現地時間3月12日(日本時間3月13日)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催中の第95回アカデミー賞授賞式。作品賞は、新進気鋭の製作・配給スタジオ、A24が放つアクション・エンタテインメント『エブエブ』こと『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(公開中)が受賞。作品賞のほか助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、編集賞、監督賞、主演女優賞を受賞しており、今回最多の7冠に輝いた。

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家族の問題に悩み、赤字コインランドリーの経営に頭を抱える中国系移民の中年女性、エヴリン(ミシェル・ヨー)がマルチバースを駆け巡り、巨悪との壮絶な戦いに立ち向かう姿を描く本作。製作には、世界的メガヒット作『アベンジャーズインフィニティ・ウォー』(18)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)を監督したアンソニージョー・ルッソのルッソ兄弟が名を連ね、“マルチバース”と“カンフー”、 そして家族の絆というドラマ性が融合したパワフルなアクション・エンタテインメントを完成させた。“ダニエルズ”ことダニエル・クワンとダニエル・シャイナートの2人組が、監督を務めた。

プレゼンターを務めたのは、ハリソン・フォード。『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(84)やスピルバーグが製作総指揮を手がけた『グーニーズ』(85)で一世を風靡したキー・ホイ・クァンが本作で奇跡の復活を遂げたが、キー・ホイ・クァンはフォードがステージに上がると、興奮したように大きな拍手を送った。作品賞としてタイトルが呼び上げられると、会場からは大きな拍手が湧き起こり、客席にいたスティーヴン・スピルバーグ監督も感無量の面持ちを見せていた。

プロデューサーのジョナサン・ワンは「A24に感謝します。奇妙なこの物語をサポートしてくれた」と熱っぽくコメント。「父に捧げたい。両親も誇らしく思っているはず。私たちが、一緒に映画を作りました」と壇上にあがったメンバーとの絆に感謝した。クワン監督は「皆さんからインスピレーションを受けた」とクリエイターたちに敬意を表し、「世界は瞬く間に変わっている。映画の描くものとインターネットの世界が違うのではないかと、時には怖くなることもある。でも物語が自分を変えてくれた。その思いを継承していきたい」とハートのある物語を紡ぐことを誓い、大きな拍手を浴びていた。

今回の第95回アカデミー賞では最多10部門11ノミネートを果たしており、7冠。1作品が3つの俳優賞を受賞したのは、1951年の『欲望という名の電車』と1976年の『ネットワーク』以来という快挙。ミシェル・ヨーとキー・ホイ・クァン、アジア人2人の受賞はアカデミー賞史上初だ。さらに、主演男優賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した『ザ・ホエール』(4月7日公開)のスタジオも『エブエブ』と同じA24であり、主要賞を一つのスタジオが独占するのはアカデミー賞始まって以来という、記録尽くめの結果となった。

文/成田おり枝

『エブエブ』が歴史的快挙!アカデミー賞作品賞を受賞/[c]Getty Images