代替テキスト

’06年に開業して以来、もっと早く病院に来てくれたら、ここまで視力を落とさずに済んだのに、と痛感する事例が数多くあります」

こう話すのは「眼科かじわらアイ・ケア・クリニック」院長の梶原一人先生。なんとなく目がかすむ、見えにくいなどの症状があっても、特に痛みをともなわないケースではすぐに眼科に行かない人も少なくない。それがじつは失明につながる危険な症状のことも多いのだ。

梶原先生はそうしたケースをもとに著書『ハーバード×スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』(ダイヤモンド社)を出版。その中から梶原先生が厳選した4つのケースを紹介しよう。

運動会でわが子をビデオで撮っていたら、見失うことが何度もあった

緑内障

視神経の細胞が眼圧の上昇などでダメージを受け、徐々に視野が狭くなり最後は失明に至る緑内障。日本人の失明原因の第1位という恐ろしい病気だ。

「私のクリニックを訪れた40代の女性でした。

運動会で子供をビデオカメラで撮影中に、何度も見失うことがあったというのです」(以下、コメントはすべて梶原先生)

そのときはビデオカメラの操作に慣れないせいかと思ったが、その後、周りの景色や鏡に映った自分の顔もところどころ見えなくなることに気づき受診したところ、両目の視野がすでに大きく失われている、末期まで進行した緑内障だった。

緑内障は痛みなどの自覚症状がなく徐々に視野が欠けていくので、かなり症状が進行するまで気づかない人がとても多いのです」

この女性は治療によって、かろうじて失明をまぬがれたという。

■異変を感じてすぐに来院すれば手術の必要はなく

目の前でクラゲが大量に浮いているように見えたのに、目の疲れからかと様子を見た → 網膜剝離

「50代の女性でした。翌日にはクラゲの量が減ったりするので、目が疲れているだけかなと、3週間ほど様子を見ていたところ、なかなかクラゲの数が減らないために来院しました」

このケースでは目の中の硝子体と呼ばれる組織がその後ろにある網膜を強く引っ張り、網膜が浮き上がる網膜剝離を起こしていた。

「広範囲に網膜が剝離していたため、手術以外の選択肢はなく緊急手術をしました。それで、それ以上の剝離を食い止めることができたのです」

もし最初に目に異変を感じた3週間前に来院していれば、簡易なレーザー処置をするだけで済み、手術の必要はなかったかもしれないという。

「視界に黒いものが飛んだり、クラゲ状のものが見えるときは、軽く見ないで、とにかくすぐに一度眼科を受診することをお勧めします」

鏡を見たら、まぶたが下がってきたように見えた → 脳腫瘍

「30代女性のどちらかというとレアなケース。おでこの内部に腫瘍ができ、それに圧迫されておでこの骨がせり出してきたため、まぶたが下がってきたように見えたのです」

加齢とともにまぶたが下がる眼瞼下垂という症状かと思ったこの女性は眼科を受診。そこで脳腫瘍という思わぬ病いの発見につながったのだ。

「幸い脳神経外科での手術が成功し、無事、日常生活に生還することができました」

■糖尿病で眼科を受診せず網膜症を見逃すことも

ぼんやりモヤがかかったように物が見える→ 糖尿病性網膜症

「糖尿病の治療を受けている60代の男性でした。物がぼんやりモヤがかかって見えるというので診察したところ、網膜から出血していて失明寸前でした」

目がかすむ症状はドライアイなどでも起きるが、何度かまばたきをすれば改善する。

これに対し、常にモヤがかかったように見える場合は視力が低下していることが多いという。

「この男性の場合はすでに手遅れで、手術をしても視力が0.1程度までしか改善しませんでした」

糖尿病の人の場合、内科は受診しても眼科までは受診せず、糖尿病によって血管がもろくなって起きる糖尿病性網膜症を見逃すケースが絶えないのだという。

目に不調を感じたら、すぐに眼科を受診すれば防げる悲劇。あなたもためらわずに受診を。