カリフォルニア州サンディエゴでは、コロナ禍に住宅価格が急上昇しました。しかし現在では住宅価格の高騰は落ち着き、下落の傾向。以前の不動産市場に戻りつつあると現地リアルターである、エボルーションリアルティコンサルティングの石橋由美子氏はいいます。では今後、リーマンショック時と同様に、住宅価格がさらに大きく下落する可能性はあるのでしょうか。みていきます。

コロナ禍で起きた「住宅価格」の驚異的な上昇

カリフォルニア州サンディエゴ郡では特にコロナ禍で住宅価格が急上昇しました。

外出禁止令が出たあとの2020年5月の*住宅(一戸建て、コンドミニアムを含む)の中間価格値はUS$585,000(**1ドル=100円として約5,850万円)だったのに対し、住宅の価格がピークに達した2022年5月の住宅中間価格値はUS$855,000(**8,550万円)つまりコロナ禍の2年間で46.2%上昇したことになります。

また2023年1月の中間価格値はUS$750,000(**7,500万円)でした。2022年5月のピーク時と比較すると8ヵ月間で12.2%減少したことになりますが、これは2021年11月時点の中間値US$755,000(**7,550万円)にほぼ戻っただけです。

過去14年間を遡ってみると2009年のリーマンショックのときに住宅価格が下落したものの、上昇基調での変動幅以内といえます。

なぜアメリカ・カリフォルニア州の不動産価格が上昇基調を続けているかというと、恵まれた住み易い気候環境や、雇用の幅が広いという人気の表れでしょう。ではいったい過去14年間でサンディエゴ郡の住宅価格がどれくらい上昇しているのかみてみましょう。

2004年1月の住宅の中央価格値がUS$395,000(**3.950万円)だったのに対し、2023年1月はUS$750,000(**7,500万円)ですから、過去14年間で約47.3%も住宅価格(中央値)が上昇しました。過去14年間で最も下落した2009年3月の中央価格値US$274,000(**2,740万円)と比較すると、なんと174%も上昇していることがわかります。つまり2009年に住宅を購入された方が現在売却すると約2.73倍に価値が上がったことになります。

売却益が期待できることから、カリフォルニア州よりも住宅価格が低い州、たとえばテキサス州、アリゾナ州、ネバダ州、ワシントン州、フロリダ州などにリロケーションするという方々が近年増加しています。その傾向は現在も続いています。

物件は一時売れにくくなるも、ポストコロナで回復傾向

では物件が売れるまで(契約が成立するまで)、一体約何日間市場に出ているのかみてみましょう。

2022年1月、物件が市場に出ていた日数の中間値がわずか10日間だったのに対して、2023年1月は30日間と増えています。つまり前年同月比で物件が市場に出てから売れるまでに3倍の日数がかかるようになったことがわかります。

とはいえ、2012年1月の83日間という中間値に比べたら、今年1月の30日間は53日間も早く売れているのですから、それほど悪い状況ではありません。世の中がポストコロナになり始め、売却までの日数もコロナ禍前の2019年1月ごろの市場に戻ったといえます。

「売買成立件数」はリーマンショック直前と同様に下落

今年1月の売買成立件数は1,438軒、これは2008年1月、リーマンショック直前の1,425軒とほぼ同じです。売買件数がピークに達した2021年の6月が4,119軒でしたので、19ヵ月間で売買成立件数が約65%下落したことになります。また前年同月比では約37%下がりました。

例年、年初めは売買成立件数が下がる傾向にありますが、住宅ローンの高金利が続いていることが影響して買い手の購買力や意欲が抑えられた結果となり、売買成立物件数に影響が出たと考えられます。

価格の高騰は落ち着くも、今後また大きく下がるのか?

最近特に「今後不動産価格が大きく下落するのでは?」という声を耳にします。では物件売り出し価格に対して実際に物件が売れた価格の割合をみていきましょう。

たとえば売り出し物件価格がUS$500,000(**5,000万円)で、最終的に物件がUS$500,000(**5,000万円)で売れた場合を100%とします。2022年4月は106.2%でした。つまり売り出し価格より6.2%高く売れたことになります。2023年1月は97.3%でしたので、実際には売り出し価格より約2.7%低い金額で売却されたことになります。

これはコロナ前の2019年1月の97.2%とほぼ同じです。最近はコロナ禍で起きた異常な住宅価格の高騰が落ち着いてきており、以前の不動産市場に戻ってきたというのが実感としてあります。この状況は果たして今後、価格の大幅な下落に繋がっていくのでしょうか?

不動産市場予測の指標:カリフォルニア州の失業率

今後の不動産市場を予測するには、失業率も大切な情報となります。アメリカ全体の失業率が2022年12月において3.5%であったのに対して、カリフォルニア州は4.1%でした。

もちろん、カリフォルニア州のなかでも、カウンティによって失業率にばらつきがあります。昨今ビッグテックカンパニーが相次いで従業員を解雇しているというニュースが話題になっています。

たとえばホームオーナーが住宅ローンを払えない状況に陥った場合、現在の住宅市場では家を売却すれば、かなり多くの方々が売買益を得ることができるといわれています。そういう方々は家を売却して州外に引っ越す、または、同じカリフォルニア州内で住宅価格の比較的低い地域に引っ越すという現象も起こってきています。今後の失業率が住宅市場に大きな影響を与えることは間違いないでしょう。

住宅価格のクラッシュは2023年に起こるのか?

多くの専門家はリーマンショックのような住宅価格のクラッシュは起こらないと予測しています。理由としては

1)銀行差し押さえ物件数をリーマンショックの2008年第2四半期と比較すると2022年第4四半期は少ない。

2)全米不動産協会のデータによると、市場に出ている売り物件の数が約2.7ヵ月分の供給在庫。つまり住宅供給不足の状況である。リーマンショックのときのように住宅供給過多ではないことから住宅価格の大幅な下落は起こらない。

などが挙げられています。

今後も住宅価格に大きな影響をおよぼすであろう失業率、住宅ローンの金利の動きが気になるところです。住宅の購入、売却をお考えの方は、不動産市場を把握した経験のある専門家に相談し、ご自身の状況を踏まえながら進めていくのが望ましいと思います。

Sources: NAR, Redfin, U.S. Census Bureau, Zillow, Yardi Matrix, FreddieMac、ATTOM Data

石橋 由美子

エボルーション リアルティ コンサルティング 不動産エージェント

(※画像はイメージです/PIXTA)