その縦スライダーは、「3000万ドル」(約40億円)に相当する。侍ジャパンのメンバーはメキシコ代表の先発投手パトリック・サンドバルについて、もう一度聞き直した方がいい。

 現地時間3月19日(日本時間20日)、侍ジャパンは準決勝の地・米マイアミのローンデポパークで約1時間半の全体練習を行った。

「Watch Out!」

 その後の時間帯を割り振られたメキシコ代表チームと球場通路ですれ違ったのだ。

 大谷翔平選手が「気をつけろ。日本は強いゾ」とジョークを飛ばした相手は、侍ジャパン戦での先発が発表されている左腕・サンドバル。エンゼルスのチームメイトでもある。

 その後、2人は少し談笑してしたが、全て英語。何を話していたのかは聞き取れなかったが、仲の良さは伝わってきた。

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 サンドバルはこれまでの対戦投手とは、格が違うようだ。

 「エンゼルスでは大谷に次ぐ準エースと言っていいでしょう。昨季は6勝(9敗)しか挙げていませんが、それは味方打線の援護に恵まれなかったり、後続投手が打ち込まれたためです。相手打者のバットの芯を外していく変化球主体の技巧派です」(米国人ライター)

 貢献度を数値化するWARは、「3.6」。ア・リーグ投手部門で、13位と高い位置につけている(大谷は5.9で2位)。米メディアは、WARの「1.0」は800万ドルに相当するとも伝えている。ならば、サンドバルの変化球には「40億円強の価値がある」とも解釈できる。

 「得意はチェンジアップと縦に変化するスライダー。昨季後半はその縦スライダーを多投し、対戦チームを翻弄していました」(前出・同)

 しかし、弱点もないわけでもない。制球力に難があるのだ。昨年8月のタイガース戦ではストライク先行で気分を良くし、「マダックス完封」を達成。マダックス完封とは、100球以内に完封勝利を挙げること。

 「相手バッターが早いカウントからチェンジアップや縦スライダーに手を出し、凡打してしまうんです。その反面、ボールカウントが先行し、苦しくなると、甘くなったコースを痛打されています」(前出・同)

 球速は「並み」、打ちごろのスピードなので、変化球にも手を出してしまうようだ。メキシコ戦では、サンドバルをノセないことがポイントとなってくる。

 侍ジャパンをサポートするNPBスタッフによれば、大谷は準決勝、決勝戦ともに「打者」に専念させるという。

 “二刀流封印”の様子は、19日の全体練習でも見られた。シーズン中の大谷は次回先発日を見据えて、キャッチボール、遠投などに時間を割くが、この日は長めに打撃ケージに入り、バットを振り続けていた。

 一次ラウンド中の練習はシーズン中とほぼ同じだったが、マイアミに来て「打者専念のバージョン」に変えたようだ。

 「大谷がサンドバル攻略のお手本のようなバッティングをしてくれたら…」(関係者)

 同僚に飛ばした「気をつけろよ」のジョークは、打者に専念した時の自身のコワサを予告していたのかもしれない。(スポーツライター・飯山満)

大谷翔平