米アマゾン・ドット・コムと新興の電気自動車(EV)メーカー、米リヴィアン・オートモーティブ(Rivian Automotive)が、商用バンの独占売買契約を解除する見通しだと、米ウォール・ストリート・ジャーナルなどが3月13日に報じた。関係者によると、アマゾンによる発注台数が以前に提案された範囲の下限になったことが理由だという。

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23年の発注台数、見込み範囲の下限に

 アマゾンとリヴィアンが2019年に締結した契約には、「リヴィアンは自社が生産する商用EVバンのすべてをアマゾンに納入しなければならない」という条項が盛り込まれていた。アマゾンは最近、リヴィアンに対して23年の購入台数が約1万台になると告げた。これはアマゾンが以前リヴィアンに伝えた発注見込み範囲の下限にあたる。

 これを受けリヴィアンはアマゾンに対し独占条項の削除を求めた。交渉は今も継続中だとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

 リヴィアンは09年の設立で、ミシガン州プリマスに本社を置く。18年11月にロサンゼルスで開催されたモーターショーで自社開発のEVを初披露した後、アマゾンのような大手が相次ぎ同社に出資した。

 リヴィアンは現在、ピックアップトラックの「R1T」とSUV(多目的スポーツ車)の「R1S」も製造しており、これらを小売業の企業に販売している。

 一方、アマゾンは、二酸化炭素CO2)排出を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す物流事業プロジェクト「シップメント・ゼロ(Shipment Zero)」を進めている。その一環として、リヴィアンに配送用EVを発注した。30年までに計10万台をリヴィアンから購入する計画だ。

アマゾンは最大の顧客

 リヴィアンは21年に、イリノイ州ノーマルにある元三菱自動車の自動車工場でアマゾンの車両の生産を始めた。米CNBCによると、22年にその最初の納入が始まり、アマゾンリヴィアン製カスタムEVを使った配送業務を22年7月に開始した。この配送バンは、最新のセンサー技術や運転支援機能、360度カメラなどを装備している。AI(人工知能アシスタント「Alexa」も組み込まれており、経路や気象情報にハンドフリーでアクセスできる。

 ロイター通信によれば、アマゾンはリヴィアンの大株主。ウォール・ストリート・ジャーナルは、リヴィアンの取締役会にはアマゾンの幹部が加わっていると報じている。

 リヴィアンにとってアマゾンは最大の顧客である。イリノイ州ノーマルで製造するEVの3台に1台はアマゾンに納入している。アマゾンが独占契約の終了に同意した場合、リヴィアンは新たな企業顧客を見つけなければならないと同紙は指摘する。

コスト削減策が背景に

 アマゾンの広報担当者は、「30年までにリヴィアンから計30万台の商用バンを購入することを約束している。リヴィアンは重要なパートナーであり、将来に期待している」と述べた。一方、リヴィアンの広報担当者は「私たちは引き続き緊密に協力し、多くの企業と同様に、変化する経済情勢に対応していく」と述べた。

 今回の購入台数の減少は、アマゾンのコスト削減策が背景にあるようだ。アマゾンでは、アンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)の下、コスト削減に向けた事業見直しを進めている。22年11月には過去最大規模のレイオフ(一時解雇)に着手し、23年1月までに計1万8000人の従業員を削減した。23年3月初旬には、米東部バージニア州アーリントンで建設中の第2本社(HQ2)で第2工期計画の着工を延期したと明らかにした。

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米リヴィアン・オートモーティブのEVバン(写真:ロイター/アフロ)