DCコミックスのヒーローたちのクロスオーバーが本格始動!注目のDCユニバース最新作『シャザム!~神々の怒り~』が3月17日(金)より公開される。“見た目はオトナ、本当はコドモの半人前ヒーロー”の大活躍を描く本作でシャザムが戦うのは、ギリシア神話の天空神アトラスを父に持つ三姉妹。シャザムが“神々の領域”を冒したと激怒した父の命を受け、復讐に燃える“神の娘たち”がドラゴンや巨大モンスターを引き連れて地球に襲来。そんな本作を鑑賞して「めっちゃおもしろかったです」と満面の笑みを浮かべたのは、「聖☆おにいさん」「ブラックナイトパレード」など大ヒット作を手掛ける人気漫画家の中村光。前作『シャザム!』(19)は5回も観たという中村に本作の魅力や見どころを聞いた。

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■「すごいパワーを持っていながら、心の部分はまだ成長途中というアンバランスさが魅力的」

かつて戦いのさなかシャザムが折った“魔術師の杖”を展示中の美術館に、神アトラスの娘、長女ヘスペラ(ヘレン・ミレン)と次女カリプソ(ルーシー・リュー)が出現し、人々を石に変え杖を奪い去っていった。一方、シャザム(ザッカリーリーヴァイ)ことビリー(アッシャー・エンジェル)はグループホームの“家族”と共に、ヒーロー活動に追われる日々を送っていた。杖が折れたことで“神々の領域”が衰退してしまったせいで、シャザムが神々を怒らせてしまい、神の娘たちが復讐のため地球に降臨。脅威を知ったビリーは、神の娘たちに立ち向かう仲間を招集。ところがフレディ(ジャック・ディラン・グレイザー)は転校生のアン(レイチェル・ゼグラー)と仲良くなり、彼女に夢中になっていた…。

ヒーロー映画が大好きという中村にその魅力を尋ねると、「なにも考えず純粋に楽しませてくれるところです」とひと言。「圧倒的に強い姿を見るのが好きだし、来てほしい時に現れたりするお約束もいっぱいしてほしいんです。今回もビルの中を壊しながら戦ったり、物理的な力がかかるシーンは『ヒーロー映画を観てるな!』と実感できてよかったですね。いつも“強さのインフレ”が起きるのを楽しんでいます」と熱弁。シャザムについては「すごいパワーを持っていながら、心の部分はまだ成長途中というアンバランスさが魅力的だと思います」。

まだ幼いだけに、シャザムと仲間たちはヒーロー活動もどこか危なげ。そんな彼らを地元の新聞は「フィラルフィアの恥」とかき立てるが、ディスられても本人たちは他人事のよう。「ほかのヒーローだったらもっと気にして、物語の軸にしそうなところなんですが、『新聞なんか誰も読まないし』とあまり気にしないところが子どもゆえだなって。世間を知らないから、あれだけ軽やかに駆け抜けていけます。そんなところもかわいらしくて好きですね」。

■「実は『聖☆おにいさん』にもビリーと同じファッションのキャラが出ている(笑)」

里親のもとを転々としていたビリーがバスケス家のグループホームに落ち着くまでを描いた前作。ビリーが18歳を目前にした本作では、里親からの巣立ちもテーマの一つになっている。「やっと手に入れた幸せを手放したくない。大切な家族を守ろうとビリーが命を懸ける姿がよかったです。彼はもともと優しい子なので、なにかをしでかし反省して前に進むんじゃなく、来るべき時が来たら、ちゃんと自分で歩みだしていくんですね」と感慨深げ。

また、物語だけではなく、シャザムのファッションもお気に入りだという。「シャツとか着ているものもすごくかわいい。前作のビリーニット帽の上からパーカーのフードをかぶった姿が大好きで、何度も自分で絵に描いたし、友達にも『こんなかわいい子が出てるから観て!』と送ったり。実は『聖☆おにいさん』にもビリーと同じファッションのキャラが出てきます(笑)。フレディも大きなコウモリと小さな鳥が一緒に飛んでる『バットマン』のかわいいTシャツを着ていたり、ファッションを眺めているだけで楽しくなってきます」。

■「アトラスは忍耐強さの象徴なので、“いい人”という印象を持っていたが、怖いアトラスはちょっと衝撃だった」

本作でシャザムと壮絶なバトルを繰り広げるアトラスの娘たち。「話でわかり合えそうにない相手と意外な展開になっていったり、三女アンテアを演じるレイチェル・ゼグラーなどかわいい子がいたりで楽しめました」と言う中村の代表作の一つが、ブッダイエスが下界でバカンスを過ごす姿を描く「聖☆おにいさん」。神話全般が大好きという彼女にとって、本作のギリシア神話というモチーフも魅力的に映ったようだ。「地球を支える姿で有名なアトラスは忍耐強さの象徴なので、“いい人”という印象を持っていました。だから怖いアトラスはちょっと衝撃でしたね(笑)」。

シャザムの前に現れた姉妹たちは、神話の生き物たちを操って街を襲撃する。「西洋の妖怪がたくさん出てくるところもよかったです。ハーピーミノタウロスたちも、ちゃんと怖いデザインになっていました。意外だったのがユニコーンで、黒っぽくて大群で走ってくるところはすてきというよりかっこいい感じ。どんな戦い方をするのかと思ったら、いきなり角でガツーン!そういうことやるんだ!?って(笑)」。

■「『シャザム!』は笑うところもたくさんあるが、私にとっては泣いちゃうジャンルの映画」

そんな本作で特に印象に残っているシーンにあげたのは、クライマックスのビリーの姿。「みんなを逃がしたビリーがひとりで戦う前に、グループホームの母親ローザに『僕、家を出て働くよ』を告げると、ローザが『ずっと家にいていいのよ』と、“親子”のやり取りのところ。母親目線で観ていて、家族っていいな…とめっちゃ泣けてきました。集まってきた人々に『頑張るよ!』と健気に言い残し敵に挑んでいくところもいいですね。大人にほめてほしくて頑張る男の子の心、演じているのはオジサンのザッカリーリーヴァイなんですが、泣きました」。

半人前の“笑えるヒーロー”として絶賛されたシャザムだが、中村にとって「シャザム!」シリーズはなにより泣ける映画だという。「笑うところもたくさんありますが、私にとっては泣いちゃうジャンルの映画です。前作も2周目、3周目は最初から泣きっぱなしで、ビリーがふてくされるだけで『うえーん』ってなっちゃいました(笑)。笑わせてくれる人は好きになれるから、あとはなにをやっても応援できるし、悲しんでいる姿を見るとつらくなる。笑いと泣きが一緒になると最強だなと改めて思いました」。

■「漫画を描く時に、いつも『ジョーカー』のサントラをかけています」

ヒーロー映画はどれも大好きという中村にお気に入りのDCヒーローを尋ねると、意外にダークなテイストが好みだった。「暗いヒーローが結構好きで、映画だと『ジョーカー』がよかったですね。いまは漫画を描く時に、いつも『ジョーカー』のサントラをかけてます。忙しくて見逃してしまいましたが、ロック様(ドウェイン・ジョンソン)の大ファンなので、もうすぐDVDが発売される『ブラックアダム』も楽しみで、毎日インスタのPRを眺めているんです(笑)。あとはバットマンですね。コミックではいろんな人が描いていますが、広い背中から小さな頭が伸びて、雨が降る中ビルの上から街を見下ろしているビジュアルが大好です。バットモービルもかっこいいし、許されるなら漫画でバットマンを描きたいくらいです」。

ジェームズ・ガン率いる新体制でスタートしたDCユニバースにも期待しているという。「私は『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』がむちゃくちゃ好きで、サントラをよく聴いてますし、ドラマの『ピースメイカー』もしっかり観てます(笑)。やってることはすごいけど子どもでも観られるくらいのポップさがあって、ジョークにしているところが好きなんです。仲間たちがみんなヘンで、あのごちゃ混ぜ感もおもしろかったですね。もうすぐ仕事場を引っ越すのですが、大好きなハーレイ・クインのフィギュアを買って飾ろうと思っています(笑)。そんな映画を作ってくれた方なので、DCユニバースも少し違った作品が出てくれたらうれしいですね。例えばバットマンも、あの屈折した感じはギャグにしたらめっちゃおもしろいなと思っているんです(笑)。『ザ・スーサイド・スクワッド』みたいな方向性の作品がもっと増えてくれたら楽しいですね」。

取材・文/神武団四郎

『シャザム!』(19)を5回も観たという、人気漫画家・中村光がDCユニバース最新作の魅力を語る!/[c]2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & [c] DC