アメリカ・米国・中国

最近、世界一の経済大国米国の中国への焦りや苛立ちが顕著に見られる。たとえば、米国務省のネッド・プライス報道官は2月末、ウクライナ情勢で仲裁案を提示した中国について、「中国は仲裁者にはなれない。明らかにロシア側に立ってきたからだ」と痛烈に批判した。


■相次ぐ対中批判

また、ハリー・ハリス元インド太平洋軍司令官は2月7日、下院軍事委員会の公聴会で台湾情勢について言及し、「今日台湾は危険なプロセスを進んでおり、中国は台湾を孤立化させいつかは支配だろう。そのため、中国が2027年までに台湾に侵攻する可能性がある」と懸念を示した。

さらに、米議会下院では2月末、中国に関する問題を集中的に扱う特別委員会の公聴会が初めて開催され、「これは21世紀の生活がどのようなものになるかを決める闘いだ。最も基本的な自由が危機に瀕している」、「この委員会は緊急かつ重要だ。アメリカはあまりにも長い間、中国共産党との競争に後れをとってきた」など中国警戒論が相次いで指摘された。

一方、FBIクリストファー・レイ長官も先月末、新型コロナウイルスの起源に関し、中国・武漢のウイルス研究所から流出した可能性が最も高いという見方を改めて強調した。


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■対中批判にある米国の思惑

米国の対中批判の背景には何があるのだろうか。そこにあるのは米国の焦りだ。第二次世界大戦後、米国はソ連との冷戦に勝ち、それから今日まで世界一の経済大国の立場を維持している。

米国には世界のリーダーとしての自負が未だにあるが、今後2030年代、2040年代になるにつれ、これまで米国が築いてきた不動の地位を中国に奪われることへの危機感がある。しかも長い間経済的支援をしてきた中国に抜かれるとのことで、米国のプライドを掛けた戦いになっているのだ。

しかし、客観的なデータで、米中の力の均衡はどんどん進んでおり、いつかは中国が追い抜くとの試算が強い。今後米国のプライドをかけて戦いはいっそう激化することは避けられない。

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(取材・文/セレソン 田中

米中対立で焦りが見え始める米国 今後も中国ネガティブキャンペーン強化か