一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週はフィリピンの主要産業であるOFWに加え、REITについて最新動向をみていきます。

OFW…2023年は「4%成長」の見込み

フィリピン中央銀行・BangkoSentralngPilipinasBSP)が発表したデータによると、銀行を経由した現金送金は、前年同月の26億7000万ドルから27億6000万ドルに増加しました。前月比では、現金送金の伸びは2022年12月の5.8%から3.5%に鈍化しています。

またBSPは、今年の送金が4%成長すると予想しています。陸上勤務のOFWは1月に21億9000万ドル相当の送金を行い、前年同月の21億ドルから4%増加し、海上勤務のOFWからの送金は、前年同月の5億6500万ドルから1.8%増の5億7600万ドルになりました。フィリピンで生活する家族がインフレの上昇に対処しなければならなかったため、OFWは、1月に多くの現金送金を行った可能性があります。

一方、ヘッドラインインフレは、12月の8.1%から1月には8.7%に加速しました。これは過去14年間で最速であり、10ヶ月連続でBSPの目標値である2〜4%を上回っています。

食品と燃料の価格を除いたコアインフレ率については、12月の6.9%から1月は7.4%に急増しています。また、クリスマス休暇明けに、有利なペソ・ドル為替レートになったことが、より多くの送金を行う要因にもなったようです。

国別にみていくと米国、サウジアラビア、日本、シンガポールからの送金が、1月の現金送金の増加に大きく貢献しました。全体の約半分にあたる41.9%が米国からの送金で、以下、シンガポール(7.2%)、日本(5.9%)、サウジアラビア(5.9%)、英国(4.8%)、アラブ首長国連邦(3.2%)の順でした。1月は上位10カ国からの送金が全体の8割を占めています。

今年後半には、世界経済のリセッション入りにより、送金のペースが鈍化するとの見方もあります。反対に、リセッション入りしても低コストで質の高いフィリピン人に対する需要はむしろ増え、現金送金は増加し続けるかもしれないという見方もあります。

BSPのデータによると、現金送金は2022年に過去最高を記録し、2021年の314億2000万ドルから昨年は3.6%増の325億4000万ドルに達しています。

フィリピン下院、REITの再投資義務付けの法案を可決

法案は、REITのスポンサーやプロモーターが、REITを売却して得た収益を再投資することを奨励し、フィリピンインフラプロジェクトの推進を目指しています。またスポンサーまたはプロモーターが実現した収益を受け取ってから1年以内に、フィリピン国内で再投資することが義務付けられます。

REITに譲渡された収益不動産の対価として発行された他の証券、またはスポンサーやプロモーターがREITに収益不動産を売却して得た資金も再投資の対象となります。また、REITは上場時に、フィリピン証券取引所と証券取引委員会に再投資計画を提出し、再投資計画が遵守されていることを証明するために、毎年認証を受けることが義務づけられます。

フィリピンのREIT法は、2009年に制定されましたが、その厳しい規則のため、制定後10年間、REITの上場はゼロ。2020年1月にようやくREITの要件を緩和し、REITが上場されました。今回の法案が、REITのさらなる拡大に繋がるのかどうかみていきたいと思います。

現在、フィリピンでは、大手不動産ディベロッパーや再生可能エネルギー会社がこぞってREITを上場しており、AREIT、CiticoreEnergyREIT、DDMPREIT.、FilinvestREIT、MREIT.、PremierIslandPowerREIT、RLCommercialREIT、VistaREITという8つのREITが上場されています。

写真:PIXTA