増税のニュースが続く中、自分や家族の生活を守るために「税」に注目する必要があります。税金の意識が低いサラリーマンは、知らないで損をしていることが多いです。YouTube登録者数約35万人超(2023年3月現在)のYouTuberでもある税理士の田淵宏明氏と、本書で聞き手として登場する平岡直也氏の共著『なんで私の給料からイロイロ引かれるの? 税金弱者サラリーマンのお金の取り戻し方』(KADOKAWA)の中から一部を抜粋して紹介します。

iDeCo、(一般)NISA、つみたてNISAに共通すること

[平岡さん]

NISA、iDeCoについて説明します。岸田内閣も、NISAの拡充・恒久化や、iDeCo制度の改革を打ち出しましたね。

[ヒロ税理士]

ここが投資の入り口になりますね。この両者とてもよく似てますけど実は全くの別物!

〈NISA〉 株式や投資信託などでの運用益が非課税になる制度 「(一般)NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA(※2023年末で廃止予定)」の3種類 〈iDeCo〉 個人型確定拠出年金。拠出した掛金を加入者自らが運用し、その運用結果に基づいて給付額が決定される年金制度。拠出額が決められていることから「確定拠出年金(DC)」と呼ばれている。こちらも運用益が非課税。

[ヒロ税理士]

まず詳細をお話しする前に、「iDeCo」「(一般)NISA」「つみたてNISA」(※「ジュニアNISAは未成年対象のため今回は割愛)、すべてに共通することが3つあります。それは

●老後資金の確保目的のもの(※一般NISAは短期運用目的として使いやすい)

●貯金ではなく投資・資産運用のため損することもある

●税制優遇があること

この3者の違いを表にまとめてみました。

NISAとiDeCoの内容は全く異なる

[ヒロ税理士]

NISAとiDeCoは同じようなもの……と考えてる方が多いんですけど、全然内容が違います。NISAの正式名称は「少額投資非課税制度」。

この名の通り、口座を作って、株や投資信託などを買って、値上がり益が出たり、配当をもらったり……という流れです。こうした運用益については、通常は税金がかかるのに、非課税になるのが特徴。

[平岡さん]

この非課税になる……ってやはり大きい?

 [ヒロ税理士]

株式や投資信託の税金は後述しますが、さまざまな税額計算方法があり、20.315%の固定税率に抑えることが可能。この約2割の税負担がゼロになるのは言うまでもなくメリット大きいでしょ?

[平岡さん]

確かにそうやね!

[ヒロ税理士]

“億り人”になっても非課税なので、かなりお得な制度と言えます。一般NISAでは、年間120万円を上限として投資をすることが可能。非課税期間は5年間で、対象となるのは株式や投資信託など非常に幅広い。

一方、つみたてNISAは、基本的には毎月定額を投資していくもの。1年間の投資金額上限は40万円。非課税期間は20年間。対象となるのは金融庁お墨付きの投資信託などで、手堅い商品が多いのが最大のメリット。

老後資金の獲得を目的とした長期投資前提となるものですが、途中で売却して自由に換金することも可能なので、投資初心者にももってこい。ただ、(一般)NISA、つみたてNISAも1人1口座しか持てず、2つの併用はできないのでご注意を!(※いずれか1つと、iDeCoとの併用は可)

さて、ここで朗報です! 令和5年度税制改正大綱が先日発表されたのだが、その中身はほぼ増税だらけ……。その中で唯一評価できるのが「NISAの拡充」だ。「新NISA」と称して2024年以降は次のように制度が大きく変わる! 18歳以上であれば誰でも加入可能だ。

●一般NISAとつみたてNISAが合体する。

●非課税となる期間制限が撤廃され、1,800万円まで生涯非課税となる。

●従来の一般NISAに相当するのが「成長投資枠」であり、投資対象は投資信託や上場株式。生涯の非課税枠は1,200万円。

●従来のつみたてNISAに相当するのが「つみたて投資枠」であり、投資対象は投資信託。生涯の非課税枠は1,800万円。「成長投資枠」を使わずにこの「つみたて投資枠」のみで1,800万円掛けることも可能。

●年間の掛金上限は360万円。うち、「つみたて投資枠」は120万円、「成長投資枠」は240万円。とそれぞれ従来の3倍、2倍となった。

 従来のNISA利用でも、1,800万円の枠はフル活用可能!

[ヒロ税理士]

例えば、保守的に積立枠だけの利用をして月10万円×12ヵ月×15年=1,800万円の投資をするのもよいし、両者を組み合わせてやや積極的に、成長投資240万円×5年=1,200万円と積立月10万円×12ヵ月×5年=600万円の合計1,800万円の投資をするのもよいだろう。

一番驚いたのは従来のNISAを利用していたとしても、この1,800万円の枠はフル活用ができるということ! さらに、この1,800万円の限度枠は従来のように一度使えば消滅するものではなく、購入金額ベースで判定し、一度株式等を売却した場合、その枠の再利用が可能! これは史上類を見ないほどの税制改革と言ってもよいだろう。

[ヒロ税理士]

従来のNISAのお手本となっていた英国のISAでも年間上限額が約330万円なので、それにも勝っている。老後年金2,000万円問題もこれで大部分が解消できるかもしれないね。こんな画期的な税制改正はいままでなかったので、ひょっとしたら近い将来の株式増税の布石かな? と少し疑っている自分もいるが……。

もちろん、あまりに枠が広がりすぎたので、そんなに投資するお金ないよ、という人もいるだろう。ここはヒロメソッドをしっかり守っていただき、くれぐれも身の丈以上の投資は禁物! 生涯1,800万円までは非課税なのだから、何も年間上限360万円にこだわる必要はなく、毎月数万円コツコツ投資するのもアリ!

若ければ若いほど、この新NISAの活用メリットは大きいと言える! 従来のNISAの非課税期間はそのまま有効なので、それはフル活用し、2024年から新制度を利用すれば非常にお得!

ただし、ロールオーバーは不可となっている。従来のNISAについては非課税期間終了後に課税口座への払い出しをするか、一度換金等をした上で移管する必要があるのでご注意を!

※ロールオーバー:非課税期間が終了した際に、保有している金融商品を新NISAの非課税投資枠にそのまま移管すること

iDeCoは個人型確定拠出年金という、年金の上乗せ制度。なので意外にも死亡時の給付や障害給付もあるのだ! 口座を作り、そこで株や投資信託などの購入する中、買う都度、すべて「控除扱い」になります。年間の掛金上限は、会社員か自営業か……などで異なります。

(※画像はイメージです/PIXTA)