イギリス政府が、オーストラリア向けの原子力潜水艦について概要を発表しました。AUKUSの枠組みで描いているスケジュールでは、2030年代に世界7番目の原潜保有国にオーストラリアをする計画のようです。

フランスに賠償金払って既存の契約は破棄

イギリス政府は2023年3月14日オーストラリア向けの原子力潜水艦建造プロジェクト、通称AUKUS潜水艦プロジェクトに、イギリスの設計案が選ばれたと発表しました。

「AUKUS」(オーカス)とは、2021年9月に発足したオーストラリアAustralia)、イギリスUnited Kingdom)、アメリカ(United States)の3国による軍事同盟です。

そもそもオーストラリアは、2016年4月に当時のターンブル政権が新型の通常動力型潜水艦としてフランス提案のプランを採用(通称アタック級)しています。しかし、前述したAUKUSの創設に合わせ、オーストラリアフランス設計の通常動力型潜水艦の調達を取り止め、アメリカとイギリスの協力を得て新たに原子力潜水艦の導入を図ることを決定。これに伴いフランスとの契約を破棄しました。

この一方的な契約破棄に、フランスオーストラリア大使やアメリカ大使を引き上げるなどして、猛烈な抗議を行いますが、最終的にはオーストラリア政府が賠償金を払うことで和解。こうして同国は改めて新型潜水艦の調達を検討するなか、今回、イギリスが建造する次世代の原子力潜水艦をベースにしたものを導入することで決まったといいます。

新造原潜の引き渡し前にアメリカ製中古原潜の調達も

イギリスでは現在、アスチュート級原子力潜水艦の6番艦と7番艦の建造を進めていますが、オーストラリアが保有するのは、その次に登場する次世代原子力潜水艦になるとのこと。この新型は「SSN-AUKUS」と呼ぶようで、それをイギリス海軍2030年代後半に導入し、オーストラリア海軍には2040年代初頭に引き渡す予定です。

なお、オーストラリア海軍では潜水艦乗員が原子力潜水艦の運用ノウハウを獲得するため、早い段階でイギリス海軍アメリカ海軍に留学できるようにしていくそう。あわせてアメリカの原子力潜水艦の寄港を今年から増やすほか、イギリス海軍原子力潜水艦についても2026年以降、訪問回数が増えるよう計画しています。

また、前述した合意の一環として、オーストラリアが「SSN-AUKUS」を運用するまでの一時的なニーズを満たすべく、アメリカは2030年代にオーストラリアに複数のバージニア原子力潜水艦を売却する予定とのこと。

ちなみに、オーストラリア原子力潜水艦の運用を始めた場合、同国は、アメリカ、ロシアイギリスフランス、中国、そしてインドに続く世界で7番目の原潜保有国になるそうです。

オーストラリアが公開した新型潜水艦のイメージCG(画像:オーストラリア国防省)。