米アップルが国際事業の経営体制を刷新すると米ブルームバーグロイターなどが3月8日に報じた。インドに一段と比重を置く戦略だという。

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インド市場を明確に区別

 インドでアップル製品に対する需要が急増していることを受け、同社として初めてインドを独自の販売地域に設定する。これにより、アップルの社内でインドは明確に意識される市場に位置付けられることになるという。

 ブルームバーグによると、アップルではこのほど、インド・中東・地中海・東欧・アフリカ地域担当バイスプレジデントのユーグ・アスマン氏が退職した。今後はその下部組織であるインド部門の責任者、アシシュ・チャウダリー氏が昇格し、アスマン氏の後任を務める。

 チャウダリー氏は、アップルのグローバルセールス担当バイスプレジデント、マイケル・フェンガー氏の直属の部下になる。このフェンガー氏はティム・クックCEO(最高経営責任者)の直属の部下である。

インド売上高、過去最高を更新

 アップルが先ごろ発表した、2022年10〜12月期の決算は、売上高が前年同期比5.5%減の1171億5400万ドル(約16兆円)、純利益が同13.4%減の299億9800万ドル(約4兆1000億円)だった。減収は19年以来、約4年ぶりだった。

 クックCEOは決算説明会で、業績に影響を与えた要因として、(1)ドル高(2)中国での生産混乱によるスマートフォンの供給制約(3)マクロ経済環境、の3つを挙げた。だが同四半期のインドにおける売上高は、過去最高を更新したという。

アップルCEO「インド市場はエキサイティング」

 こうした中、同社はインド市場に注力している。英フィナンシャル・タイムズによれば、決算発表の説明会ではインドに関する言及が15回あった。クックCEOは「私はインドに関して、とても強気の見通しを持っている。インド市場は非常にエキサイティングで、最も重要視している」と述べた。

 アップルは20年9月に同社としてインド初の直営オンラインストアを開設した。インドで同社初の直営リアル店舗をオープンするために人員を募集しているとも伝えられている。同社はインドでの販売を拡大するとともに、生産の多様化を目指し、中国への過剰依存から脱却する方法を模索している。

 台湾電子機器受託製造サービス(EMS)大手である、鴻海(ホンハイ)精密工業や緯創資通(ウィストロン)、和碩聯合科技(ペガトロン)と協力し、インド国内でスマートフォン「iPhone」の増産や新工場の建設を計画している。

 ただ、今回の経営体制の刷新は、アップルの組織構造に変化を及ぼすものの、今後公開される業績リポートには反映されないだろうとブルームバーグは伝えている。アップルは地域別売上高を、①米州、②欧州、③中華圏、④日本、⑤その他のアジア太平洋地域、の5つに分類して開示している。インドは中東・アフリカ地域と共に欧州に含まれ、今後も同地域の売上高内訳を決算資料で知ることはできないという。

 アップルの22年10〜12月期の地域別売上高は、①米州が前年同期比4.3%減の492億7800万ドル(約6兆7300億円)、②欧州が同7%減の2768100万ドル(約3兆7800億円)、③中華圏が同7.3%減の239億500万ドル(約3兆2700億円)、④日本が同5%減の67億5500万ドル(約9200億円)、⑤その他のアジア太平洋地域が同2.8%減の95億3500万ドル(約1兆3000億円)だった。

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(写真:ロイター/アフロ)