多くの人が日常的に悩まされている「肩こり」。つらい症状を和らげるため、定期的マッサージに通っているという人もいるのではないでしょうか。一方で、「ただの肩こりで病院に行っていいのか悩む…」「病院に行ったら根本的に治せるの?」「お薬とかもらえるのかな」など、肩こりで病院を受診することに抵抗があったり、受診を悩んでいたりする声が聞かれます。

“病院以外”の場所で痛みを和らげるイメージのある「肩こり」で、病院を受診してもいいのでしょうか。お茶の水セルクリニック院長で整形外科医の寺尾友宏さんに聞きました。

肺や心臓の病気が隠れているケースも

Q.まず、「肩こり」について教えてください。

寺尾さん「首から肩にかけての部分に張り感があり、痛みやだるさなどが生じている状態を肩こりと呼びます。『肩』とついているものの、実際には『首』に関係した部分の症状です。

筋肉の過緊張や疲労、慢性的な炎症などが症状の原因とされていますが、それらの原因として姿勢や運動不足などが関係していることが多いです。関連する姿勢としては猫背、巻き肩などが挙げられます。また、胸椎(きょうつい)や肩甲骨の動きが低下することで生じる場合がある他、頸椎(けいつい)の症状として肩こり感が出ることもあります」

Q.一般的に、肩こりは「マッサージ」「整体」といった“病院以外”での施術で和らげるイメージがありますが、肩こりで病院(整形外科)を受診してもいいのでしょうか。

寺尾さん「肩こり感は、肺や心臓の病気の初期に出ることもあるため、隠れた病気を見逃さないためにも、症状が続くようなら病院を受診することをお勧めします。

病院での治療としては、物理療法や運動療法など、リハビリテーションによる治療を行うことが多いでしょう。物理療法が中心となる場合は、接骨院などでも同等の治療を受けられることがある他、マッサージや鍼治療が有効なケースもあります。

一方で、肩こりを理由に病院を受診する人はとても少ないように思います。病院を受診される患者さんは肩こりだけでなく、交通事故後に頭痛や吐き気といった自律神経症状が起こる『バレリュー症候群』のような症状がある場合に受診することが多いのではないでしょうか」

Q.肩こりで整形外科を受診した場合、どのような治療・処方が行われるのですか。

寺尾さん「リハビリテーションは必須の治療法です。物理療法やマッサージで痛みや張りを取るだけではすぐ元に戻ってしまうため、運動療法でよい姿勢、よい動きに変えていくことが必要です。この『変えていく』部分は理学療法士が担当する部分なので、この点が病院での治療の特徴といえるでしょう。

体の外から患部に衝撃波を当てて痛みを取る『体外衝撃波』を使った治療は、病院以外でも受けられる場合がありますが、病院で受けた方がいいと思います。圧力波を当てる部位を間違えると、逆にダメージになってしまうことがあるためです。例えば、間違えて肺に向かって照射してしまうと、肺が破れてしまうリスクがあるといわれています。鍼灸院、整骨院にも体の仕組みについて詳しく知っている人が多いので、多くの場合問題はありませんが、より安全な治療を受けていただく上では、病院で受ける方がいいと思っています。

トリガーポイント注射』や『筋膜リリース注射』、『ボトックス注射』など、注射で行う治療法は、病院でないと受けられません。また、筋肉を緩める飲み薬が有効な場合もあるので、投薬が必要な場合は病院を受診する必要があります」

Q.つらい肩こりに悩まされているものの、「ただの肩こりで病院を受診してもいいのか…」「病院を受診するほどでは…」と迷う人も少なくないようです。

寺尾さん「つらい症状があれば、整形外科で気軽に相談してください。その際、一時的に症状が緩和できればよいのか、それとも根本的な改善を目指したいのかで対応方法が変わります。一時的な症状緩和であれば、受けやすい治療や、患者さん自身と相性のよい治療法を選ぶのがよいと思います。根本的な治療を目指すのであれば、運動器リハビリテーションは必須になるため、理学療法士が在籍している病院を受診するのがよいでしょう。ご自身のニーズに合わせて、病院を上手に使ってみてください」

オトナンサー編集部

「ただの肩こりだし…」と悩む人も