新型コロナの影響で停止していた外国クルーズ船の受け入れがいよいよ再開。続々と寄港予定も決まっています。国ぐるみで受け入れを歓迎する背景には、まさに宝船ともいえる効果がありました。

外国クルーズ船日本寄港再開 第一号は元・日本船

新型コロナウイルス感染症の水際対策として停止していた外国クルーズ船の受け入れがいよいよ再開されます。

寄港第1号はドイツクルーズ船社フェニックスライゼンが運航する「アマデア」(2万9008総トン)で、2023年3月1日に静岡の清水港へ入港します。同船のかつての船名は「飛鳥」で、1991年から2006年まで日本郵船グループの郵船クルーズが運航していました。過去には横浜港で後継船の「飛鳥II」(5万444総トン)と並んだこともあり、日本にとって馴染みがある船舶で、外国クルーズ船の寄港が再び始まることになります。

横浜港の客船入港予定を確認すると、すでにプリンセスクルーズの「ダイヤモンド・プリンセス」(11万5875総トン)やホーランド・アメリカ・ラインの「ウエステルダム」(8万2348総トン)といった船名が出ています。

2020年9月に開業しつつも外国客船の接岸が無かった「東京国際クルーズターミナル」にも、初の外国クルーズ船として「アマデア」が接岸することが公表されています。

訪日外国人(インバウンド)客による観光需要の回復を期待する自治体からは、外国船籍を含む国際クルーズ運航の早期再開に向けた要望が以前より出されており、待ちに待った寄港となりそうです。

なぜクルーズ船寄港を熱烈歓迎? その“効果”

外国船による日本周遊クルーズは、大都市圏だけでなく地方にも大きな経済効果をもたらします。コロナ禍前の外航クルーズ船寄港による経済効果は、訪日旅行消費だけでも年間約805億円。訪日クルーズ旅客数は2019年まで3年連続で200万人を超えていました。日本人のクルーズ利用客数も増加傾向が続き、2019年の実績では約38万人がクルーズ船に乗船しています。

クルーズ船は交通やショッピング、食事といった乗船客の観光に伴った消費だけでなく、入港料や着岸使用料といった税収や、タグボートの手配、航行するのに必要な食料や飲料水、燃料の補給なども期待できます。例えば「スペクトラム・オブ・ザ・シーズ」(16万9379総トン)の定員は乗客4246人と乗組員1551人。これだけの規模の船が清水港や鹿児島港に入り、乗客・乗員がさまざまなものを消費するわけです。港周辺の事業者にとって、寄港する船舶そのものから生まれる需要は非常に大きいものがあります。

再開クルーズ中も感染は発生 しかし

コロナ禍に入るとクルーズ船の運航は休止を余儀なくされたものの、2020年7月には欧州で、2021年6月頃からはアメリカやアフリカ、中東で国際クルーズが再開。2022年後半にはシンガポールマレーシアインドネシアでもクルーズ船の寄港が徐々に始まっています。

一方で日本では外国クルーズ船の運航再開の見通しが立たず、国土交通省港湾局は、このままでは「外国船がアジア配船を欧米へ見直す」との懸念を抱いていました。

こうした中、政府は2022年9月に空港と港の新たな水際対策の緩和措置を発表。地方公共団体などの協力を得つつ、個別港ごとに受け入れ準備が整い次第、順次、国際線の受け入れを再開する方針を示しました。これを受け、日本国クルーズ協議会や日本外航客船協会、日本港湾協会といた業界団体が感染拡大予防ガイドラインの作成や改訂を行い、国交省は2022年11月、日本における国際クルーズの受け入れを再開することを発表しました。2023年は3月から12月にかけて166本の外国クルーズ船が運航される予定となっています。

ガイドラインでは、ワクチンを全乗組員が3回、乗客95%以上が2回接種していることや、乗船前3日以内にPCRもしくは抗原定性検査で陰性の結果を提示すること、船内の各施設で感染予防対策を徹底させていることなどが求められています。そのうえで各クルーズ船社は、寄港を予定する港の関係者と協議を行い、合意を得ることが必要です。

日本からは、商船三井客船の「にっぽん丸」が国際クルーズの再開第1号として、2022年12月15日に横浜港を出港し、モーリシャスシンガポールなどを巡り、2023年1月31日に横浜港へ戻ってきました。クルーズ中、乗組員や乗客に新型コロナの感染が確認されたものの、徹底した隔離で集団感染は防がれています。

2020年2月に発生した「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染は、日本で新型コロナが大きく取り上げられるようになったきっかけの一つでした。同船を含む外国クルーズ船の寄港再開は、長く続くコロナ禍というトンネルの出口になるのか。その動向に注目が集まっています。

ダイヤモンド・プリンセス。2019年横浜港で(深水千翔撮影)。