行はどのように決めたんですか?

むく:最初のきっかけは、当時のマネージャーさんの勧めだったんです。ミクチャを始めてから事務所に入って、ライブ配信をはじめいろいろなお仕事をやってるうちに、「2人で話しているのが面白いんじゃないか」みたいなことを言ってくれて。2人ともYouTubeは見ていましたし好きだったので、じゃあやってみようかといった気持ちで始めました。

えなぴ:当時は2017年で、5年ぐらい前ですね。

ーーその頃はヒカキンさんなど今のレジェンドYouTuberの方々が、 YouTube内だけでなく世間にも認知され出した頃でしたね。

むく:そうでしたね。最初は自分たちがYouTuberという感覚は全くなくて、同じように動画投稿をしていましたけど、そういったYouTuberの方々とは全然別物だと思っていました。

ーーその感覚が「自分たちもYouTuberだ」という自覚に変わってきたのは、わりと最近ですか?

えなぴ:それでいうと自分の動画のスタイルも確立されてきた今でも、未だにほかのYouTuberさんとは感覚が違う気がするんですよ。YouTubeって大きく分けると2通りのパターンがあると思っていて、ひとつはSNSのように自分のライフスタイルを映すタイプの人と、もうひとつはいわゆるYouTuberらしい動画企画を撮影して投稿する人。それでいうと、むくえなはその間みたいなところにあって、たくさんの人が見てくれている自信や責任はもちつつも、感覚としては「やっぱり普通のYouTuberさんとは違うな」と感じてしまいます。

むく:他のYouTuberさんとコラボをさせていただく機会も増えたんですけど、関われば関わるほど、自分たちとの違いを感じています。

ーーそれは動画撮るときの姿勢といったことでしょうか?

えなぴ:それもありますね。私たちは2人で撮影するときは本当に緩くて、カメラを回し始めるときも「これから撮影」といった切替は一切なくて、普通に雑談しながら、ぬるっと撮影を始めるんです。

むく:最初の挨拶もしないときもあるくらいだもんね。

えなぴ:うん。ほかのYouTuberさんは「じゃあオープニングから撮ろう」と段取りをきちんと進めたり、「ここで1回カメラを2カメにしよう」と凝った演出や、しっかり順序立てて撮影を進める印象があるんですけど、私たちはYouTubeを5年続けた今でもホームビデオを撮るみたいな感覚で撮影をしていて、いまだにYouTuberと一般人の中間にいる感覚です。登録者数100万人を達成しても、果たして実感が湧くのかどうか……。

むく:他のYouTuberさんと自分たちが違うからね。実感がわかないよね。

ーー登録者数100万人のお話もでましたが、むくえなさんは2022年に急成長したクリエイターでもあります。1月のスカイピースさんとのコラボ動画から、右肩上がりでしたね。

むく:全然違う世界みたいな感じです。

えなぴ:最初はなんか不思議な感じだったんですよ。現実に思えないというか、例えばたくさんのYouTuberさんがいる企画に呼んでもらうとかも、自分達はおまけみたいな(笑)。一般人が現場に紛れ込んでいるみたいな感覚だったんですけど、やっと自分たちもみんなと一緒にやる企画に、呼ばれる立場にいるんだというのを自覚し始めた。だんだん腑に落ちていった感じはあります。やっぱ1年通して、そういう機会が多かったので、経験していく度に実感していく感じはありましたね。

ーー去年はTGC teen など実際にお客さんと会う機会もあったと思います。

むく:対面でファンの子と会うことがずっとなかったんで、TGC teen に初めて出たときは「え、こんなに私たちを知ってる人がいるんだ!」みたいな驚きでした。

えなぴ:ほんとにびっくりで。自分たちはずっと内輪だけで活動していると思ってたよね。

むく:そう。いろいろな人が集まるイベントに呼ばれてようやく世間でのむくえなの認知度を実感した気がして。今までは「私たちのことをどれぐらいの人が知ってるんだろう」みたいなことは、全然わからなかったから、そこがびっくりしたよね。

ーー動画ではコメントという形で体感はしているかと思いますが、実際に観衆を目の当たりにすると実感がわきますね。

えなぴ:むくえなを見てくれる人は、友達みたいな感覚なんです。

むく:そうそう。

えなぴ:最初はミクチャをやっていたので、ミクチャを見てくれてた人がYouTubeもみてくれていて、といったような感覚で、視聴者は全員知り合いのような気持ちでずっと見てくれているんだろうなと思っていたんです。それを観衆という形で目の当たりにして……不思議な感覚でした。

ーー5年長く続けてる中で、意外と大変だったことはありますか?

えなぴ:大変という感覚はなかったのですが、ちょうど高校を卒業したタイミングが1人苦しかった時期でもあります。当時は新しいことができてなくて高校を卒業したら“高校生”という肩書きもなくなりますし「このままどんどん人気なくなっちゃうかも」みたいな漠然とした不安がありました。ちょうど「自分たちだけしかないものを見つけなきゃ」と考えていたタイミングだったので、YouTubeでどうやったら新しい人に見てもらえるんだろうと考えていました。

ーーでもむくえなのコンテンツ自体はいい意味で昔から変わっていないですよね。

むく:コロナの時代になってから、YouTubeでの流行りが変わっていったんです。それはめちゃくちゃ作り込んだ企画というよりかは、それと並行してただ雑談しているだけの動画といったライフスタイルを見せるものも、みんなに見てもらえるようなコンテンツになっていって。むくえなは以前からそういった方向性の動画を上げていたので、自然と自分たちが話して、食べている動画がみんなに見てもらいやすくなったのはあります。

えなぴ:元々自分たちがなにをしても見てもらえるようになりたいという思いは、ずっとあったんです。自分たち自身が面白いと思ってもらえる人になりたくて。 なので昔からそういうスタイルは変わってないんですけど、見てもらえるように、考える力がついたのかな。やっていることは変わらなくても、サムネや何を食べるかとかそういうところがだんだんわかっていった感じもありますね。

ーー時代がむくえなさんに追いついた感じがあります。

えなぴ:それファンの子にコメントで1回言われたことあるんですよ(笑)。 でも追いついたというよりかは、ラッキーぐらいの感覚なんですけど。そういう流行が来て、追い風になったのはたしかにありますね。

ーー2022年はいろいろなコラボが活発な年でしたが、それ以前はあまりコラボはなかったですよね?

えなぴ:ほとんどないね、年1回やるかやらないかといったところで。

むく:それまで自分たちから「コラボをしてください」と依頼したことがなかったんです。自分たちにも自信がなくて、ずっとお誘いいただいたものに参加するだけだったので。そこで、2022年に「いろいろな人とコラボをする」という目標を決めて、そこからありがたいことにいろいろな方と交流することができるようになりました。

ーーやはり転機はスカイピースさんですか?

えなぴ:本当にそうですね。そこから始まっていろいろな人に声をかけてもらえるようになりました。そのあと続いてヘラヘラさんやコムドットさんにも同じようにお誘いいただいて、いろんな企画に呼んでもらえたりしたのも大きかったなと思います。やっぱりそれまでは他のYouTuberさんも、関わりづらかったと思うんです。むくえなは、2人だけの世界観が強いので、コラボ向きじゃないと思われていた節もあるんじゃないかと思っていて、そのイメージを払拭してくれたことで、世界が広がった気がします。多分YouTuberさんだけでなく、視聴者も「同じような扱いをして大丈夫なんだ」と思ったんじゃないかな。

ーーコラボをしていくなかで、YouTubeへの向き合い方に変化はありましたか?

えなぴ:大まかには変わってないですね。むくえなで例えば「100万円を使ってすごい企画をしよう!」といったことはしないですけど、コラボでいろんな経験をさせてもらってるからこそ、2人のYouTubeでは、よりしょうもないことしたくなっているんです。

むく:そうだね(笑)。

えなぴ:どれだけ自分たちだけの空間でふざけられるかみたいなことは考えていて、コラボを通して見てくれるようになった人も多くて、元々自分たちを知らない人たちが動画を見ることを考えたときに、発言や編集の仕方といった部分で、少なからず意識は変わっていると思います。

むく:確かによそでやってることが“YouTuberっぽい”から、逆に全然“YouTuberっぽくない”ことをやろうという意識はあるかも。

えなぴ:でもコラボも楽しいんだよね。ほかのYouTuberさんの企画で、それこそヌルヌル階段とか、自分たちではできないからこそ、呼んでもらったときに、普通に楽しんじゃって(笑)。そういうギャップが生まれるのも私は好きで、視聴者にもいろいろなむくえなが見れるのは面白いんじゃないかと思っています。

ーー2022年の中だと、1番印象に残ってる動画はありますか?

むく:ディズニーランドに行く前日に当日のコーディネートを決めるという動画を出したんです。本当に何気ない動画なんですけど、これは実は最初は動画を回す予定じゃなくて。 単純に「友達とディズニーに行くから、コーデ決めよう」とやっていたノリが面白かったので、途中から「ちょっと動画も回しちゃおう」と撮影して、そのまま投稿したものなんです。だから再生数も伸びるなんて全然思っていなかったんですけど、100万再生超えちゃって……。まさかすぎる結果だったんですけど、私たちの素の姿を視聴者さんが受け入れてくれたというか、いろいろな人に見てもらえる動画になったのが嬉しいですし、あとはボロボロな状態の自分たちが映っているのでそこには複雑な気持ちも混ざったりして(笑)。思い出に残っています。

ーーむくえなさんと視聴者の間で求めている感覚が共有できている証拠ですね。えなぴさんはどうですか?

えなぴ:やっぱり1番に思い浮かぶのは、スカイピースさんとのコラボ動画です。あれはコラボが決まってからも、撮影前日も、 当日も編集も、投稿された瞬間もずっと緊張していました。そしてむくえなにとってのターニングポイントというか、あの動画がきっかけで変わったところがいっぱいあるので、1番印象深いかもしれないですね。

むく:ひとつの始まりの動画だもんね。

ーーたしかに見返すとあの動画の冒頭の2人が集合するところから、いつもと様子が違いますね。

むく:もうおかしかった(笑)。この動画は自分たちでも何度も見返したし、友達もInstagramのストーリーに載せてくれたりして、すごく反響があったんです。周りもみんなびっくりしていたので、改めてスカイピースさんの大きさを実感しました。

ーー2023年はどんなことに挑戦してみたいですか?

えなぴ:いっぱいあるんですけど、「自分たちで曲を作る」とか「グッズを作る」とか自発的なことを2人でこれまでたくさんやってきて、それも続けたいんですけど、「むくえなを使いたい」みたいな感じで、外部の人からイベントに呼んでいただいたり、広告に使っていただいたりといったお仕事もどんどん増やしたいなという気持ちはあります。「YouTubeだけじゃないむくえな」という状態を目指したいです。

むく:本当にいろんなことをやりたいので、逆に言ったら「これになりたい」といった目指しているところがないんです。YouTube以外の仕事も、どんどん広がっていったらいいなと思うし、それこそ1人ずつ個人でも成立する力もつけていきたいなとも思っていますね。

ーーたしかにむくえなさんの個人での活動というのはこれまで想像つかなかったです。

えなぴ:近いところで言ったら、ほかのYouTuberさんの動画に、個人で呼ばれて行ってみてほしいんです。絶対に面白いと思うし、そういうところから「この子1人でも喋れるんだ」とか思ってほしいですね。2人だからできるコラボの仕方もあれば、むくにしかできないコラボの仕方もあると思うんですよ。2人とも正反対だからこそ、そういう形も面白いんじゃないかと思うんですよ。

ーーいいですね。「むくえな貸し出します」でコラボウィークができますね。

一同:(笑)

えなぴ:それすごいよね(笑)。もう「なんでも屋」みたいな感じで呼んでもらってもいいですし。個人的にはむくはデザインとかが得意なんですよ。 センスもあるし、好きなブランドもいろいろあるので、例えばそういうブランドとコラボして、商品を作るみたいなことをむく個人でやってみてほしいという思いがあります。

むく:えなぴはMVに出演だね。

えなぴ:そう。私は演技が好きなので、そういったことに挑戦したいなと思います。でもそうやって私たちがそれぞれで活動することを「寂しいと思う子もいると思うんです。「2人の絡みが好き」とか「2人の時間が少なくなっちゃったらどうしよう」と心配する人もたくさんいると思うんです。でも、自分たちはあまりそうは思っていなくて、逆にそれぞれがいろいろなところで活躍していて、でもYouTubeというホームでは変わらずに、“むくえなちっく”という場所が存在するという状況が面白いんじゃないかとも思っています。

むく:YouTubeは仕事でもあるし、遊びでもあるという不思議な存在で、感覚としては友達に向かって話しているような感じなんです。だからこの友達関係は疎遠になっていく心配はないし、YouTubeがあるからこそ、逆にいろいろな場所に足を伸ばしてみることができるみたいな感覚です。

(取材・文=安田周平)

むくえなちっく。(写真=梁瀬玉実)