相鉄新横浜線」「東急新横浜線」の開業で、東急の車両が相鉄へ乗り入れるようになりました。東武や西武につづき、東急車が走る路線はさらに広くなりました。

東急の直通先がさらに拡大

2023年3月18日(土)、相鉄と東急をつなぎ、新たな新横浜駅アクセスをもたらす「相鉄新横浜線」「東急新横浜線」が開業を迎えました。

これにより、東急の車両が新横浜駅を経由して、相鉄線の海老名駅湘南台駅へも乗り入れるようになりました。さらに一部時間帯には、東急との直通とは無関係である「相鉄本線横浜駅方面」へ東急の車両が乗り入れるダイヤも組まれています。

東急の車両はもともと各方面へ直通運転し、首都圏のあちこちで目にする状況ですが、それがさらに拡大した形です。東急車の「活動範囲」はどこまで広がったのでしょうか。

東急新横浜線東横線目黒線田園都市線(73.4km)

東急で他社線と相互直通運転を行うのは4路線あり、最初の例は1964(昭和39)年、中目黒駅を介した東横線地下鉄日比谷線直通でした(現在は直通廃止)。そのあと1978(昭和53)年に地下鉄半蔵門線の渋谷~青山一丁目間が開業し、田園都市線が乗り入れてくるようになりました。

2000(平成12)年には地下鉄南北線三田線が目黒まで延伸し、目黒線と直通運転を開始します。当初は武蔵小杉まで、そのあと日吉まで乗り入れ区間が延伸し、新横浜線の開業でさらに相鉄方面へ足を伸ばしています。

相鉄新横浜線、本線、いずみ野線(42.2km)

日中など基本的には目黒線が本線(海老名方面)へ、東横線いずみ野線湘南台方面)へ乗り入れます。両駅で小田急と接続する形であり、「都心~横浜西部」の乗客輸送で、東急と小田急ライバル関係の構図が作られました。海老名から東武の小川町まで行く直通列車は走行距離が116.4kmにもおよび、首都圏でも有数の長距離列車の誕生となりました。

横浜高速鉄道みなとみらい線(4.1km)

2004(平成16)年の開業とともに、東横線との直通運転を開始。もともと東横線横浜駅からさらに南の高島町駅桜木町駅へ伸びていましたが、この区間は廃止。横浜駅へやって来る東横線は1便をのぞいて全列車が元町・中華街行きとなっています。

広大な直通先ネットワーク

東京メトロ副都心線半蔵門線南北線(50.0km)

副都心線半蔵門線も、当初から直通運転を前提に計画・建設された路線。どちらもほぼ全列車が東急線からの直通列車です。田園都市線は渋谷から二子玉川まで地下を走っているため、半蔵門線から乗りっぱなしだと、いつ東急に入ったのか車窓から気づかないこともあります。

田園都市線の車両は長らく8500系がほとんどでしたが、2002年5000系デビュー。その翌年に押上経由で東武方面への直通が開始されます。そのほか、超レアな存在として東横線から転属した8590系もわずかに直通用に運用されていました。

都営三田線(26.5km)、埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線(14.6km)

先述のとおり、目黒延伸とともに東急目黒線の乗り入れが開始しました。この時にやってきたのが、三田線南北線乗り入れ用に設計されデビューした東急3000系電車です。これまでの東急車両とは全く異なる造形で「東急らしくない顔」との声もありました。

3年後に運行開始した目黒線の新車が5080系で、これは逆に東横線田園都市線でお馴染み5000系シリーズの一環で「東急らしい顔」となりました。いずれも、東急新横浜線を経由して、相鉄へ乗り入れています。

東武東上線伊勢崎線日光線108.6km)

東急車が一気に広い世界へ羽ばたいたのが、東武への直通開始です。埼玉方面へ広大なネットワークを持つ伊勢崎線系統のうち、田園都市線からの乗り入れ列車は南栗橋、久喜まで足を伸ばしています。「中央林間~渋谷~南栗橋」の列車は走行距離98.6kmにもおよび、東急線内ではありえなかった長距離運転が実現しました。

さらに2013(平成25)年に副都心線が開業すると、東上線直通で「元町・中華街~渋谷~池袋~小川町」という長距離列車も誕生。走行距離は101.3kmにもおよび、ついに東急車が100kmを超えるロングランに就いたのです。

ちなみに、廃止された東横線地下鉄日比谷線の直通運転では、東急車は北千住までの運行で、東武線へは乗り入れていません。

西武有楽町線池袋線狭山線(44.5km)

2013年副都心線の開業で、東急車は東武だけでなく、西武へも乗り入れを果たします。「元町・中華街~渋谷~練馬~飯能」の走行距離は80.9km。さらに長大な「元町中華街~西武秩父」という総距離114.0kmの列車「S-TRAIN」もありますが、こちらは西武の車両が使用されています。

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これら東急車の乗り入れ路線長を合計すると337.4km。これは東京駅を起点にして、西は愛知県三河安城駅、北は仙台の手前(舘越駅)まで到達する距離です。さらに相鉄いずみ野線湘南台からさらに西の寒川方面へ延伸する構想もあり、「銀と赤の車両」はますます勢力を拡大していくかもしれません。

ちなみに、「過去に東急を走っていた車両」も含めると、「東急帝国」は全国規模におよびます。昔懐かしい東急の銀の電車は各地へ譲渡され、長野電鉄北陸鉄道石川県)、大井川鉄道静岡県)、富山地方鉄道など枚挙にいとまがありません。

相鉄いずみ野線に乗り入れる東急の車両(乗りものニュース編集部撮影)。