スタッフの人格を否定するような叱責ではなく、本人のどの接客に問題があったのかを指摘するように心がけましょう。コンサルタントの成田直人氏が著書『お客様を「集める」から「集まる」へ 口コミだけで繁盛店を作る究極の集客術』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

自分を傷つける叱責は離職につながる理由

■投稿依頼をして断られた時のフォローアップは「指摘」がカギ

店舗スタッフに対して、「3Sコミュニケーションをとることが重要なのはわかったけど、失敗した時はどうやって叱ればいいんですか?」と聞かれることが多いです。

当然ながら、100人に口コミ投稿を依頼して100人が書いてくれることはまずありません。むしろ失敗体験は少なくないと思っています。

この時にどう接するかで、次のお客様の口コミ投稿率が上がることもあれば下がることもあります。

まずどんな話をすると口コミ投稿率が下がるのか、いやもっと言えば口コミ投稿を依頼することすら嫌になってしまうのか?

それは「人格否定」です。

一番良くない言い方は、「なんでお前だけ口コミが取れないんだ?」という言い方です。他のスタッフにできて該当スタッフができないと比較で叱責することです。

該当スタッフも「自分には才能がない」「自分だけ取れないから向いていない」という自己評価になりかねません。

自分自身を深く傷つけることにつながる叱責をしてしまうと離職につながるのでご法度です。該当スタッフの人格を否定するような叱責ではなく、本人のどの接客に問題があったのかを指摘するようにしましょう。

例えば接客トークで説明中心になっていれば「ずっと話し続けていたけどお客様の話は十分に聞けたかな?」と聞き、話を聞けなかった理由や癖があれば直せばよいわけです。人格を否定せずに指摘するということが大切です。

店舗スタッフに対する見方は「あのスタッフは何を言っても聞かない」や「あのスタッフは仕事ができないから重要な仕事を任せられない」とレッテルを貼ってしまうとその通りの人材になってしまいます。驚くほど店長の思った通りに人は育ってしまうのです。

だからこそ、人格否定をしたコミュニケーションをとるのではなく、あくまでも出来事の棚卸しをして原因を特定し解決していく方法を選択していきましょう。

口コミ投稿を断られることが多い2大原因を紹介します。

①早口で何を言っているのかわからない

口コミの投稿依頼などの慣れていないことは、早口で説明をしてお客様を圧倒してしまうことがあります。お客様も売り込まれたような気分になり、口コミ投稿を断るケースが見受けられます。

この場合は「早口だとお客様は理解しきれないからゆっくり話してみようか」と伝え、口コミ投稿依頼についてのロールプレイングを実施することで話す速度はゆっくりになります。やはり練習は必要です。

②会話のラリーがなく一方的な投稿依頼になる

「お客様、よろしければ口コミ投稿にご協力いただけますか?」と聞いて「いいですよ」と返ってきてから依頼内容について話をするということが重要なのですが、口コミ投稿について一通り説明をして「お願いします」と伝えてしまうパターンです。

この場合は、1文でお客様に確認をとりながら会話を進めるとよいです。

「本日のサービスはいかがでしたか?」 「良かったです」 「ありがとうございます」

このように一つひとつキャッチボールを重ねることで、最終的に口コミ投稿依頼につなげるとうまくいきます。

出来事を指摘し改善案を模索する、店長に求められるのは、スタッフが自分の落ち度に気づき、何をどのようにしたら同じミスをしなくて済むのかのアイデアを得る、支援をすることです。

見つかればその改善案に一緒に取り組み管理することで、口コミ投稿依頼の承諾率を上げることができます。

店舗の目標を達成する一体感は価値がある

■初速を上げる社内キャンペーンの実施

口コミ投稿をしてもらうことでお客様にインセンティブ(特典)をプレゼントすることはNGですが、口コミ投稿を店舗対抗戦にして社内向けにプレゼント(報償)するのはOKです。

例えば、店内スタッフで口コミ投稿数を競い合うのも、初速を上げていく上で効果的な社内イベントです。

私もPCデポアルバイトをしている際に、社内での光ファイバー契約数を競う企画がありました。イベントは大変盛り上がり、結果は残念ながら店内で2位だったのですが、全員が目標達成に向けて活動しお互いにアドバイスをしあって、最終的に店舗の目標を達成する一体感は、チームビルディングの上でも価値が高いです。

目標達成すれば「自分達にもできるんだ!」という自信を植え付けることができるのでぜひ店舗対抗戦(店舗ごとに口コミ投稿数を競う)と店内対抗戦(店舗スタッフ同士が競う)を実施しながら、初期の口コミ投稿を獲得することができれば、スタッフの中に自信が芽生えるでしょう。

ただし、イベントの運用の仕方には注意点があります。

それは顧客接点を持つスタッフと、そうではないスタッフとの口コミ投稿貢献度の採点化です。

例えばパソコンショップ専門店でいうと、パソコンセールスの担当者はインターネットの話がしやすいです。だから1件あたり1ポイントです。

逆に一番インターネットの話から遠いのがレジ担当です。レジでいきなりインターネットの話をするのは難易度が高いので、1件あたり5ポイントと差をつけます。

こうやって獲得をする難易度を考えてポイント化することで、できる限り公平性を保った企画にする必要があります。獲得難易度に応じて1件のポイント数の振り分けは慎重にスタッフと話し合って決めましょう。

店舗内の常駐スタッフが少なく役割を入店から退店まで1人のスタッフが担当するのであれば1件1ポイントでよいと思いますが、パソコン専門店のようにポジションが明確に区分されている場合はぜひこの基準を参考にしてみてください。

続いて店舗間対抗戦についてですが、ここでも同様に公平性を保った企画にしないと競争の意味がなくなってしまいます。それこそ1件1ポイント換算で実施をすると、売上が月商1000万円ある店と100万円の店舗では接客機会も10 倍違うので獲得数に差がでるのは明白です。

売上比率に対して適切なポイント数にして、公平性を保った競争にすることをおすすめします。

ワンサイドゲームにすると敗れたその他大勢の店舗のモチベーションが落ちるので、ポイント配分はとても重要なので慎重に進めていきましょう。

成田 直人 ジャパンブルーコンサルティング株式会社代表取締役

(※写真はイメージです/PIXTA)