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次世代EVに歴史的な車名をつける理由

フォードは、フォルクスワーゲンのMEBプラットフォームを採用した次世代電動クロスオーバーに、「カプリ」の名を使用する構えだという。英国のタブロイド紙、ザ・サンが報じている。

【画像】「米国らしさ」打ち出す新世代フォード【欧州向け新型エクスプローラーとかつてのカプリを写真で見る】 全56枚

カプリという名称は、欧州フォード1968年から1986年まで販売していた2ドアのスポーツモデルに由来する。マスタング欧州版とも呼ばれ、長年親しまれてきた人気車種である。フォードはこの名称を約40年ぶりに復活させる可能性がある。

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新型「カプリ」はどのようなクルマになるだろうか。(画像)は予想レンダリングCG    AUTOCAR

昨日、新型電動SUVとしてエクスプローラーが発表されたが、こちらも北米を中心に人気の高い車種の名称を使っている。新型エクスプローラーは、フォルクスワーゲンのMEBプラットフォームをフォードとして初めて採用したEVだ。

新型「カプリ」は来年初めに公開される見込みで、エクスプローラーより小型のクロスオーバーとなると考えられる。

AUTOCARはエクスプローラーの発表に際し、欧州フォードのデザイン責任者であるアムコ・リーナーツ氏にインタビューを行ったが、その中で歴史的な名称の重要性についても聞いている。フォードは電動化を進める中で、人々に馴染み深いネーミングに重きを置いているのだ。

リーナーツ氏はフォードに入社して11年になる。現在はエクスプローラーを皮切りに、電動化においてブランドを導く役割を担っている。

重要なポイントは、歴史的な名称を再利用することと、ノスタルジックなデザインに必ずしも関連性はないということだ。「レトロなデザインは、わたし達を前進させるものではありません。常にまったく新しい解釈をすること、それが面白いのです」とリーナーツ氏は語る。

例えばエクスプローラーは、米国で販売されている従来車とは(パワートレインもサイズも)全く異なるモデルだが、リーナーツ氏は、アクティブな顧客と機能性に焦点を当てている点は両車とも同じだと言う。

今後、どの名称が復活するのか、どの新型車に与えられるのかは明らかではないが、リーナーツ氏は「古い名称が持つ公平性と新しい解釈の間の緊張感」を楽しんでいるとのことだ。

フォードはすでに「プーマ」をクロスオーバーに、「マスタング」を電動SUVに再利用しているため、ここ数年ファンの間で熱い議論が交わされてきたテーマである。

最終的には、「他社にはない独自の視点」を活用し、「新しい領域にネームプレートを持ち込むことは、世間に喜ばれる」とリーナーツ氏は考えている。

「つまらない」と言われて傷ついた

しかし、名称はよく知られていても、デザインはそうではない。エクスプローラーは、「アドベンチャラス・スピリット」の旗印のもとに構想された新しいデザイン言語の第一弾であり、内外装ともに、これまでのフォード車と直接関連するような要素はほとんどない。今後すべてのEVも同様のデザインアプローチを採用する予定だ。

同様に、新世代の「カプリ」はスポーツ性を強調しながらも、家族向けのコンパクトクロスオーバーとして背の高いモデルとなるだろう(2ドアの可能性は果たしてあるだろうか?)。パワートレインについては、同じMEBプラットフォームを共有するエクスプローラーと同様のものが採用されるはずだ。

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欧州向けに販売する新型エクスプローラー    フォード

リーナーツ氏は、電動化が始まったことで、1990年代後半の「ニューエッジ」以来となるデザイン改革の機会を得たと説明する。

「わたし達はまず、『お客様はわたし達をどう見ているのだろう』ということを調査し始めました。わたし自身、自分たちのブランドをポジティブに捉えすぎていると感じていたので、自分たちの本当の姿を確認する必要がありました。だから、お客様と一緒に仕事をするようになったのです」

「本当に傷ついたのは、『つまらない』と言われたことです。そこで、わたしはこの部分に取り組むことにしました。『明確に差別化された、誰も持っていないような独自の視点を持ったクルマのデザインを提案しなければならない』と考えたのです」

例えば、新型エクスプローラーが既存のプーマやクーガに似ていないのは、これまでにないフォードの「米国らしさ」を伝えるというコミットメントによるものであり、同時にフラットフロアでエンジンのないEV用プラットフォームがデザインに与える自由度が高いことを証明するものでもある。

「EV(のデザイン)言語は、自動的に簡略化されました。大胆なプロポーションスタンス、よりシンプルな表現だけでなく、より高価で、よりプレミアムで、より親しみやすいと感じられるようにできるのです。そして、フォードアグレッシブなクルマではなく、気軽に好きになれるクルマを目指しています」

「ワクワクするような製品を作りたい。本当に好かれるものを作りたい。そのためには美しい造形が必要で、目立つけれども、愛着がわくようなディテールが求められます」

EVデザインの落とし穴で、避けたいものはあるかと尋ねると、リーナーツ氏はこう答えた。「世の中には、ちょっと頑張りすぎて、最終的に家電のようなデザインになってしまう製品もあると思うんです。落とし穴は家電デザインですね。家電のように見えるのではなく、セクシーでなければなりません」


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