30代、40代、50代......。少しずつたるみ、衰えていく体に戦々恐々とする日々。そんな後ろ向きな毎日を打破するべく、日本一美しく、ちょっぴりSな現役薬剤師福井セリナが、あなたの体のお悩みを解決します! 第63回のテーマは緊急避妊薬(アフターピル)」です。

【今週のお悩み】「政府が緊急避妊薬のスイッチOTC化を検討」って最近ニュースでよく耳にするけど、何がどう議論になってるのか、いまいちよくわかっていなくて。実際のところどうなんでしょう(40歳・会社員)

* * *薬剤師・福井セリナ
薬剤師・福井セリナ

まず「緊急避妊薬」とは、アフターピルとも呼ばれていて、望まない妊娠の危険性がある場合、性交から72時間(3日)以内に飲むことで妊娠を防ぐことのできるお薬です。

そして「スイッチOTC化」とは、医師の処方せんが必要なお薬を、安全性を確保した上で街の薬局やドラッグストアなどでで販売できるようにすること。

緊急避妊薬は、性交からできるだけ早く服用することが効果的で、主に排卵を遅らせるなどの作用によって、妊娠の成立を防ぐことができます。でも今は、産婦人科を受診して処方してもらわなければ手に入りません。しかも、価格も6000~1万円と高いので、必要な人に届いていない現状があるんです。

では、どんなときに緊急避妊薬が必要になるのでしょう?

■緊急避妊薬は、こんなときに必要!

コンドームが破れてしまった、外れてしまった」(コンドームの避妊率は100%ではありません!)
「避妊なしのセックスを断れなかった」
レイプの被害にあってしまった」
「ピルの飲み忘れで、きちんと避妊できているか不安......」(ピルは半日~数日飲み忘れるだけで避妊率が下がります)

福井セリナが緊急避妊薬について解説
福井セリナが緊急避妊薬について解説

レイプ被害や避妊の失敗があったとき、女性は妊娠してしまったのか、はたまたしていないのか次の生理が来るまでわからず、とても不安な時間を過ごすことになります。

そして、望まない妊娠をしたときにつらい思いをするのはどうしても女性側になってしまいます。さらに、中絶は心と体の痛みを伴いますよね。

産む決断をしたとしても、その後の人生が一変してしまうこと間違いなし。このようなことを防ぐためにも、緊急避妊薬へ女性がいつでも、どんな状況でもアクセスできるシステムが必要なんですね。

■6割の女性が「使いたい状況に直面した経験」がある

とはいえ、男性にとっては目にしたり、必要にかられたことがないお薬でもあると思います。

一方で、緊急避妊薬を使いたい状況に直面した経験がある女性は6割にも上るというデータもあるんです(2023年1月・オンライン診察でピルを処方するアプリ「smaluna」が1319人の女性に実施した調査より)。

こんなにたくさんいるなんで、薬剤師の私もびっくり! セックスの後、どんなに不安でも大好きな人に向かって「アフターピルが欲しい!」なんて、なかなか言い出せないのが乙女心なんですね。

自分ごととして一度、想像してみてください。大切な娘が、妻が、彼女が......。もしレイプ被害にあってしまったとき、パニック状態の中で受診させなければいけないって、とても酷ですよね。

■なぜ日本ではOTC化されないの?

緊急避妊薬はいまや世界の約90ヵ国で、処方せんなしで薬局で手に入ります。しかも「先進国首脳会議(G7)」の参加国の中で、薬局で手に入らないのは日本だけ......。医療は進んでいるはずなのに、避妊に関してはかなり遅れをとっているんです。

なぜ日本では緊急避妊薬がスイッチOTC化されないのでしょうか。政府の検討会議では悪用や濫用の可能性が指摘されています。

例えば「女性が知らぬ間に飲み物に入れられたりして、悪用されたらどうするんだ?」という意見。いやいや、そもそもどんな薬だって悪用は犯罪になり得ますし......。それに、性交後72時間しか効果がないことに加え、誤飲しても副作用は吐き気や眠気、肌荒れ、少量の性器出血など。命や将来にかかわるほどのリスクはありません。

「気軽に手に入れられることで、性が乱れる」との意見もあります。そもそも緊急避妊薬は女性が自分の体や生活を守るためのお薬。性の乱れと関連づけるのは安直だと言えます。実際に諸外国では、避妊薬を無償化したことで、中絶率が下がった事例もあるんですよ。

私もこのニュースにはとても注目しています
私もこのニュースにはとても注目しています

さまざまな意見がある緊急避妊薬の議論。これを機会にぜひ考えてみてくださいね。

<今週の教訓>緊急避妊薬のスイッチOTC化で、誰もが自分の体のことを自分で決められる未来へ♡

薬剤師・福井セリナ

福井セリナ(ふくい・せりな)
1994年5月23日生まれ 新潟県出身
慶應大学薬学部卒で現役薬剤師のタレント。都内の調剤薬局に勤務しながら、タレント活動やコラム執筆などマルチに活動している。2022年4月より文化放送カラフルブーケ』パーソナリティーを務める。
公式Twitter【@serina_fukui】
公式Instagram【@serina_fukui

取材・文/鴨居理子 撮影/市村円香

【画像】福井セリナ

薬剤師・福井セリナがアフターピルについて解説