みなさんこんにちは、野球大好き山本萩子です。いよいよWBCが始まりますね。3月9日(木)に中国との初戦を迎える日本代表ですが、中でも注目を集めるのがヤクルト村上宗隆選手です。

王貞治さんのホームラン記録を塗り替えた若き大打者が、世界を相手にどれだけ通用するか今から楽しみにしている方も多いと思います。ということで、今日は村上宗隆選手についてお話させてください。

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村上選手は2000年生まれの23歳。私が村上選手を最初にこの目で見たのは、2018年の西都キャンプでした。当時はノムさんこと野村克也元監督がご健在で、車椅子ではありましたが、バックネット近くで村上選手に話しかけていたのが印象的でした。

西都というのはヤクルトの2軍キャンプ地で、ドラ1の村上選手もこの年は2軍からのスタート。2軍のキャンプは普段だったらほとんど注目を集めることはいないのですが、この日はノムさんがいたからか、多くの記者たちもいました。

そのとき、ノムさんは村上選手とずいぶん長い時間話していたんですよね。もちろん何を話していたかはわかりませんが、プロ入り後の村上選手がマスコミから注目を浴びる最初のきっかけになったと思います。

九州学院の頃から注目されていた村上選手。2017年のドラフトヤクルトの1位指名は清宮幸太郎選手でしたが、抽選の結果、指名権は日ハムへ。その次にヤクルトが1位指名したのが村上選手でした。このときも巨人、楽天と指名がかぶり、ヤクルトが見事に当たりくじを引きましたが、もし巨人に行っていたら今はどんな選手になっていたんだろうと思うこともあります。

プロ野球には昔からハズレ1位が大化けするというジンクスがあります。たとえば巨人の坂本勇人選手や、ヤクルトだったらトリプルスリーの偉業を3度も達成した山田哲人選手がそうでしたし、オリックス宮城大弥投手も同じくハズレ1位でした。(山田選手と宮城投手はハズレハズレ1位ですが)

余談ですが、我が家のバレンティンは保護猫でした。保護猫の譲渡会では、気になった猫を指名するのですが、最初に指名した子は条件が合わず、結局ハズレ1位の猫を我が家に迎え入れることに。最初に選んだ子ではなかったけど、今となってはバレちゃん以外は考えられませんし、これもきっとご縁ですよね。

村上選手だって、もし他の常勝球団に行っていたら今のように活躍していたかわかりません。当時のヤクルトには強打者がおらず、さらにABクラスをいったりきたりのチームだったからこそ、高津2軍監督(当時)が我慢して使い続けることができたのかも。

バレンティンがうちに来てくれて本当によかった
バレンティンがうちに来てくれて本当によかった

プロに入る選手はみな素晴らしい素質の持ち主ばかりですが、同じ育て方でいいかといえば、もちろんそんなことはありません。個人にあった育て方がきっとあるはずで、特別な選手は特別な育て方をしなければ、大きく伸びないとも聞きます。植物にとって土が大事なのと同じで、村上選手にはヤクルトのおおらかな土壌(雰囲気)がきっとあっていたのでしょう。

私が思う村上選手の良さは、クレバーなところ。試合の流れを読む力であったり、状況を俯瞰する力は卓抜しています。それは、村上選手の言葉にも表れています。

開幕から好調だった2022年。首位を独走するヤクルトは、ほんの少し成績が落ちても私たちファンは危機感を抱いていませんでした。しかし、快勝した試合後のコメントで村上選手が「いいときも悪いときも応援してください」と言ったときに、ハッとしたんです。そうだ、まだ優勝が決まったわけじゃないんだと。こんなことが言える22歳が他にいるでしょうか。

打者としての風格も魅力ですね。2年目のオープン戦を父と見に行ったのですが、私たちが座っていたバックネット裏のだいぶ上の座席まで、彼の風格が伝わってきました。村上選手は2年目のシーズンに「184三振」というセリーグ記録を更新していますが、のびのびとやらせてもらった結果が今につながっているのだと思います。

献身性もあります。2022年8月、プロ野球史上初の5打席連続本塁打を記録した次の打席では、6打席連続を狙うかと思いきや軽打。ゲーム状況から個人の記録ではなく、フォアザチームを考えたその精神に胸を打たれました。

巨人戦で敗色濃厚の9回に日本人最多記録となる55号を打ったときも笑顔がなかったのは、上記と同じ理由でした。

だからこそ、56号のプロ野球記録を作ったときの村上選手のほっとした笑顔は若者らしさがあってよかったですね。そう、村上選手はまだ23歳なんです。

注目したいのは、日の丸を背負った短期決戦で「精神的支柱」としての存在感でしょうか。あとはメジャー挑戦を本人も公言しているので、WBCが舞台をアメリカに移した後の天然芝での守備も要チェックですね。今から楽しみです。

それではまた来週。

★山本萩子(やまもとしゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作

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