2023年3月17日、Nintendo Switch向けに「ベヨネッタ オリジンズ: セレッサと迷子の悪魔」(以下「ベヨネッタ オリジンズ」)が発売となった。その名からもわかるとおり、本作はクライマックス・アクション「ベヨネッタ」シリーズの最新作である。だが、本作はあくまでもシリーズのスピンオフ的タイトルであり、これまでのベヨネッタシリーズとは、あらゆる意味で違った手触りの作品となっている。今回は、そんな「ベヨネッタ オリジンズ」について実際にプレイしたファーストインプレッションをお届けしていこう。

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半人前の魔女「セレッサ」と悪魔「チェシャ」の冒険が始まる。絵本風に描かれるベヨネッタの“原点”の物語



「ベヨネッタ」は、プラチナゲームズが開発を手がけるアクションゲームシリーズだ。2009年にシリーズ1作目が発売され、昨年2022年には8年ぶりのナンバリング最新作「ベヨネッタ3」が発売となった。そんなシリーズの主人公といえば、圧倒的な存在感を放つ魔女・ベヨネッタだ。クールでセクシーなベヨネッタが繰り出すド迫力のアクションと、映画のクライマックスシーンが連続するような息つく暇もない怒涛のバトルによって、“∞(ノンストップ)クライマックス・アクション”というジャンルが掲げられたベヨネッタシリーズは、世界中のゲーマーたちを魅了し続けている。

 

※「ベヨネッタ3」より

 

今回紹介する「ベヨネッタ オリジンズ」は、シリーズの主人公である最強の魔女ベヨネッタが、まだ「セレッサ」と呼ばれる少女だった頃の物語を描いた作品だ。ベヨネッタシリーズが描く時代よりもはるか過去を舞台としており、まさにシリーズの“原点(オリジン)”となっている。

 

そんな本作の大きな特徴は、淡いタッチで描かれた絵本のようなビジュアルだ。スタイリッシュでクールな世界観と美麗な3Dグラフィックが特徴であるこれまでのベヨネッタシリーズとはガラリと変わって、本作はまるで童話の絵本のような暖かみのあるビジュアルで描かれており、物語の見せ方も、ページをめくったり読み聞かせのようなナレーションが挿入されたりと、絵本風の演出が随所に施されている。



ゲームの紹介に入る前に、まずは本作のあらすじから紹介しよう。


本作の主人公は、光の一族“ルーメンの賢者”と闇の一族“アンブラの魔女”の間に生まれた少女、セレッサ。両一族は厳しい掟でお互いを遠ざけていたが、掟を破った賢者と魔女の間に生まれたセレッサは、「不浄の子」としてまわりの魔女に忌み嫌われながらも、牢獄に幽閉された母親に会いに行くことをただひとつの希望として生きていた。



しかし、セレッサが10歳を迎えた日、母親はさらに深い闇の底に封印されることとなってしまう。

 

それから月日が流れ、少しだけ成長を遂げたセレッサは、町外れに住む魔女・モルガナのもとで暮らしながら、強い魔女となって母を助け出すために厳しい修行に打ち込んでいた。そんなあるとき、毎晩のように見る母との別れの悪夢に、見知らぬ不思議な少年が現れ、アヴァロンの森に行けば母を助ける力をあげると告げられる。



人を襲う妖精が住む危険なアヴァロンの森には決して近づいてはいけないと、モルガナから固く禁じられていたが、どうしても夢の少年が忘れられなかったセレッサは、その言いつけを破って森の中へ足を踏み入れる。険しい道を進んで行く中、突如現れた不気味な妖精たちに行く手を阻まれたセレッサは、覚えたての悪魔召喚術を使うがうまくいかずに窮地に陥ってしまう。だが、すんでのところで黒い獣のようなものに助けられるセレッサ。


その獣の正体は、セレッサの召喚術によって魔界から呼び出された、大きな悪魔だった。しかし、本来は魔女の髪に宿って顕現するはずの悪魔は、セレッサの術が未熟だったために、彼女が抱いていた大切なぬいぐるみ「チェシャ」に取り憑いてしまう。



こうして、母を助けたいセレッサと、魔界に帰りたいチェシャは、それぞれの目的のためにアヴァロンの森を一緒に冒険することになるのだった……というのが、本作のあらすじだ。

 

無類の強さを持つ最強の魔女・ベヨネッタの、泣き虫で半人前な少女時代を垣間見ることができる本作のストーリーは、シリーズのプレイヤーに新鮮な気持ちを与えてくれる。また、母への切なる想いや、悪魔が憑依したぬいぐるみ・チェシャとのかけ合いなど見応えもたっぷりで、まさに絵本を読む手が止まらないかのように、ぐいぐいと物語に引き込まれていく。

左手でセレッサ、右手でチェシャを操作! ひとりで“2人協力プレイ”を味わえる独特のシステムが大きな魅力


それではここからは、本作のゲームシステムについてじっくりと紹介していこう。

 

本作はフィールドを探索しながら先へと進んでいく、アクション・アドベンチャーゲームだ。プレイヤーは、セレッサとチェシャの2人を操作して、謎や仕掛けを解いたり敵と戦ったりしていく。こう聞くと「2人専用ゲームなの?」と思われる方もいるかもしれないが、そうではない。本作は、なんと“ひとりのプレイヤーが2人のキャラクターを同時に操作する”という、一風変わったシステムになっているのだ。そして、これこそが本作最大の特徴なのである。



というわけで、まずはセレッサの操作から見ていこう。


セレッサの基本操作は、LスティックとZLボタンが主となる。つまり、ざっくり言えば“左側”を用いるのがセレッサだ。ベヨネッタといえばパンチやキックや銃撃で華麗に敵をなぎ倒していく“最強の魔女”だが、幼いセレッサはまったく攻撃をすることができない。後の姿とは打って変わって、セレッサはなかなか心もとない存在だ。



そんなセレッサが行えるアクションは、ZLボタンで使える「魔導術」だ。踊りながら対象に魔力を込める、アンブラの魔女の基本的な術である「ウィッチパルス」で仕掛けを解いたり、魔界の茨(いばら)を召喚して敵を捕まえる「イバラバインド」で敵を足止めしたりなど、サポート的な立ち回りがメインとなる。なお、セレッサには体力ポイントが設定されており、体力がなくなると命を落としてしまうため、敵の攻撃を受けないように位置取りに注意しなければならない。



いっぽう、チェシャはRスティックとZRボタンを主に用いて操作する。つまり、セレッサとは逆の“右側”である。さらに立ち回りについても、攻撃できないセレッサとは逆で、チェシャは鋭い爪を用いた敵への攻撃がメインとなる。なお、チェシャは体力が尽きてもぬいぐるみに戻るだけで、しばらくセレッサが抱きかかえることで復活可能なので、セレッサの盾になるべくガンガン戦っていくことができる。

 

つまり、攻撃がチェシャ、補助がセレッサという役回りなのだが、この2人の協力プレイをひとりのプレイヤーが同時にこなすという点が、本作最大のポイントとなっているのだ。ちなみに、セレッサとチェシャは離れすぎてはいけないという制限があるため、位置取りにはくれぐれも注意しなければならない。



フィールドには、セレッサのウィッチパルスで仕掛けを解除しなければ進めない場所や、チェシャの爪でしか壊せない障害物が用意されるほか、魔除けに使われるローズマリーの花が咲く場所は悪魔のチェシャは通行できないなど、さまざまなギミックが待ち構える。セレッサとチェシャそれぞれの特性を生かし、試行錯誤しながら謎解きをクリアしていく必要があり、バトルとはまた違う意味での“協力プレイ”が必要となるのだ。なかには、チェシャをぬいぐるみ状態に戻してポイッと高所に放り投げて進むという凝った仕掛けもあり、謎解きとしての難易度も十分。うまく突破できたときの爽快感もバツグンだ。



先述のとおり、基本的に左手でセレッサ、右手でチェシャを操作するわけだが、セレッサがぬいぐるみ姿のチェシャを抱える「ハグモード」では、セレッサひとりの操作に集中することができる。モードはボタンひとつでいつでもシームレスに切り替え可能なので、通常の探索ではハグモードを使い、チェシャの力が必要なときには2人を別々に操作する「アンリーシュモード」にするなど、状況に応じて使い分けるとよいだろう。


なお、ハグモード時はRスティックを使ってぬいぐるみ姿のチェシャを伸ばすことができる。これを使うと隠されたアイテムを取得することもできるので、気になる場所や初めて訪れた場所ではとりあえずRスティックをグリグリしてチェシャを動かしまくってみるといいだろう。ちなみにこの伸びているチェシャ、かなりかわいいので必見である。



ココがスゴい! 「ベヨネッタ オリジンズ」の筆者的推しポイント3選


さて、ここからは、本作における「筆者的推しポイント」を紹介していこう。

1,左手と右手で2人を別々に操作する新鮮なプレイ感覚

なんと言っても、本作最大の特徴にして最大の醍醐味はこれだと筆者は考える。左手でセレッサを操作し、右手でチェシャを操作する独特のプレイ感覚は、慣れない間は脳と手が混乱してしまうものの、プレイしているうちにどんどん慣れていき、いつの間にかスイスイ操作できるようになっている。この、自分の脳と手がだんだんと連動していく感覚は、本作でしか味わうことのできない唯一無二の体験ではないかと思う。

 

プラチナゲームズが手がける作品といえば、爽快感あふれるアクションが魅力だが、本作「ベヨネッタ オリジンズ」もまた、このユニークな操作感覚によって、これまでのベヨネッタシリーズとはまったく異なる角度の“爽快アクション”が楽しめる作品になっていると言えるだろう。



2人で協力プレイができるゲームは世に数あれど、本作のように「ひとりで協力プレイをする」ゲームというのは、かなり珍しいのではないだろうか。とはいえ、Nintendo Switchのタイトルであるという本作の特性を活かして、Joy-Con(L)、もしくはJoy-Con(R)を家族や友人に手渡して、「リアルな2人協力プレイ」も一応、可能である。ゲームのコンセプトからすれば、ひとりで二人を操作するギクシャク感を味わうことこそ大きな楽しみだと言えるだろうが、遊び方のひとつとしてはアリかもしれない。

2,思わず見とれ聞き惚れる、作り込まれた絵本風演出

水彩画風に描かれた幻想的なグラフィックも、本作の大きな魅力のひとつだ。セレッサとチェシャが冒険を繰り広げる、メインのゲーム画面はもちろんのこと、さまざまな設定を行うシステム画面や、登場人物や敵の詳しい情報を閲覧できるアーカイブ画面など、ゲーム内の隅から隅まですべてが徹底して絵本のようなビジュアルで統一されており、見ているだけでも楽しい。画面や項目を切り替える際にページがパラパラとめくれたり、水彩絵の具が「じわっ」とにじむように画面が表示されたりといった、ていねいに作り込まれたエフェクトの数々も、本作の絵本風の世界観への没入度を高めてくれる。



そんな絵本的な演出の中で筆者が最もグッときたのは、物語のナレーションだ。本作は、随所で絵本を読むような形でイベントシーンが挿入される。キャラクターのセリフ部分に関しては、当然ながらキャラクターの声で読み上げられるのだが、そうではないいわゆる“地の文”については、ナレーションが読み上げてくれる。このナレーションが、淡々としたシステムチックなものではなく、寝る前に子どもに絵本を語り聞かせてくれるような、深みと暖かみのある声(ナレーター:谷 育子)で語ってくれるのである。思わずノスタルジーを感じてしまうこのすばらしいナレーションは、ぜひ、実際にプレイして自身の耳で体験していただきたい。


3,アクションが苦手でも安心の細かなオプション設定

「左と右で別々のキャラクターを操作する」という本作の特徴を聞くと、なんだか少しややこしそうで、難易度が高そうなイメージを持つ方もいるだろう。アクションゲームがあまり得意ではないというプレイヤーは、本作の絵本風のビジュアルや世界観に魅力を感じながらも、その独特な操作方法を知ってプレイを敬遠してしまうかもしれない。しかし、安心してほしい。本作は、難易度を非常に細かく設定できる作りになっているのだ。

 

たとえば、セレッサがギミックを解除する際などに行う「ウィッチパルス」というアクションについて、通常はプレイヤーがタイミングよくLスティックを倒す必要があるのだが、オプションでこのスティック操作を省略する設定にできる。実際にプレイしてみると、これだけでもかなり難易度に違いが出ることを体感できるだろう。



さらに、敵の強さにも「ふつう」「よわい」だけではなく、さらにその下の「へなちょこ」の設定があったり、セレッサとチェシャが受けるダメージ量には「ふつう」「すくなめ」だけではなく、すべてのダメージを0にする「うけない」という大胆な設定まで用意されている。これらはゲーム中にいつでも自由に変更できるので、遊びながらいろいろと設定を試して、自分にあったプレイスタイルを見つけることが可能だ。本作は、この行き届いたオプション項目の存在によって、ゲーム上級者から初心者まで幅広いプレイヤーが存分に楽しめる作品となっているのである。



シリーズファンにもシリーズ未プレイの人にもオススメできる、良質なアクションアドベンチャー


というわけで、「ベヨネッタ オリジンズ」のファーストインプレッションをお届けした。

最強の魔女ベヨネッタの原点を知ることができるストーリー、細部まで作り込まれた絵本風のグラフィックとゲームを盛り上げる美しい音楽、そしてセレッサとチェシャの2人を操作するユニークなゲームシステムと、独自の魅力がたっぷりと詰まった「ベヨネッタ オリジンズ」。アクションゲームが好きな人も苦手な人も、そしてベヨネッタシリーズをプレイしたことがある人もそうでない人も、幅広く楽しめる作品となっている。製品版へセーブデータを引き継げる体験版も配信されているので、気になる方は、まずは体験版から試してみてはいかがだろうか。

筆者:百壁ネロ
ゲーム買いすぎちゃう系フリーライター。現在積みゲー300本以上。小説家でもあります。著作は「ゆびさき怪談 一四〇字の怖い話」(PHP研究所)、「ごあけん アンレイテッド・エディション」(講談社)など。
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絵本が紡ぐベヨネッタの過去の物語……。2人をひとりで操作する新感覚アクション・アドベンチャー「ベヨネッタ オリジンズ: セレッサと迷子の悪魔」レビュー