尾上克郎さん

『シン・仮面ライダー』准監督・尾上克郎が語る撮影秘話【BEAMS特撮部】の画像一覧

本誌の人気長寿連載「BEAMS特撮部」。セレクトショップ「BEAMS」の特撮好きスタッフによって結成されたBEAMS特撮部が、毎回特撮に関わる様々な人・現場に取材を行っています。
今回は『シン・仮面ライダー』に准監督として参加した尾上克郎さんがご登場! 撮影秘話をお聞きしました。

尾上克郎さん
1960年生まれ、特撮監督/VFXスーパーバイザー。数々の映画や特撮作品に参加し、『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』には准監督として参加。

准監督とは映画全般に精通した“便利屋”

久芳 准監督って珍しい肩書ですね。

尾上 庵野(秀明)が考えてくれたんですよ。『シン・ゴジラ』のときに僕がいろいろな仕事をしていて、当てはまる肩書がなかったから「じゃあ准監督」って。まぁ、映画のことなら大概のことを知ってる便利屋ですね。今作では、ざっくりと完成までのスケジュールのイメージを組んだのが最初の仕事です。現場では主にカメラマン。あとは庵野といろいろ話したり、現場が悩み始めたら、僕が出ていって現場を動かしたりという感じですね。

久芳 庵野さんは、どんな方ですか?

尾上 ちょっと人見知りだけど、特撮やアニメが大好きな気の良いおじさんです(笑)。2018年の頭に企画書とプロットが僕ら数人に送られてきたのが今作の始まりです。

久芳 ご覧になってどうでした?

尾上 てんこ盛りだな、いっぱい敵(本作ではオーグメントと呼ぶ)を出すなあ、どうしようかなぁ…って、感じですかね。

「ルーティンワークなし」の現場でした

久芳 現場は主に庵野さんのコンテを再現する作業だったんですか?

尾上 いや、『シン・仮面ライダー』にコンテはないです。みんな「今日何を撮るんだっけ?」みたいな(笑)。もちろん撮るべきシーンと撮影の開始時間は決まってますけど、俳優さんが入って、さて何撮りますか?という感じでした。コンテって、便利なところもあるけど、それで決まってしまう危なさもありますから。

久芳 それが庵野組なんですね。

尾上 毎回違うんですが今回はそうでした。彼は「ルーティンワークは嫌だ」とよく言います。「映画だからこのカメラを使うべき」とか、ありもしないルールにこだわるのが大嫌いなんですよ。もっと自由に映画を撮るべきだっていう気持ちがあるんじゃないかな。

久芳 尾上さんはそんな現場を楽しんでいるように見受けられます。

尾上 そうかもしれないですね。日本映画って慣習に縛られすぎているところがあって、そこが僕も嫌だと思うところです。ルーティンにならない現場は面白いですよ。デジタル化が進んで作り方の自由度は増しているのに造り手が決まりごとから抜け出せないのはおかしい。小さくて使えるカメラがあればそのほうが便利だし、デジタルなんだから仕上げだって公開ギリギリまで粘って差し替えりゃいいじゃんって思うんですよ。色んな所に迷惑かもしれんけど、面白い映画になるのならそれでもいいじゃん、と(笑)。

久芳 怖いけど面白いです(笑)。

尾上 商品を作っているので最終的にヒットしなきゃ話にならない(笑)。この考えってすごく大事だと思うんですね。商業映画は商品です。庵野は商品作りを絶対に忘れない作家ですよ。最後まで盛り付けを頑張りますから。

シン・仮面ライダー  info

シン・仮面ライダー

2023年3月17日(金)18時より全国最速公開 (一部劇場を除く)
同年3月18日(土)全国公開
池松壮亮 浜辺美波 柄本佑
西野七瀬/塚本晋也 手塚とおる 松尾スズキ/森山未來
原作 石ノ森章太郎 脚本・監督 庵野秀明
映画公式サイト:https://shin-kamen-rider.jp
映画公式ツイッター:https://twitter.com/Shin_KR

©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

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