アップアップガールズプロレス)(以下、アプガ(プロレス))の新メンバー・鈴木志乃が、3月6日に東京・新宿FACEで開催された東京女子プロレス『The Night Before GRAND PRINCESS '23』大会にてプロレスデビュー戦を行った。



鈴木は、昨年行われたアプガ(プロレス)新メンバーオーディションに合格。8月14日東京女子プロレス後楽園ホール大会でシノとしてお披露目された。彼女は、8月27日には横浜アリーナで開催された『@JAM EXPO 2022』でアプガ(プロレス)の一員としてアイドルデビューを果たす。その後、東京女子プロレスの練習生となってトレーニングを続けていった。

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しかし、前歴はバスガイドでスポーツ経験も特に無かった彼女は、同期の練習生がデビューする姿を見送る立場となっていた。ケガにも見舞われ思うように練習ができない時期もあった。いくつも心が折れそうな場面があったものの、彼女は悔しさをバネに前を向いて日々のトレーニングに打ち込んでいった。そして遂にこの日、アプガ(プロレス)のメンバーによるタッグマッチ、渡辺未詩&乃蒼ヒカリ組vsらく&鈴木志乃組でデビュー戦を迎えたのだ。



大会のオープニングの歌のコーナーで、アプガ(プロレス)がリングに登場すると、メンバー4人は「アップアップガールズプロレス)です!」と元気に挨拶。フレッシュなグリーンのコスチュームに身を包んだ鈴木は、先輩の渡辺、乃蒼、らくとともに『アッパーキック!』を歌唱。メンバーが4人となってパワーアップしたアプガ(プロレス)は、四方の観客に笑顔で歌とダンスを届けていった。歌い終えたあと、渡辺から今の気持ちを聞かれた鈴木は「緊張してます!」と語る。大会の始まりを告げるオープニングコールを鈴木が務めることになり、彼女は戸惑いながらもにこやかに「東京女子プロレス、スタート!」と声を上げ、この日の大会が始まった。


鈴木のデビュー戦は、第3試合に行われた。鈴木はオリジナルのテーマ曲『ワタシノセオッリー』が流れる中、元バスガイドらしく旗を持ってリングイン。選手名のコールとともに観客から無数の紙テープが投げ込まれると、彼女は両手を広げて喜びを露わにする。続いてタッグパートナーのらく、対戦相手の乃蒼と渡辺がリングに登場。そして、渡辺未詩&乃蒼ヒカリ組vsらく&鈴木志乃組のゴングが鳴った。


先発を買って出たのは現在インターナショナル・プリンセス王座のチャンピオンの渡辺とプロレス初戦の鈴木。2人は、ロックアップからのチェーンレスリングというプロレスのベーシックな攻防を見せていく。乃蒼とらくはスピーディーなロープワークを見せ、らくがチョップで乃蒼をテイクダウン。するとらくは鈴木を呼び込み、2人でらくの得意技・おやすみエクスプレスを炸裂させフォールを奪いにいく。


カウント2で2人を跳ね除けた乃蒼が、らくをコーナーに押し込むと、タッチした鈴木がリングに入る。ここからは乃蒼は、鈴木に猛ラッシュを決め、さらに渡辺がハードなヘッドロックで締め上げる。渡辺の強烈なショルダータックルにたまらずダウンする鈴木。彼女は、渡辺の力強いフォールをなんとかキックアウト。その後も鈴木は、渡辺のボディスラム、乃蒼のロープを使った顔面踏みつけ、髪をつかんでの投げなど厳しい攻めを喰らいまくる。


防戦一方となった鈴木に、観客は応援の声をあげる。だが渡辺は、力を込めたボディスラムで鈴木をマットに叩きつけるのだった。ダメージの深い鈴木だったが、なんとかフォールをクリアすると、反撃のエルボーを何発も渡辺に打ち込んでいく。しかし渡辺は、振りかぶってのレーザービーム一発で鈴木を吹き飛ばした。なんとか立ち上がった鈴木は、走り込んできた渡辺をダブルのエルボーでテイクダウン。息も絶え絶えの鈴木はらくにタッチし、らくは渡辺と乃蒼と激しい攻防を繰り広げる。アプガ(プロレス)の見事な試合っぷりに、観客は大きな歓声を上げた。


そして鈴木がリングに入ると、乃蒼に気迫のダブルチョップを連発。鈴木がフォールを奪いにいくのだが、乃蒼は難なくクリア。すると乃蒼は、鈴木にドロップキックを何発も放ち、さらにローリングクレイドル、コブラツイストドロップキックと厳しい攻めを浴びせ続ける。鈴木に覆い被さる乃蒼のフォールは、らくがカットに入りピンチを脱出。そしてらくは河津落としで2人まとめてダウンさせる。そして、リングに残った鈴木は遂に乃蒼を強烈なボディスラムでマットに叩きつける。


さらに鈴木は、走り込んでからのドロップキックを乃蒼に放つ。鈴木は力強いフォールで、乃蒼からピンを狙いにいく。一気に攻勢に出た鈴木は、乃蒼をスリーパーホールドで落としにかかる。鈴木の根性の強さに、会場は大いに沸いた。


しかし、百戦錬磨の乃蒼はスリーパーを振り解くと、今度は逆にコブラツイストで鈴木を締め上げる。ロープに手を伸ばすも届かない鈴木。彼女の奮闘ぶりに、会場には大きな声援が飛び交う。だが、激しい締め上げで完全にスタミナを削られた鈴木は、絡み付いた乃蒼のブルーレーサー(変形グラウンドコブラ)を返せず無念のギブアップとなった。勝ち名乗りを上げる渡辺と乃蒼。マットにうずくまる鈴木に肩を貸すらく。スリリングな白熱のバトルに、アプガ(プロレス)の4人に観客から大きな拍手が送られた。



試合後の記者会見で、渡辺に今日の感想を聞かれた鈴木は、息も絶え絶えに「自分の人生に起ってることじゃないみたいです」とリアルな思いを口にした。



乃蒼が「デビュー戦にしてはがんばってた。私たちもデビュー戦の頃を思い出しました。自分のデビュー戦は負けちゃったので、新メンバーのデビュー戦には勝ちたいなって気持ちがあったんです」とコメント。すると急に鈴木は「今日は、楽しかったです」と語る。一瞬戸惑った乃蒼だが「楽しかったなら問題ないです。立派になります(笑)」と笑顔で新メンバーにエールを送った。渡辺は「コスチュームも変わったし、ここから改めて4人体制のアプガ(プロレス)が始まったので、みなさんぜひ見ててください」と声を上げた。


記者からの今後どんなプロレスラーになりたいかという問いに、鈴木は「18歳で会社員になって、何も夢が叶えられないまま死んでいくんだなと思っていたんですが、今日こうやってひとつ夢も叶えられました。これからの人生、もっと夢が叶えられるんだなって思いました。ひとつも夢が叶えられないで終わると思ってた人生が、自分次第で夢が叶えられるんだなって。まだまだ弱いですけど、人を感動させるプロレスラーになりたいなと思います。ありがとうございました」と気持ちを振り絞って今後の思いを語った。


そしてグロッキーな状態の鈴木にコメントを求めた。試合直前の気持ちを聞くと「生きて帰れるのかって思いました」、リング上からの景色は?という質問に「景色、、どうだったんだろう?」、お客さんの顔は見えましたか?という問いに「見えて、、なかったです」「(考えが)言葉にならないです」と完全に思考停止状態。まさにデビュー戦直後で頭真っ白という姿がそこにあった。それだけ彼女は試合で全てを燃焼させたのである。


さらに、渡辺に試合の感想を語ってもらった。新メンバーを加えた4人での試合を振り返って、今の思いを聞くと「まずシノちゃんは、今までプロレスを知らない人生を送ってきて、東京女子プロレスに来てプロレスを知ってスタートしてくれたじゃないですか。私の中で、一番理想とするイメージの子なんです。あと、私たちのときとシノちゃんは違ったスタートだったんです。まだよく知らないプロレスを始める不安、いつデビューできるかわからない怖さ、一方先輩たちは1・4でデビューしてるという焦り、ケガの焦りとか不安要素がたくさんあったと思うんです。それを乗り越えて、やっとデビューできたんですよ。なので、一発一発のエルボーやひとつひとつの技に、魂や気持ちがすごくこもってましたね。きっといろんな悔しさをバネに、ここからどんどん成長していってくれるんだろうなって思ったら、すごくアプガ(プロレス)の今後が楽しみになりました。すでにお客さんもいっぱい応援してくれてたので、この調子でまっすぐいっぱい鍛えて練習して、今のまま伸びていったら、相当アプガ(プロレス)の力になる子だと思います。これから4人体制、どうなっていくのかほんとに楽しみです」と、鈴木の思いを汲み取り、試合を経ての思いを語ってくれた。


そして、新しいキャラクターが加わったアプガ(プロレス)の展望を聞くと「新しいカラーの子が入って、アプガ(プロレス)の幅が広がりそうだなと思いました。なんといってもタッグマッチがメンバーでできるのは大きいと思います。これからいろんな場所でタッグマッチをやれるかもしれないし、どうなっていくのか楽しみです。シノちゃんが入ったことで、確実にアプガ(プロレス)の力は増したと思います。本人は前に「私はダメな子なのかな」って言ってましたけど、全然そんなことはないです。安心してがんばってほしいです。そして4人体制で、アプガ(プロレス)を大きくしていきたいです!」と今後の野望を語った。


アップアップガールズプロレス)は、3月11日に『IDORISE!! FESTIVAL 2023』にも出演予定。所属する東京女子プロレス3月18日有明コロシアムで行われる『GRAND PRINCESS '23』大会、3月31日(現地時間)アメリカ・ロサンゼルスで行われる『TJPW LIVE in Los Angeles』とビックマッチが続く。フレッシュなパワーが加わったアプガ(プロレス)が、東京女子プロレスにまた新しい刺激を加えることは間違いなさそうだ。鈴木志乃のこれからの成長、アプガ(プロレス)の新たな展開に注目だ。


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