「『ツルネ -つながりの一射-』声優陣とウォッチパーティ!」がDMM TVにて3月16日(木)夜8時から無料配信される。「ウォッチパーティ!」は出演声優を招き、アニメ本編を視聴しながらトークを繰り広げる人気コンテンツ。今回の「ツルネ」では、風舞高校弓道部から主人公・鳴宮湊役の上村祐翔、竹早静弥役の市川蒼。辻峰高校弓道部から二階堂永亮役の福山潤、不破晃士郎役の近藤孝行が出演し、第10話を視聴しながら全国大会への道を振り返った。「ツルネ」は弓道を通じて磨かれる少年たちの心身、友情、葛藤を描く青春群像劇。その魅力をキャストたちはどう感じているのか。「ウォッチパーティ!」収録後の4人に聞いた。

【写真】ライバル校・辻峰のブレーン、二階堂永亮を演じる福山潤

■乗り越えた人が諭す言葉の重み

――「ウォッチパーティ!」を収録されてみていかがでしたか?

福山潤オーディオコメンタリーとも違った趣(おもむき)で、お菓子を食べながらまったりしゃべってアニメを観て、楽しい空間でしたね。

上村祐翔:アフレコ以外ではなかなか集まる機会のないメンバーなので、こうやって落ち着いて話せるのは貴重な体験でした。

福山:和菓子とお茶を頂いたんですけど、「ツルネ」的にいったらコーラの方が良かったかもしれないですね(笑)。

――風舞の上村さん、市川さんは第1期から引き続きの出演です。収録でも話されていましたが、改めて「ツルネ」第2期の印象から教えてください。

市川蒼:第1期に続き、“復讐”という言葉が印象に残りますね。第1期ではマサさん(滝川雅貴)が祖父に対して憎悪を抱き、第2期では二階堂が復讐を口にして。特に印象的だったのが10話のこの2人の会話です。過去に復讐を胸に抱えていた人が、今復讐を胸に抱いている人に諭すというところ。乗り越えた人からの言葉って、すごく重みがあります。今の二階堂に届くかは別として、ひと皮剥けた湊はもちろんだし、風舞みんなの成長が見える第2期になっていると感じています。

上村:第1期では、みんなが悩み、試行錯誤をして県大会を勝ち抜いて、そこからの成長がこの第2期でしっかり描かれていますよね。いっとき湊は自分の射形を見失ってしまったけど、彼は弓道に対して常に真っすぐで、いろんなことを吸収して頑張っている。愁(藤原愁)、二階堂先輩との再会はすごく大きくて、県大会、地方大会と全国に行くまでの過程を丁寧に描いていただけたのは嬉しいです。

市川:第2期になって、みんなで話し合うシーンが多くなったと思います。教えてもらっていた段階から自分たちで考えて試してみる段階にきて、本当、「団体戦やってるな」って感じがします。

上村:あと、風舞は女子部員の存在が大きいです。女子たちだって懸命な思いで大会に臨んでいるし、奮闘する彼女たちから息合(いきあい)のヒントをもらうこともありました。風舞高校弓道部は、マサさん、トミー先生、女子部員たちがいて1つになっているんだということを第2期で改めて実感しています。

■異端の辻峰。ヒール役でもしっかり伝えられる部員の友情

――辻峰は第2期からの登場です。作品への印象はいかがですか?

福山:県大会、地方大会ときて、次は全国大会。大会で勝つというのが1つの目標ではありますけど、物語の主軸は弓道との向き合い方、人とどう向き合っていくのかという心の部分なんですよね。10話を終えた時点でまだ全国大会には行ってないというゆっくりした流れですが、それが「ツルネ」の良さでもあると思います。辻峰でいうと、二階堂がなぜ復讐を口にするようになったのか、過去に何があったのかというのを中心に、風舞とは違った立場で「ツルネ」の面白さを伝える役目を持っている。そのドラマを作っている面白さ、演じている面白さというのを強く感じます。

近藤孝行:風舞は成長を見せる主人公チーム、桐先は弓道の王道を体現するようなチーム。辻峰はそこに新しい風を吹かす役割を担っていて、部員の風貌もチームのカラーも全く違います。こういう異端なチームが入ってきたことによって、波乱を呼ぶ面白いドラマになっていますよね。辻峰は言ってみればヒール役ですが、彼らの中での友情をしっかり掘り下げてもらえたことはとても嬉しいです。特に僕の立場でいうと不破はすごくいいやつという感じがあって、たぶん彼は二階堂を興味深く観察しているうちに好きになっていったんだと思います。そして、このまま勝ち進んでいったら二階堂は弓道を止めるんじゃないかという、深いところまで見えていたんじゃないのかな。だから、二階堂が色々なものから解放されるように動いているという感覚がありますね。

■射の美しい演出に感動

――弓道は相手がいない武道です。自分との戦いとも言えますが、作品、役を通して感じたことは何がありますか?

市川:僕も弓道って個人競技だと思っていたんですよ。自分との戦いだと、今でもそういう気持ちはあります。でも「ツルネ」ではずっと団体戦を描いていて、誰かのために弓を引くのもひいては自分のためになるんだというのが見えてきて、弓道に対する印象はずいぶん変わりました。特に第2期は誰もがみんなのために弓を引いているし、みんなが自分のために引いている。一見個人で引いているように見える辻峰もやっぱりみんなのために引いて、そこが成長につながっているんですよね。

近藤:実は僕の親戚筋は結構弓道経験者が多いんです。自分はやっていなかったんですが、家族の弓を引く姿は凛としているなと思って見ていました。「ツルネ」はそうした弓道の凛とした雰囲気、自分と向き合う心理的な部分を、とんでもなく美しい絵で表現しているのがすごい。とにかく美しくて言葉が出ませんでした。

福山:僕は弓道に触れたことはなく、身近に経験者もいなかったので実際の感覚というのは分かりませんが、声優という道を通して僕らも求道的には生きているかもしれないですね。あ、漢字が違いますか(笑)。

上村:似ているという意味では僕も思うところがあって、風舞はみんなで引くことの意味を考えて、前の人の息が次の人の息に連鎖していくという息合について見つめ直しましたよね。僕らもアフレコのときはまさにマイク前で台詞をつなげていくので、気持ちの部分での共通点をすごく感じています。つないでいく緊張感もあるし、つないだからこそ良いものが生まれるという。これは弓道の作品だからこそより感じられることだったと思います。

■分散収録だからこそ明確になる、一緒に録る意図

――他にアフレコで印象に残っていること、裏話のようなものがあれば教えてください。

上村:やっぱり不破の缶コーヒーでしょ(笑)。

市川:僕、その収録にはいなかったんですよ。どういうことなんですか?

福山:上村くんたちは若いから分からないと思うけど、缶コーヒーを下から投げてパッと取るというのは、昭和を生きてきた我々世代にとってはトレンディードラマはなはだしいだろうっていうツボがあるのよ。しかも馴染みすぎているから、「不破って高校生だよな?」っていう物議が(笑)。現場では1つの事件でしたね。

近藤:浅沼(晋太郎)さん(滝川雅貴役)に「缶コーヒー投げおじさん」ってあだ名付けられましたよ(笑)。

上村:あとはマサさんのジャケットTシャツサングラスでウケていましたよね。

福山:あれ、完全にバブルのスタイルだから。

市川:マサさん、23歳なのに。

上村:この記事を読まれる方って若いから、この話分かるんですかね?

福山:「ツルネ的」に言えば先輩が残してくれた遺産なので、ぜひ調べていただければ。原点に触れたときの感動を味わってください。

――アフレコはどのような雰囲気で進んだのでしょうか?

福山:コロナ禍で分散収録になり、「ツルネ」も1話収録に出演者全員が集まるという形ではありませんでした。該当シーンを録る人しかブースにいないので、ハプニングみたいなものは正直いうとないんですよ。ただ、シーンを共有するメンバーだけが集まるからこそ、何を狙っているのかが明確になるというのはあります。例えばこの4人での収録があったとします。ここに静弥(市川)がいるのは意外だけど、必要だからこそ一緒に録る。そうなると、じゃあどんな芝居が必要なのかも明確になってきます。集まる顔ぶれによってシーンと芝居の意図が分かるというのは、分散収録だからこそ得られる発見かなと思います。

――現在11話まで放送され、残すところあと2話となります。クライマックスに向け、風舞代表で上村さん、辻峰代表で福山さんからメッセージをお願いします。

上村:いよいよ全国大会が始まります。風舞も辻峰も桐先も、それぞれに変化があり、成長して力を付け、この大舞台にやってきました。どこが勝って、どこが新しい景色を見るのか全く予想できないでいるんじゃないのかと思います。注目していただきたいのは、やはり射の演出で、とても素敵ですね。第1期からずっと素敵なんですが、全国大会ではそれを上回る映像になっていて、それぞれが成長して得てきたものを投影するかのように、力強さ、鋭さが加わり、乗っている想いを感じられる演出で見せてくれます。もちろんみんなの会話もあって、その中での感動を誘われる場面もたくさんあるので、彼らがどういう風に弓道に向き合っているのかを見届けていただけたらと思います。

福山:今までの積み重ね、ここにたどり着くまでにあったことがしっかり受け取れる映像になっていると思います。そこはもう絶対期待に応えられると思いますし、何よりこの全国大会の中で改めて感じるのは桐先には桐先としての轍(わだち)があって、風舞には風舞の轍があるということ。辻峰は辻峰で担っているものが試合を通してしっかり描かれていきます。11話を観たあとということで、きっと僕らを応援してくれる人は激増しているんじゃないでしょうか。僕はあの11話には、今まで10話を使って描いてきたからこそのカタルシスをものすごく感じました。ぜひ最後のエンディングまで目を離さず観てください。

■取材・文/鈴木康道

撮影/入江達也

「『ツルネ -つながりの一射-』声優陣とウォッチパーティ!」が無料配信/撮影=入江達也