死ぬな。
死ぬな。
死ぬな。
「おまえらはまだ死んではならんのだ」
息も絶え絶えに、腹の底から必死に叫ぶ。
冬の冷たい空気を吸い込む。
吐く息は一気に白くなった。
いつものような、くねらせながら大空を優雅に飛ぶ姿とはかけ離れた光景に映っているに違いない。しかし、そんなことにかまってはいられない。一刻の猶予もなかった。
ここはある港、目線の先には一台の車。その薄汚れた白い車は、真っ黒な海に向かって疾走している。
その車を追う、一柱の龍神がいた。
車を塞ぐように低空で飛び、あたりを周回して懸命に訴えるも、龍神の姿など見えぬ男はそのままアクセルを踏み込む。悟ったような、諦めたような、いや、むしろこれからいく「あの世」での裁きを覚悟するような、腹を決めた表情でハンドルを握る男。
眠っているのか、それとも眠ったふりをしているのか、車内には男の家族もいる。
なぜ、気がつかん。逝ってはならぬ。ダメだ、やめろ。
叫んでも、叫んでも……声は届かない。
なんと自分は無力なことか……。龍神は歯噛みしながら、それでも懸命に車を止めようとする。
【本書・プロローグより】
  • 本書の内容
プロローグ ~死んではならぬ
第1章 出会い~姥神~
第2章 類子
第3章 大工の正司
第4章 恋とモトくん
第5章 秋世さん
第6章 ケンイチ
第7章 ジャムパン
第8章 少女
エピローグ ~あなたのうしろ
  • 【著者プロフィール】
小野寺S一貴
作家・古事記研究者、1974年8月29日宮城県気仙沼市生まれ。仙台市在住。山形大学 大学院理工学研究科修了。ソニーセミコンダクタにて14年、技術者として勤務。東日本大震災で故郷の被害を目の当たりにして、政治家の不甲斐なさを痛感。2011年の宮城県議会議員選挙に無所属で立候補するが惨敗。その後「日本のためになにができるか?」を考え、政治と経済を学ぶ。2016年春、妻ワカに付いた龍神ガガに導かれ、神社を巡り日本文化の素晴らしさを知る。著書『妻に龍が付きまして…』、『龍神と巡る 命と魂の長いお話』、『やっぱり龍と暮らします。』『妻は見えるひとでした』など著作累計は35万部のベストセラーに。現在も「我の教えを世に広めるがね」というガガの言葉に従い、奮闘している。

  • 【書誌情報】
タイトル:うしろのおしず 龍と姥神
著者:小野寺S一貴
判型:四六判
定価:1650円(本体1500円+税)
発売日:2023/03/01
ISBN:9784594094133
発売:扶桑社

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