日刊SPA!で反響の大きかった2022年の記事からジャンル別にトップ10を発表。今回は集計の締切後に、実は大反響だった記事に注目。年間ランキングで忘れられがちな11月後半から12月31日までに公開した、第10位はこちら!(集計期間は2022年11月後半~2023年1月。初公開日2022年12月30日 記事は取材時の状況)
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8000軒を割り込んだパチンコホール

 年末も迫った11月からスマスロのホール導入が始まり、少なくとも前向きに考えられる出来事で幕を閉じそうなパチンコパチスロ業界の2022年。ただ年が明けたばかりの1月末には、2018年2月の改正遊技機規則施行から4年という経過期間の終了に伴い、大々的な旧規則機(パチンコCR機、パチスロ5号機)の撤去がありました。

 既に昨年くらいから入れ替え経費に耐えられないような中小ホールの休廃業が相次いでいましたが、タイムリミットであった今年の1月末にはファンの間で知名度の高いホールもその波の飲み込まれ、ホール軒数は30年前から半減。警察庁が発表した2021年末のホール軒数は約8500軒ですが、現在は8000軒を割り込んでいるのは確実な状況です。

 さらに休廃業ラッシュは1月末でひと段落したわけではなく、新規則機(パチンコP機、パチスロ6号機)を揃えてその後も営業を継続するんだろうなという姿勢を見せていたホールが、ゴールデンウィーク明けやお盆休み明けといった“かきいれ時”を終えたタイミングで休廃業することも多く、相変わらずホール軒数は減り続けています。

メーカーの倒産とリストラも……

 販売先が減れば、遊技機メーカーだって苦しくなるのは必然です。1月には大手メーカーが希望退職者を募集すると発表、ここ数年の決まり文句的に使われている「業界激震」という言葉とともにのネット界隈を騒がせました。

 さらに5月には中堅メーカーの高尾が民事再生法を申請。もはや業界激震に慣れっこになった関係者も、さすがに業界バランス的に強い立場であろうと思われているメーカーの倒産は間違いなく激震だったと思います。

2015年とは比較できない程の衝撃

 2015年にも2つの中堅メーカーが相次いで倒産するということがありましたが、その時にはこれといったヒット機種もなかったメーカーだけに仕方ないという感じもありましたが、昨今はパチンコが上向きになりつつある状況であっただけに個人的には驚きです。

 余談ではありますが2015年に倒産したメーカーのうち1社は現在もメーカーとして頑張っていますが、もう1社はその時点で廃業を選択。かつての儲けで銀座のランドマーク的なビルも所有していたことでも有名でしたが、今年に入ってそのビルも売却したようです。

ファン人口は微増したが…

 ホールの休廃業の直接の引き金になっているのは旧規則機の撤去と思われますが、ここまでペースが加速しているのは2020年からのコロナ禍も無縁ではありません。ただでさえファン人口が減り続けているなかでのコロナ禍は、業界にとっての大事な顧客である常連高齢者の外出機会を減らし、またリモートワークの普及で「会社帰りにひと勝負」という客層も大きく失いました。

 レジャー白書によると2021年ファン人口は720万人とコロナ禍が始まった2020年の710万人から微増していますが、コロナ前の2019年890万人に比べたらまったく回復していません。ただでさえファン人口を減らし続けている業界にとって、コロナ禍は間違いなく追い打ちになっています。

◆話題沸騰のスマスロで業界は変わるのか

 それでも行動制限が徐々に緩和されるようになった今年は、ホール側からも以前ほどではないものの客が戻りつつあるという声が聞こえるようになりました。7月にはスマート遊技機という、新しい形のパチンコパチスロが盛大に発表され、11月からはパチスロのスマート遊技機であるスマスロのホール導入が始まっています。

◆新たな設備投資が必要でホールに大きな負担が

 出玉情報を一元的に管理することで過度の射幸性を抑制するという目的のスマート遊技機は行政側もお墨付きを与えているようで、型式試験では優遇されているなんていう噂も聞こえてきますが、ホールにとっては新たな設備投資が必要になってしまいます。

 それでも健全化という旗印の下で導入を促すためにスペック面が緩和され、(きっと行政が黙認する程度の)射幸性アップも図られている。その結果、ホール間での争奪戦が繰り広げられて大手を中心に大量導入するホールも少なくありません。その噂はすっかりホールから足が遠のいたスリープユーザーと呼ばれる層にも届いているようで、筆者も友人から「スマスロってどう?」なんて聞かれたりすることが度々。

 思えばパチスロ4号機時代の盛り上がりも出玉が期待できることが発端だけに、業界関係者が期待しているように、もしかしたら好転するのかもしれません。スマート遊技機が出るからということが直接的な理由ではないかもしれませんが、年末に向けてここ数年は聞くことが無かった新店舗の立ち上げという話もチラホラとあるようです。

◆スマスロに続き2023年はスマパチも登場

 まだ「休廃業>新店舗」という感じではあります。ただ、ここ数年の凋落傾向から上昇傾向に転じた年になった……それがパチンコパチスロ業界にとっての2022年であった可能性も少なからずあるのかなと。来年の春には、こちらもスペック面が緩和されたというパチンコのスマート遊技機であるスマパチもホールに登場します。業界にとっても春本番になればイイなと期待していますが、さて2023年はどんな一年になるんでしょうか。

文/キム・ラモー
(初公開日2022年12月30日 記事は取材時の状況)

【キム・ラモーン】
ライターとして25年のキャリアを持つパチンコ大好きライター。攻略誌だけでなく、業界紙や新聞、一般誌など幅広い分野で活躍する。

1月31日をもって閉店したパチンコ店の張り紙。この時期は特に休廃業するホールが急増した