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「比較的進行が遅い大腸がんは、しっかり検査することが早期発見・早期治療につながります」と語るのは、相馬中央病院(福島県)の消化器病専門医・齋藤宏章さんだ。

「まず、大腸がんは症状のないうちから見つけるのがポイント。入口になるのは、会社の健康診断や、自治体のがん検診に組み込まれている年1回の便潜血検査です。体の負担がなく、自治体などで受ければ無料~500円ほどなので、コスパのいい検査といえます。

大事なのは、去年は大丈夫だったから今年は検査しなくてもいいと安心せず“毎年”受けることです」

国立がん研究センターのホームページによると、毎年、便潜血検査を受けることで、大腸がん死亡率を60%下げるという研究データもあるという。

「便潜血検査で要精密検査となると、大腸内視鏡カメラによる検査に進みます。検査費用や下剤などを含めて、3割負担で1万円ほど。また、大腸内に食べたものの残滓とならないよう、前日は検査用の食事を取るのですが、こちらはネットなどで、3食セット1千円~2千円ほどで入手可能です」

近年、アメリカでは便潜血検査をせず、いきなり大腸内視鏡検査をするケースも増えているという。

「ポリープの有無、大きさなどを確認でき、リスクが低いようなら、次回検査は10年後になります。もちろん、日本でも人間ドックなどで内視鏡検査ができますが、症状がない場合は保険適用外になるので、全額自費負担。2万~3万円が目安となります」

内視鏡検査はファイバースコープを肛門から入れて、大腸を通り、盲腸、小腸の入口近くまで進み、20分ほどかけて、肛門へとゆっくり戻りながら大腸を観察。途中、前がん状態であるポリープがあれば、その場で切除してくれるクリニックも多い。

「ポリープを切除する場合、数にもよりますが、内視鏡検査、薬剤費、細胞検査の費用も合わせて3万円前後(3割負担)となります。

また、腸内には痛覚がないため、ポリープを切除するときに麻酔は不要ですが、最近では、検査に不安を抱えている患者さんのために鎮静剤を使用する医療機関も。その場合は、3割負担で2千円ほど追加費用が必要になります」

残念ながら、がんが疑われる場合は、入院・手術となる。

「すでに症状がある場合などは緊急入院となりますが、症状がない場合は1カ月から2カ月後に入院手術となります。その間に、全身のCTを撮ったり、心臓や肺の機能に問題がないか、術前検査を済ませます」

■IV期で手術が困難だとかなりの経済的負担が……

入院・手術ではどのくらいの費用がかかるのだろうか?

部位・ステージごとのがん治療費の情報を発信している「がん治療費ドットコム」によると、0期やI期の結腸がんで、EMRという一般的な内視鏡による手技なら、1年目にかかる治療費(検査費用、治療費、入院費用、差額ベッド代など)は39万5千円(10割負担の場合・以下同)が目安になるという。

同じ0期・I期でも、患部の大きさによって、より高度なESDという内視鏡による手技を行う場合、1年目の治療費は57万8千円。

深部までがんが浸潤したII期の場合は、内視鏡ではなく腹腔鏡手術がメインとなる。

おへそも含め、おなかに3〜4カ所穴を開けて、そこからカメラや電気メスを入れて手術をします。開腹手術と違って体の負担は少ないので、体力を落とさないよう、次の日から立って歩くように促されます。I期であっても、がんの浸潤が深ければ腹腔鏡手術を行うこともあります」

リンパ節への転移が認められるIII期で手術を行い、半年間の再発予防のための抗がん剤治療を行った場合の、1年目の治療費は312万5千円と試算されている。

他臓器への転移のあるIV期は、治療費がより高額だ。

「腸の血流が集まる肝臓や、肺などに転移する場合があります。その場合、大腸の手術ばかりでなく、転移したほかの臓器の手術代と、さらに半年ほどの抗がん剤治療の費用もかかります」

がん治療費ドットコムの目安では、IV期で肝臓に転移がある場合、1年目の治療費は479万9千円だ。

もちろん、保険適用になるので3割負担や1割負担になるし、高額療養費制度を利用することで、月の医療費が一定額(一般的な所得の場合、8万〜9万円ほど)を超えた分は返金される。

「しかし、がんは数年間に及ぶ定期的な検査が必要になります。

また、IV期で手術が困難となると、通常、亡くなるまで定期的抗がん剤治療が続きます。

高額療養費制度を利用しても、かなりの経済的負担がのしかかるのです」

早期発見・早期治療を心がけることで、身体的負担ばかりでなく、経済的負担も軽く済むのだ。