井上真央が主演を務める金曜ドラマ「100万回 言えばよかった」(毎週金曜夜10:00-10:54、TBS系)が現在放送中。主役級のキャストが見せる繊細な演技が涙を誘う同作は、放送後にドラマの関連ワードがTwitterでトレンド入りするなど、SNSを中心に話題となっている。このたび、WEBザテレビジョンではプロデューサーを務める磯山晶氏にインタビューを行い、主要キャスト陣の魅力やキャスティング理由、そして撮影裏話などについてたっぷりと語ってもらった。

【写真】骨格まで変わって見える…佐藤健“直木”が憑依した松山ケンイチ“譲”

■完全オリジナルの“切なくて温かい”ファンタジーラブストーリー

同作は、連続テレビ小説おかえりモネ」(NHK総合)などを手掛けた脚本家・安達奈緒子氏による、“切なくて温かい”ファンタジーラブストーリー。数奇な運命に翻弄(ほんろう)されながらも奇跡を起こそうとする3人の姿を完全オリジナルで描く。

同ドラマには、主人公・相馬悠依(井上)にプロポーズしようと心に決めた矢先、不可解な事件に巻き込まれて幽霊になった男・鳥野直木を演じる佐藤健や、そんな二人の運命に寄り添わざるをえない刑事・魚住譲を演じるも松山ケンイチも出演している。

■井上真央の魅力は台本に対する理解力の深さ

――主演を務める井上さんの印象や、撮影の裏話などがあれば教えてください。

まず台本に対する理解力が深くて、「こういうつもりで演じますがいいですか?」とか、直木や譲がこれだと不自然になっちゃうなという時に「私がこうすればどうでしょう」とか、現場で提案してくださる内容の方向性がいつも的確なんです。

悠依のキャラクターが全くブレないですし、すごく頭が良くて、しかもそれを表現できる実力がある。そして、何よりも「かわいいな」と思いますし、本当に稀有な女優さんです。

合言葉は「どうせ幽霊なんだったら面白く!」

――今作で幽霊役を演じている佐藤さんと撮影前にはどのようなお話をされたのでしょうか?

幽霊が登場するにあたり、視聴者の皆さんがどういう幽霊のシーンを見たいか話し合いました。例えば、いると思っていた方向とは別の方向にいるとか、(壁や人を)すり抜けちゃうとか…「どうせ幽霊なんだったら面白く!」と思っていて。

「なんで俺はこうなっちゃったんだ!」と悲観的になるのではなくて、(ドラマを)見た人がクスっと笑える幽霊シーンには何があるのか、アイデアを出し合いました。

直近の話では愛する人を守れない、気持ちを伝えることが出来ないもどかしさや悲しみに加え、現世にはもどれないのであればどうしたらいいのか、みたいなことを考えることが多くて。最初は「幽霊楽しい!」というシーンをどう作るか試行錯誤していたのですが、今はより内面的なものの表現にフォーカスを当てています。

――SNSでは“ゆずきゅん”という言葉も誕生し、究極の巻き込まれキャラとして活躍中の譲演じる松山さんはいかがでしょうか?

このドラマは彼がいないと話が成立しないので、第7話で(悠依と直木と)離れなくてはいけなくなって、どうしたらいいのか分からないくらい混乱しました(笑)。それと共に視聴者の皆さんの譲への共感度が高まってきていて「作り手と視聴者の皆さんの気持ちは一緒ですよ!」と伝えたいです。

お芝居の面でも彼が面白い空気に変えてくれることで、2人が救われることが多いと思うんです。なので、“巻き込まれキャラ”ですが、“最高の癒やしキャラ”ですし、しかも犯人も逮捕してくれるという…何度でもおいしいキャラクターですね(笑)。

――譲の印象的なシーンですと、やはり直木の憑依シーンが思い浮かびます。

そうですよね…実は、(憑依シーンを)まずは佐藤さんが1度全部演じているんです。それを見ていた松山さんが本番で演じるという流れなのですが、「1回しかやっていないのにすごいな」と思いながらいつも見ています。

後から「あそこはすごい似ていたね」と声を掛けると、「あれは健くんがわざと強めにやってくれたんだと思います」と返されたことがあって。役者同士だからこそ分かるプロな会話が繰り広げられているようです。

■心がほどける瞬間を表現した“笑顔”に脱帽

――物語のキーパーソンを演じる香里奈さんのキャスティング理由や、魅力的だと感じる部分を教えてください。

第1話から謎の人物として登場し、(直木が)約束をしていたけど会えなかったという役どころなので、事件の鍵もにぎっているという。でも、全部しゃべっちゃうと5分でドラマが終わっちゃうので、ずっとしゃべっちゃいけない…すごく難しい役ですよね。

だからこそ演技力もそうですし、みんなが見たくなる人じゃないとだめだなと思っていて。「恋つづ」(※「恋はつづくよどこまでも」(2020年、TBS系))の時もすごく頼りになりましたし、圧倒的に華がある方なので、香里奈さんにお願いしました。

印象的なシーンは、第6話で車に乗せられる直前の悠依を見て少し笑う場面ですね。はっきりとどちらかに振っちゃいけない役なので、ずっと謎のまま、先の台本もないまま演じてくださっているので、申し訳ないのですが…あの笑顔はいいなと思いました。

――何とも言えない莉桜の表情がとても印象的です。

本当は誰かに話したいんだけれども、危険を感じて潜伏せざるを得なくて、勝(春風亭昇太)さんの家を出てから名前も隠してきた莉桜の心がほどける瞬間をイメージしていただきました。具体的なイメージでいうと、映画「天城越え」(1983年)で連れ去られる田中裕子さんみたいな感じだったのですが、本当にそういう顔だったので“すごいな!”と。

――メインキャスト3人のお芝居はどれも引き込まれるものばかりですが、特に印象的な表情などがあれば教えてください。

井上さんは第4話の「絶対に許さない!」と感情をあらわにするシーンです。泣くとか、叫ぶとかではないのに、気持ちが伝わってくるなと感じました。最終回の井上さんは絶対にすごいと思うので、楽しみにして下さい。

佐藤さんは「やっぱ俺死んでたわ」と話すシーン、そして第7話で襲われた悠依を守ってくれた譲に対して「ありがとう」と言うシーンの表情ですね。

佐藤さん、「恋つづ」をやっていた時はキャラクターが強めだったので、お芝居も合わせていただいていたと思うんです。でも、今回は幽霊なのですが意外とリアル思考と言いますか、“本当に死んだらどうする?”と考えながら演じてくださっているその表情が、弱気というか…何でもできるはずなのに、何もできない感じが新しいなと思って見ています。

第6話の「とにかく悠依には笑っていてほしい、それだけ」と話す顔も見たことなかったので…“弱い顔”が印象的ですね。

■演技力、かわいらしさ…全てを兼ね備えた“子役”の存在

――では、松山さんのシーンで印象的な場面はありますか?

屋上シーンもそうですが、松山さんのすごさって1つのシーン、1つのせりふじゃないような気がしていて。第2話で、3人が部屋にいるときに悠依が泣いてしまって、直木が何もできずにぼう然とするシーンがあるのですが、そこで「俺ここでずっと見ているのはつらいので、ティッシュを差し出してもいいですか?」と提案してくださって。

自分の感覚を元に「こういう風にしたい」と提案してくださる機会が結構あるのですが、すごくハマるというか、優しさにつながる部分があるので、その包容力にすごく救われているなと思います。あと、第5話で「僕は意外と尽くすタイプですよ」と話すシーンは、少し色っぽくていいですよね(笑)。

――悠依の過去パートを演じる新井美羽さんが井上さんに似ていると話題です。出演自体はオーディションで決定したのでしょうか?

そうですね、新井さんも含めたオーディションを行いました。かわいらしい方がたくさんいらっしゃったのですが、基本的には似ている方が感情移入しやすいと思いますし、それでいてお芝居が上手な方という全ての条件を満たしていたのが新井さんだったんです。

一度、井上さんが演じる悠依を新井さんに見てもらったのですが、すごく特徴をつかんでいてすごいなと思いました。

――井上さんは新井さんの演技を見て何かおっしゃっていましたか?

「もっとあの子たちのパートを長くすればいいのに!」ってずっと言っていました、「あんなピュアなことは私にはできないから」と(笑)。

――ご本人たちは似ていると言われていることはご存知なのでしょうか?

新井さんはもう何度も言われているようだったのですが、井上さんも「似ているな~」とおっしゃっていました。

金曜ドラマ「100万回 言えばよかった」に出演する(左から)松山ケンイチ、佐藤健/ (C)TBS