みんなが自分の気持ちに区切りをつけ、前へと歩み出す。


「皆が愛おしかった」「出演者みんな素敵だった」「全ての人物が愛おしいドラマ」と反響を呼ぶほど、キャスト全員が役にハマり、毎週優しい時間を届けてくれた『星降る夜に』(テレビ朝日、毎週火曜よる9時)。


14日に最終回を迎え、視聴者からは「来週からもう会えないなんて悲しい」「こんなにロスになる作品は初めて」「もう観られないなんて寂しい」という声が相次いでいる。温かく、幸せ溢れる物語は私たちの心を癒し、いつも背中を押してくれた。

(以下、最終話ネタバレあり)


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寄り添ってくれる人がいるからこそ、人は自分の気持ちに一区切りつけられるのかもしれない。これまで妻を亡くした悲しみを鈴(吉高由里子)に怒りとしてぶつけてきた伴(ムロツヨシ)も、一星(北村匠海)に抱きしめられ、鈴に背中をさすられ歩み出すことができた。一人ぼっちではないということを気付かせてくれて、自分と真摯に向き合ってくれる人がいることの尊さが心に沁みる。



自分のために泣けていない深夜(ディーン・フジオカ)は、妻と住んでいた東京の家を遺品整理することで一歩踏み出すことになる。親友である千明(水野美紀)へ依頼し、「遺品整理のポラリス」の全員の手によって遺品整理は行われた。その場には鈴の姿も。片づける部屋を一室一室見つめながら、深夜は亡くなった妻・彩子(安達祐実)との時間を思い出す。子どもができたと分かった時の喜びや先走ってベビーベッドを買ってしまう深夜を愛おしそうに見つめる彩子の姿、一番最初に見つけたいからという意味で子どもに一星という名前をつけようと決めた瞬間。これまでほとんど映し出されなかった彩子との愛おしく温かい時間が最終話にして溢れ出す。彩子との時間を思い出して辛そうな表情を浮かべる深夜の背中に手を添える鈴。遺品整理をしながら楽しかった頃を思い出して涙を流す千明の背中に手を添える一星。みんなが手を差し伸べ、寄り添いながら深夜の区切りを支える。


「僕が医者になろうと思ったのは 多分…復讐のためです」
第8話で深夜が伴に伝えた言葉の真意が明らかとなる。生きる糧となっていた「自分が医者になれば彩子と子供が なぜ死んだのか 真実がわかるかもしれない」という考え。しかし医者になったからこそ気付いてしまった誰のせいでもないという真実。そしてお産の時に素直に「おめでとう」と言えずに、安堵の気持ちと嫉妬のような気持ちがごちゃ混ぜになって何かに耐えるような眉間にシワを寄せてしまう表情。立ち直っているように見えて実は色々な感情を抱えていた深夜に鈴は「自分のために怒ったり泣いたりしてもいいんだよ」と寄り添う。


深夜の泣き場所とは…。


空っぽの家を一室一室巡り、最後に一星が待つ部屋へ。これだけ確認してほしいと一星が差し出した星柄のボックスの中には、彩子が結婚記念日に深夜に渡そうとこっそり用意していた3つのスニーカー。「これをはいて 3人でいろんなところに出かけようね」と書かれた彩子からの手紙とスニーカーを胸に抱きしめて、深夜は初めて涙を流す。

「どうして…もっと一緒にいたかったのに…」
「息子を抱いて3人で この靴を履いて 歩きたかった...!一緒に歩きたかった…!」

深夜が泣きながら吐き出す想いには、これまで耐えてきた悲しみや自分でも気付かないうちに溜めこんでいた虚しさが詰まっている。ディーン・フジオカの涙を流す演技によって溢れ出す感情に心揺さぶられて涙を流さずにはいられない。声を上げて泣く姿に「思い切り泣けてよかった」「抱き締めてあげたい」「10年分の涙を流せて良かった」と深夜を包み込むような優しい声が相次いだ。


太陽と月と地球みたいな関係だな」
恋とか愛とか単純な名前では語れない関係の一星と鈴と深夜。3人一緒にいても離れていてもその関係は変わらない。一人前になるために鈴から離れなくてはいけないと告げる深夜に、鈴が「遠くにいても そばにいて」と優しく声をかける関係性。「俺は深夜の事 好きだよ」「僕もだよ 一星」と手話で伝え合う関係。そこには言葉では言い表せない絆が存在する。そして一歩踏み出した深夜はもう何かに耐えるような変顔などせず、「おめでとうございます」とにこやかに母親に告げられるようになった。しかし「南優先で考えてみます」と一星に伝えておきながら、北の青森の病院へ転職していた深夜は相変わらず憎めない。一人前に白衣を着こなす姿も様になっているが、お約束のズッコケは新しい病院でも。天然で憎めないところは残しつつ、医師として成長する深夜の姿が眩しく感じる。



そして一星と鈴も。
一星の手話が「雪宮鈴 好きだ」から「雪宮鈴 愛してる」に変わった踏切シーン。「わたしも一星が好き」から「わたしも一星を 愛してる」に変わった鈴の言葉。一星が伝え続けた鈴への愛は、鈴自身も知らないうちに心に染み渡っていったのかもしれない。北村匠海吉高由里子の2人の場面では毎回NCT・ドヨンの挿入歌『Cry』が流れてきて、その歌声とともに幸せな気持ちが体中に染み渡っていくような感覚を味わえる。今回の踏切でのキスシーンでは2人の背景も光り輝き、映像としての美しさも兼ねそろえた。これには「キュンとしすぎました」「鈴と一星もキラキラしてた」と多くの視聴者にキュンを与えてくれた。ラストでは新しい家で一緒に暮らしている一星と鈴の姿が描かれ、2人もまた一歩踏み出す。この2人をもう見られないのはとても寂しいが、仲が良くて可愛らしい姿を最後まで見られたことに幸せを感じる。


人それぞれ目には見えない何かを抱えながら生きている。だけど今を精一杯生きていれば、泣き場所を与えてくれ、寄り添い、そっと包み込んでくれる人たちの存在に気付けるかもしれない。そうドラマを通して教えてくれた『星降る夜に』。心に響く数々のメッセージを私たちはいつまでも心に刻んでおきたい。


一星「元気そうに見えても みんないろいろ抱えて生きてんだ」「明日死んでも悔いがないように 俺は伝え続けるよ」

鈴「こういう人生が正解だってこともないし生きていく場所なんて星の数ほどあるわけだし」「今はとにかく 目の前の事 精いっぱい やるしかないからさ」「自分のために怒ったり泣いたりしてもいいんだよ」

深夜「大丈夫じゃないときは大丈夫じゃないって言ってください」「頼りないかもしれないですが 僕も目の前のことを精一杯 一生懸命 がんばるんで」

院長(光石研)「雪宮先生には今日も精一杯働いてもらわなきゃ困るし 私達はいつもと何も変わらない」「何があっても目の前の仕事に全力投球してたら いつか問題は 解決していくもんだよ」


私たちに寄り添ってくれるたくさんの素敵な言葉たちを胸に、さあ、また一歩踏み出してみようか。


文:SEN


▼これまでの各話コラム

第8話

『星降る夜に』熱演に涙する視聴者続出、泣き場所と寄り添う尊さ 最終回の願い

第7話

『星降る夜に』抜け出せない余韻、セリフのない名演と繋がる言葉

第6話

『星降る夜に』視聴者悶絶のイチャイチャも話題、“全力ド直球”が背中押す

第5話

『星降る夜に』ハマり役キャストに釘付け、北村匠海とディーン・フジオカの絡みに笑いも

第4話

『星降る夜に』キュンと不穏の落差に「感情がジェットコースター」幸せ願う視聴者続出

第3話

『星降る夜に』ワンコな北村匠海にハマる人続出、予想外なディーン・フジオカも魅力

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