第46回日本アカデミー賞の授賞式が3月10日、東京・グランドプリンスホテル新高輪国際館パミールで行われ、平野啓一郎の同名小説を石川慶監督が映画化した『ある男』が最優秀作品賞をはじめ、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞(妻夫木聡)、最優秀助演女優賞(安藤サクラ)と最優秀助演男優賞(窪田正孝)など最多8部門に輝いた。

弁護士の城戸(妻夫木聡)は、かつての依頼者・里枝(安藤サクラ)から、亡くなった夫・大祐の身元調査をして欲しいという奇妙な相談を受ける。長年疎遠になっていた大祐の兄が「遺影に写っているのは大祐ではない」と話したことから、愛したはずの夫が全くの別人だったことが判明する。窪田正孝が里枝の夫になりすましていた“ある男”を演じた。

妻夫木は『悪人』(第34回日本アカデミー賞)以来、2度目の最優秀主演男優賞。前回はスケジュールの都合で、授賞式には中継で参加しており「こうして実際に(ブロンズを)いただくことができて、本当にうれしいです」と喜びの声。石川監督とは、長編デビュー作の『愚行録』に続くタッグで、「脚本の向井(康介)さんもそうですが、またご一緒させてもらい、企画の段階からディスカッションしながら、作品に取り組ませてもらった」と思い入れは格別だ。

妻夫木聡(写真提供:東京写真記者協会)

また、以前に山田洋次監督から授かったという「妻夫木君、“在る”っていうことが大事なんだよ」という金言に触れ、「その言葉を頼りに、この役を演じさせてもらいました。僕は日本映画が大好きです。これからも盛り上げていけるように、皆さんとまた一緒に仕事ができたらうれしいなと思います」と決意を新たにしていた。

最優秀助演女優賞の安藤は、開口一番「あー、泣いちゃう」と感激しきり。撮影中は俳優業と子育ての両立に葛藤もあったと明かし、「悩みつつ、家族で会議しながら、みんなで協力しあって、大好きな現場に戻れたらいいな」。改めて「現場がすごく好きなんだ」と実感したとも語り、「くよくよも超えて、他に見つけられない」と俳優業への思いを熱弁。安藤との夫婦役で、最優秀助演男優賞を手にした窪田は、「裸でいるより恥ずかしいくらい全部をむき出しにして、役にぶつかり、それをサクラさんが受け止めてくれた」と感謝の意。「本当にこの仕事をして良かったなと、今この瞬間も噛みしめています」と喜びを示した。

安藤サクラ(写真提供:東京写真記者協会)

最優秀主演女優賞に輝いたのは、『ケイコ 目を澄ませて』(三宅唱監督)で耳が聞こえないボクサーを熱演した岸井ゆきの。「身に余る賞をありがとうございます。三宅組の誰ひとり欠けても、私はここに立てなかった」と声を震わせ、作品のモデルになった元プロボクサーの小笠原恵子氏への感謝も示した。

岸井ゆきの(写真提供:東京写真記者協会)

最優秀アニメーション作品賞は、話題作がひしめき合うなか『THE FIRST SLAM DUNK』が見事受賞。ブロンズを受け取った東映のプロデューサー、松井俊之氏は「この作品は、(監督・脚本を手掛けた)原作者の井上雄彦先生が、映画という未知の世界に表現を求めてくださり、実現した作品。スタッフも最後まで戦い抜いてくれた」と喜びを噛みしめた。

また、話題賞(作品賞)を受賞した『ONE PIECE FILM RED』から、ルフィ役の声優である田中真弓が出席し「『海賊王に俺はなる』と言い続けて23年。まだなっておりませんが、旅の途中で、このような晴れがましい場に立たせていただいた。応援してくださった皆さん、お前たちは俺の仲間だ~」と会場を盛り上げていた。

田中真弓(写真提供:東京写真記者協会)

第46回日本アカデミー賞は、2022年1月1日12月31日に東京地区の商業映画劇場にて有料で初公開され、同一劇場で1日3回以上、かつ2週間以上継続して上映された40分以上の劇場用劇映画及びアニメーション作品が対象となっている。

取材・文:内田涼

▽受賞作品/受賞者リスト

最優秀作品賞:『ある男』
最優秀監督賞:石川慶『ある男』
最優秀主演男優賞:妻夫木聡『ある男』
最優秀主演女優賞:岸井ゆきのケイコ 目を澄ませて』
最優秀助演男優賞:窪田正孝『ある男』
最優秀助演女優賞:安藤サクラ『ある男』
最優秀脚本賞:『ある男』
最優秀撮影賞:『シン・ウルトラマン
最優秀照明賞:『シン・ウルトラマン
最優秀美術賞:『シン・ウルトラマン
最優秀録音賞:『ある男』
最優秀編集賞:『ある男』
最優秀音楽賞:『すずめの戸締まり
最優秀外国作品賞:『トップガン マーヴェリック』(東和ピクチャーズ)
最優秀アニメーション作品賞:『THE FIRST SLAM DUNK
新人俳優賞:小野花梨、菊池日菜子、福本莉子、生見愛瑠、有岡大貴、番家一路、松村北斗、目黒蓮
特別賞:『ONE PIECE FILM RED』音楽チーム
話題賞(作品部門):『ONE PIECE FILM RED
話題賞(俳優部門):松村北斗『ホリック xxxHOLiC』『すずめの戸締まり

第46回日本アカデミー賞授賞式より