さいたま市大宮駅と駅周辺地域を一変させる「大宮駅グランドセントラルステーション構想」の検討が加速しそうです。この構想は、駅改良や駅前再開発、都市基盤整備を市や鉄道事業者、地元まちづくり団体などが連携して行う巨大な事業となる見込みです。構想はどこまで検討が進んだのでしょうか?

大宮駅を大規模改良へ。駅前一体も再開発検討

さいたま市のJR大宮駅と駅周辺地域を一変させる「大宮駅グランドセントラルステーション構想」の検討が進んでいます。大ターミナルでありながら、再開発が遅れていた大宮駅東口は今後、どのように変化していくのでしょうか。

大宮駅東口の再開発をめぐっては、さいたま市が2018年7月に「大宮駅グランドセントラルステーション構想」を策定。それ以降、鉄道事業者、地元まちづくり団体などの関係者と共に構想の実現に向けた検討が進められています。

構想では、駅の改良計画として、大宮駅北側に新たな東西通路を整備することが盛り込まれています。さらに、東武大宮駅を南側に移設して橋上駅とするほか、現在の1面2線から2面3線に鉄道機能の増強を目指すとしています。また、市が公表しているイメージパースを見ると、東口の駅舎が巨大な駅ビルに建て替えられており、かなり大規模な駅改良となることが想定されます。

駅周辺開発では、「すずらん通り」などがある「大門一丁目中地区」、区域に高島屋を含む「南地区」、線路沿いの「西地区N街区」と「西地区S街区」、「大宮ラクーン」がある「北地区」、その北側に位置する「宮町一丁目中地区」を開発街区に指定。これらの地域では、地権者による再開発準備組合の設立が相次いでおり、今後は具体的な施設計画の検討が本格化する見込みです。

都市基盤整備では、東口駅前に「交通広場」を設け、自動車交通量の増加を見据えて各開発街区を結ぶ地下車路ネットワークも整備する方針です。道路整備も想定されており、中山道の地下バイパス化や大宮岩槻線の4車線化といった壮大な計画も盛り込まれています。

2023年度は構想実現に向け大きく前進か

この構想が実現すれば、大宮は首都圏の郊外都市から名実ともに「東日本の玄関口」に様変わりすることになります。構想の検討はどこまで進んだのでしょうか?

2023年3月1日(水)に開かれた「大宮GCSまちづくり調整会議」では、現在の検討状況と今後のスケジュールが明らかになりました。そこでは、2023年度にまず「南地区」と「中地区」の再開発事業の都市計画決定を目指すほか、新東西通路については、具体的な整備計画案を作成する目標が示されました。構想策定から約5年が経ち、将来の「青写真」を描く段階から、いよいよ完成形を見据えた開発内容を練り上げる段階となったといえます。

ただ、構想の実現には、かなりの時間を要しそうです。新東西通路の新設や駅舎改良といった工事が線路上での工事となるためです。先述のまちづくり調整会議では、「新東西通路プロジェクトチーム」が同様に線路上での工事となる品川駅北口広場整備工事を視察した際の課題が報告され、「鉄道の工事は夜間しかできない」「夜間も非常に限られた作業時間となり、非常に長い工期が必要」「大規模な機械や施工ヤードが必要」「工事中は鉄道を止めることができないため、施工方法が特殊になる」といったことが確認事項として共有されました。

現時点では、各開発の着工時期が決まっていないため、いつ工事が終わるのか見通しは立っていません。首都圏では、渋谷駅横浜駅などが、いつまで経っても工事が終わらない「サグラダ・ファミリア」駅として話題を集めましたが、大宮駅もそこに加わることになりそうです。

上野東京ラインの車両(画像:写真AC)。