不動産価格の高騰は続き「東京で家を持つ」という夢は遠のくばかりですが、一般人であっても勝ち組とされる夫婦であれば2馬力で都心のマンションが実現します。その先に待っているのは明るい未来……とは限らないとか。みていきましょう。

上位10%の勝ち組でも「東京のマンション」を買うのは厳しい

マンション価格の高騰が止まりません。不動産経済研究所によると、首都圏・新築マンションの平均価格は2021年に6,260万円、2022年に6,288万円と2年連続で過去最高を更新しバブル超え。東京23区では平均価格が8,000万円台を超えています。さらに東京カンテイによると、東京6区(千代田区、港区、中央区新宿区渋谷区文京区)の中古マンションの価格は、2023年1月で9,965万円。昨年11月には1億円を超え、現在も高止まりしています。都内平均でも6,395万円ですから、「もはや東京でマンションを買うのは中古でもムリ!」といった状況。郊外へ、郊外へと買える物件を探すしかない、というのが実情です。

そのようななかでも都心の新築マンション購入に意欲をみせるのが、パワーカップル。夫婦ともに正社員で高収入だから「一般人だけど、億ションだって買えちゃいます」という人たちです。

たとえば、夫婦ともに大卒正社員、しかも給与上位10%に入る、まさに「勝ち組夫婦」の場合を考えてみましょう。厚生労働省令和3年賃金構造基本統計調査』によると、大卒正社員の上位10%に入る男性の月収(所定内給与)は、40代前半で58.9万円、女性で47.1万円です。平均的な賞与を手にすると仮定すると、男性は年収970万円、女性は年収777万円。二人合わせて、年収1700万円超え。周囲も羨望の眼差しを送る「勝ち組夫婦」というわけです。

そんな勝ち組夫婦でも、大きく「堅実派」と「イケイケ派」に分かれます。夫婦共働きとはいえ、「一方の収入だけでローン返済を考える」という堅実な夫婦と、「二人合算の収入でローン返済を考える」というパターンです。

仮に夫だけの収入でマンションを買おうとした場合、いくらくらいのマンションが妥当なのでしょうか。ローンが適性か否かを判断する際の基準は「年収倍率」「返済負担率」「完済年齢」の3つ。「年収倍率」は5倍まで、「返済負担率」は20~25%、「完済年齢」は65歳まで、というのが理想的なカタチ。そうすると借入は4,850万円まで、月々の返済は16万~20万円、そして25年までの返済期間で住宅ローンを考える、ということになります。

頭金の平均値である「物件価格の1割」を用意するとすると、勝ち組とされるサラリーマンでさえ、都内のマンションを余裕ある返済プランで購入するのは難しい……そんな夢もない話になります。

勝ち組夫婦は陥りがち…「2馬力だから大丈夫」でハイグレードマンション購入の落とし穴

一方、夫婦合算でマンション購入を考えるとどうなるでしょう。借入は8,500万円まで可能。月々の返済は28万~35万円ほどであれば、余裕な返済プランといえる範疇。勝ち組夫婦が共に協力すれば、マンション価格高騰で騒がれているなかでも、東京都心のマンションを検討できるというわけです。

1馬力であろうと、2馬力であろうと、余裕ある返済プランなのだから考え方次第、というのは早計。「イケイケ派」の場合、余裕と考えていたローン返済がたちまち行き詰まることがあるのは想像のとおりです。

堅実派とイケイケ派、共に余裕ある返済プランの場合、単純に月々の返済額には10万円以上の差が生じます。堅実派であれば片方が収入減となってもカバーすることは容易ですが、イケイケ派だとそうはいきません。収入減がローン滞納に直結し、せっかく購入したマンションを手放さなくてもいけない事態に。世帯年収ベースでローン返済を考えると「年収減少リスク」は途端高くなるのです。

さらにイケイケ派の勝ち組夫婦の場合、適度な返済額を超えるケースが多いと専門家は警鐘を鳴らします。彼らは「グレードの高いマンションに住みたい」という欲が強く、「あっちもいい」「こっちもいい」となりがち。お互いに高収入という背景もあり、「2人で頑張れば大丈夫だろう」という返済プランを組みがちなのです。

よく言われる返済負担率の限度は35%。年収1,700万円であれば、金利年0.5%として、月返済額は50万円ほど、20年返済で1億1,000万円程度の借入が可能となり、よりハイグレードな暮らしが手に入ります。何もなければ確かに返済を続けていくことはできますし、年齢が上がれば年収アップも見込めます。最初は返済が大変でも段々と余裕が生まれてくることも。しかし「年収減少リスクが高い」という状況は、常に隣り合わせであることに変わりありません。

これらのリスクを許容できるか、それとも許容できないかは人それぞれ。「ちょっと背伸びしている感」が出ている勝ち組夫婦の場合、「綱渡り状態」にあることを十分認識して、対策を講じる必要があります。

(※写真はイメージです/PIXTA)