交差点の信号によらず、左折を常時可能とする「左折可」の小式が数を減らしています。もともとあまり一般的ではないため、意味が分かりづらいことが指摘されていましたが、原因はそれだけではないようです。

赤信号で止まらなくていい「左折可」

「左折可」標識が少しずつ数を減らしています。奈良県では3つの交差点で2023年3月17日に規制が変更され、「左折可」が廃止。県内で最も古く「左折可」が設置されたとされる奈良市「県庁東」交差点は、十字路の3方向で「左折可」の標識から左折の矢印信号に置き換わりました。

一方通行」の標識を反転させたような、白地に青い左向きの矢印が描かれた「左折可」の標識は、“たとえ交差点の信号が赤であっても、常時左折が可能”ということを意味します。なお、いわゆる道路標識令(道路標識、区画線及び道路標示に関する命令)に記載されていないため正式には「標示板」にあたりますが、警察の交通規制基準には明記されています。

その目的は交通の円滑化です。左折車が多いため、通常の信号制御では慢性的な渋滞が発生する恐れのあ交差点で、安全性を考慮して実施している――奈良県警はこう説明していました。

ただ、都道府県によって採用にばらつきがあり、あまり見かけないものでもあります。観光地である奈良公園に隣接する県庁東交差点では以前から、慣れないドライバーが常時左折可であることを知らず、途中で止まってしまい危険だという声が寄せられていました。

車にゃうれしい「左折可」なぜ減っている?

奈良県警の場合は、「左折の流入部に横断歩道がない」「流出部が交差道路の直進車と交差しない」「交差する両方の道路とも片側2車線以上」などの条件に合う交差点で常時左折可を実施。2019年の時点では、流入部に横断歩道があって「左折可」としていた交差点などで、順次廃止しているとしていました。

このような場所では、歩行者がいてもなかなかクルマが停まってくれないのだそうです。「左折可」が採用されている他地域でも2000年代以降、歩行者保護を重視した施策のなかで規制が見直されています。

また、「左折可」の交差点は構造によっては、直進しようとする自転車が左折レーンの右側の直進レーンに移ると、道路交通法違反になってしまうという不合理が生じます。そのため、2010年代以降に「自転車は車道が原則」の徹底が打ち出されるなか、自転車がキープレフトを保てない常時左折可の規制を見直す動きもあります。

東京でも「左折可」の交差点はいくつかあります。比較的多くの人が見ていると考えられるのは「環八東名入口」「環八中の橋」交差点でしょう。それぞれ東名高速東京IC出口、中央道の高井戸IC出口から環八通りの北行きへ合流する箇所が常時左折可です。

これらは、左折レーンが交差点手前で直進レーンから分岐しており、もともと直進方向の信号に従うべきか迷うことは少ないかもしれません。しかし環八中の橋交差点や、青梅街道の「四面道」交差点では、途中に横断歩道があります。一方、環七通りなどでは、同じ構造で「左折可」ではなく「一方通行」の標識になっているところも。確かに、この差異はいまいち分かりづらいかもしれません。

なお、「環八東名入口」交差点は以前、環八通り北行から東名IC入口への方向も常時左折可でしたが、こちらは左折矢印信号となり、他のレーンと同じラインに停止線が引かれた一般的な構造に変更されています。

※一部修正しました(2023年3月23日10時56分)。

「左折可」の標識(乗りものニュース編集部撮影)。