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 アメリカのアイダホ州で、死刑囚の死刑執行の予備手段として、銃殺隊を復活させる法案が可決された。

 銃殺刑は、同州が薬物刑に使用するための必要な薬を入手できない場合にのみ、執り行われることになるという。

 現在、薬物刑に用いられる薬が不足しているために、死刑囚の処刑が何度も延期されていることから、今回の法案が可決されたようだ。

【画像】 一度州法から外された銃殺刑を再び復活させる動き

 過去、アイダホ州には処刑のための銃殺隊が存在していた。

 1982 年に死刑囚を処刑する際の選択肢の1つとして導入されたが、米国最高裁判所がより一般的に使用されている薬物刑を支持した後、2009 年に銃殺刑は州法から外され、実施されることはなかったそうだ。

 しかし先月、共和党ブルース・スカウグ下院議員によって、銃殺刑を復活させる法案が提出された。

 今回の提案は、州が昨年末にジェラルド・ピッツート・ジュニアを処刑できなかったことも一因だと言われている。

 現在、末期の膀胱がんやその他の衰弱性疾患を患っている66歳のジェラルド・ピッツート・ジュニアは、1985 年に金探鉱者2人の殺害に関与した罪で死刑判決が下され、ほぼ40年にわたって死刑囚監房で過ごしている。

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薬物注射による処刑が困難となっている現状

 先月、アイダホ州最高裁判所は、3月23日にピッツートの死刑執行を命じる死刑執行令状を発行したが、控訴審の裁判官は2週間前にピッツートに執行猶予を与えた。

 処刑に必要な薬物が、入手困難な状態となっているからだ。

 アイダホ州では、長年にわたり薬物における処刑が実施されているが、最近では薬物の入手が困難となっており、予定されていた処刑がすでに何度も延期されているという死刑囚が少なくないという。

 同州のブラッド・リトル知事は次のように述べている。

ピッツートの残忍で、無意味で、無差別な殺人事件の深刻さは、極刑をもって罰せられるべきです。

国家は、裁判所が命じた公正な判決を、完全に執行する能力を持たなければならなりません。

アイダホ州で銃殺刑が復活する法案が可決

 3月13日、アイダホ州議会は死刑囚の死刑執行手段となる薬物の入手が困難な場合のみ、今後銃殺刑を復活させる法案を可決したことを発表した。

 現在、法案はアイダホ州リトル知事の署名待ちだ。リトル知事は、死刑を支持している人物の1人として知られている。

 死刑の唯一の合法的な方法である薬物刑で使う薬物が入手できないばかりに、州の死刑判決が無効になってしまう可能性があることについては、法案支持者から懸念の声もあがっているようだ。

 13日の上院討論会では、法案の共同提案者であるダグ・リックス州上院議員がこのように述べた。

ここでは、死刑を科すべきか否かのメリットについて話しているのではありません。

致死注射薬を見つけるという州の困難は、今後も「無期限」に続く可能性がある。

これは正義に関するものです。私たちの刑事制度は適切に機能し、罰則が課せられるべきです。
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製薬会社は「薬を命を奪うために使うべきではない」と主張

 一方で、製薬会社は、「薬は命を救うためのものであり、奪うためのものではない」と、死刑執行人が薬を使用することに抗議の声をあげている。

 また、ワシントン D.C. の非営利団体「死刑情報センター」エグゼクティブディレクターリチャード・ディーターは、処刑に銃殺隊を使うことは「残忍なメッセージ」を送ることになると言う。

銃殺隊の復活は、残酷で異常な処罰と見なされる「古い処刑方法」に戻るだけです。

アイダホ州は、今後法廷で多くの挑戦に直面する可能性が出てくることでしょう。

これは、アイダホ州が製薬会社と医療界に圧力をかけ、薬物注射による死刑執行に必要な薬と専門知識を提供するための取り組みだと思います。

 ディーター氏は、昨年アメリカで 18 件の処刑が行われ、そのすべてが薬物注射によるものだったと付け加えた。

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 しかし、この18回の処刑のうち約7回は、処刑チームがIV(中心静脈)ラインを設定できず、処刑がキャンセルされたり、数時間遅れたりするなど、何らかの問題があったようだ。

上院でも賛否両論の声

 法廷では、死刑に処せられた連邦受刑者の一部の弁護士が、銃殺は実際にはペントバルビタールよりも迅速で痛みが少なく、溺死に似た感覚を引き起こすと主張した。

 一方専門家は、銃殺隊に撃たれた死刑囚は、10秒間意識を保つことができ、特に骨の粉砕と脊髄の損傷に関連して、激しい痛みを伴うことになると口にする。

 共和党員のダン・フォアマン上院議員は、銃殺隊による処刑は、処刑を実行する人々、それを目撃する人々、そしてその後片付けをする人々にトラウマを与えるだろうと述べている。

私は銃撃の余波を見てきましたが、それを目撃した人は誰でも心理的に傷ついています。

私の意見では、銃殺隊の使用はアイダホ州の尊厳に反するものです。

 現在、このように賛否両論の声が寄せられているが、銃殺刑は州が死刑執行令状を発行してから 5 日以内に薬物注射が利用できない場合、または裁判所がそれを違憲と判断した場合に、実施される可能性を持つことになる。

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アイダホ州、全米で銃殺刑を認可する5番目の州になるか

 最終的に知事の署名が得られれば、アイダホ州は銃殺隊による死刑執行を採用するアメリカで 5 番目の州になる。

 アイダホ州矯正局は、銃殺隊の処刑のための部屋を建設または改築するには、約 750,000ドル(約9900万円)の費用がかかると見積もっている。

 なお、死刑情報センターによると、現在はミシシッピ州、ユタ州、オクラホマ州、サウスカロライナ州で、他の処刑方法が利用できない場合に銃殺隊を許可する法律がある。

 ただし、サウスカロライナ州は同矯正局が、感電死または銃殺隊による 4 人の死刑囚の処刑を永久に禁止するという判決を下したことから訴訟問題に発展していて、その結果が出るまで、銃殺刑は現時点では保留されているようだ。

 また、ユタ州は2010 年に銃殺刑を執行した最新の州となっている。

References:Idaho lawmakers approve bill that could allow firing squad executions/ written by Scarlet / edited by parumo

 
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アイダホ州で銃殺刑を復活させる法案が可決される(アメリカ)