キリスト教系の宗教団体「エホバの証人」の元信者らを支援している弁護団は2月28日、都内で記者会見を開いて、子どもの輸血を認めなかったり、さまざまな道具で身体を打つ「児童虐待」が、教義によって日常的におこなわれてきたとうったえた。

厚生労働省は2022 年、「子どもに対する宗教行為の強制は児童虐待である」というガイドラインを公表している。弁護団は、教義による体罰は児童虐待にあたるとして、これまで寄せられた相談を厚労省に通報したという。

弁護団の田中広太郎弁護士は会見で「まったくの第三者である全国レベルの巨大な宗教団体が、各家庭に対して、全国一律で児童虐待を推奨するという、法が想定していない事態が明るみになりました。社会はこれに目を向けてほしいです」と語った。

●「今苦しんでいる信者や元信者、2世に寄り添う」

この日会見を開いたのは、「エホバの証人問題支援弁護団」。今年1月、2世や有志の弁護士16人によって設立された。医師などの専門家もアドバイザーとして参加している。

弁護団の田畑淳弁護士によると、これまでに弁護団が得た情報から、厚労省のガイドラインで定める「児童虐待」にあたるものがあるという。田畑弁護士は会見で、弁護団を発足させた目的を次のように語った。

「弁護団が得た情報からは、教団が作った過酷な環境の中で、現役の信者や元信者、2世が、体罰を受けてきたり、理不尽な生活を強要されてきた実態がある。現在も苦しんでいるみなさんに寄り添い、宗教を理由とする不当な束縛や制約から解放されるよう、活動していきたい」

弁護団では、まずは教団による被害実態を明らかにするという。また、憲法が保障する「宗教の自由」を否定する意図はないが、児童虐待などの違法行為があった場合には、行政機関と連携したり、法的措置も検討する。

●「漫画を読んだ」 …些細なことでも「ムチ」

弁護団によると、教団では「ムチ」と呼ばれる体罰が推奨されていたことがわかっているという。

田中弁護士は「ムチは、エホバの証人の中で非常に長期間にわたっておこなわれてきた児童虐待です。子どもたちは定期的に苛烈な暴力を受けていました」と説明する。

弁護団が2022年12月から2023年1月にかけて、「ムチ」についてインターネットによる調査を実施したところ、77人から回答があった。

調査によると、ムチは、子どもが教団が定めた規則に背いた場合、集会場や家庭内で日常的におこなわれていたという。早ければ0歳からおこなわれ、多くのケースで10代まで続いた。

田中弁護士によると、「集会で寝そうになった」「伝道活動で笑顔がなかった」「学校の同級生と遊んでいた」「漫画を読んでいた」といった些細なことでも「ムチ」はおこなわれたという。

「多くの被害で共通するのは、子どもは年齢を問わず自ら服や下着を脱ぐことを強制され、四つん這いになります。親が子どもの臀部に殴打を加えるというものです。

特徴的なのは、道具を使うことで、最初は手だったのが、年代を経ると、靴べらやガスホースになり、あるいは、子どもにより多くの苦痛を与える独自の道具が開発されていきました。

多くの方がおっしゃるのは、一発打たれただけで腫れ上がり、当日はお風呂に入れず、翌日も学校で椅子にも座れないほど痛かったということです」

中には、0歳時にオムツを脱がされて「ムチ」がおこなわれたり、生理中の女児に対しても下着を脱ぐよう強要されて「ムチ」がおこなわれていたケースがあったという。

「ムチによる精神的な打撃は凄まじいものがあります。『ムチをおこなう』と親に宣言された時点で、大泣きしたり、パニックになったという人もいました。調査では少なくとも2015年まで実施されていたことがわかっていますが、実の親から苛烈な暴力を受けて、大人になっても親との関係に苦しんでいる人が多いです」

●「法整備や当事者へのケアを」

弁護団が2月27日に公式ホームページ (https://jw-issue-support.jp/) を立ち上げたところ、多くの被害が寄せられているという。

弁護団にアドバイザーとして参加している社会福祉士の安井飛鳥弁護士は「今後は多くの当事者が声を上げていくことが予想される」と指摘したうえで、次のように話した。

「声を上げた当事者が不当な扱いを受けたりすることを防いでいかなければなりません。また、社会全体でこうした問題が生じさせている構造を変える必要があります。法整備や、当事者へのケア、民間活動へのサポートなどの取り組みが広がっていくことを期待します」

エホバの証人で「児童虐待」か、下着脱ぐよう強要してムチ打ち…元信者ら支援の弁護団「実態を解明したい」