2023年1月より始動したDMM×2.5次元の新プロジェクト「2.5次元的世界」作品として、全惑星★激あまやかしバラエティ「箱入りミュータント」が配信中だ。2.5次元舞台で活躍する5人の俳優が、地球に不時着した個性的な宇宙人たちを演じる独特なバラエティの本作。今回はインタビュー前編として、あざとくてあくどいキャラのニャンを演じる長妻怜央、負けず嫌いヤンキーのアチチを演じる石川凌雅に話を聞いた。本作が初共演となる2人だが、息はぴったりの様子。作品の見どころや収録の裏話から、2.5次元というジャンルの魅力までたっぷり語ってもらった。

【全身写真】こだわりの独特な衣装にも注目のツーショット

■お互いの印象、石川は「アドリブが破天荒」長妻は「お芝居にすごく真面目」

──お二人は今回が初共演となりますが、お互いの印象はどのようなものでしたか?

長妻怜央 『ACTORS☆LEAGUE 2022 in Basketball」で初めてお会いしたのですが。すごく気さくに話しかけてくれて。年下かと思っていたら年上でビックリしました。それくらい天真爛漫な心を持っていて、すごく話しやすいです。

石川凌雅 天真爛漫なのは、怜央くんのほうです。

長妻 いやいやいや!

石川 僕も普段はボケるタイプなんですけど、怜央くんといると「ちょっと落ち着いとかなきゃ」っていう気になります(笑)。それまでの印象は、それこそバスケですごく活躍されていてカッコ良いなって。

──今回「箱入りミュータント」で一緒に作品を作っていく中で、その印象に変化はありますか?

長妻 いや、変わらないですね。アチチのキャラクターもあると思うのですが、アドリブが結構破天荒なんですよ。その感じがすごく好きです。

石川 僕は、お芝居に関してはめちゃくちゃ真面目なんだなっていうイメージを持つようになりました。

長妻 (しかめっ面をする)

──長妻さんがものすごい顔をされていますが(笑)。

石川 たぶん、まっすぐに褒められるのが苦手なんだと思います。撮影でも、楽屋とかでは常にふざけているんですよ。でもお芝居になるとすごく真面目で。共演して、その両方が見られた気がしています。

長妻 ……恥ずかしいです。今のくだり、カットでお願いします(笑)。

──しっかり使わせてもらいますね(笑)。そもそも、最初にこの「箱入りミュータント」の話を聞いたときはどう思いましたか?

石川 「なんだこれー!」って(笑)。一回台本を読んだだけじゃ、どういう作品なのか、この先どうなっていくのかが全く想像できなくて。でも、だからこそ楽しみでした。

長妻 僕は、こういうバラエティチックなお芝居を今までやったことがなかったので楽しみでしたし、実際にやってみたら、想像の何十倍も楽しくて。いろいろなお芝居を見られて、吸収するものもめちゃくちゃあって、すごく勉強になります。

石川 僕も撮影はすごく楽しくやっています。怜央くんもそうですし、他の皆さんも普段から会話が面白くて。その感じがお芝居にも乗っかっています。

■実はバックボーンまで想像して演技している

──同じミュータント役として、本田礼生さん、松田昇大さん、寺山武志さんもご出演されていますが、3人との共演はいかがですか?

石川 僕は怜央くん以外、ほかの皆さんは初めましてで。

長妻 えー!そうなんだ。

石川 そう。逆に怜央くんは?

長妻 僕ね、本田礼生さんは共演したことがあって。松田昇大くんに関しては親交があって、よく舞台を観に行っています。寺山さんだけ初めましてで。それにしても寺山さんは、マジでめっちゃ面白いですね。

石川 めっちゃ面白い!お芝居でも面白いし、楽屋でも面白くて。全部受け止めてくれるんですよ。

長妻 ね!

石川 怜央くんが暴走しかけてもちゃんと受け止めてくれるし、ちょっとしたボケも拾ってくれるし。それを見て僕も微笑ましい気持ちになっています(笑)。

──そんな楽しげな現場ということですが、石川さんはアチチ、長妻さんはニャンを、それぞれどのようなキャラクターだと捉えて演じていますか?

石川 やっぱりベースにあるのは“箱入り”ということ。大事に大事に育てられてきたので、甘えん坊で、そのぶん遠慮がなかったり、わがままになっちゃう部分があるというのは大事にしたいと思っています。

長妻 僕は普段、結構考えてから役に挑むのですが、今回は撮影を繰り返すたびに理解が深まっていくという感じで。今日の撮影でも新しく思ったことがあって。ニャンって、最初からずっと地球を征服したがっているんです。だからその理由を考えていて、もしかしてニャンにはお母さんがいないんじゃないか、お母さんは地球人によって殺されちゃって、だから地球を征服したいんじゃないかと思ったんです。それでわざと地球に不時着するようにしたんじゃないかなって。

石川 なるほど。

長妻 たぶん、この話を(総合演出の小林)顕作さんに話したら「違う」と言われると思うんですけど(笑)。

──でも、ご自身の中ではそういったバックボーンまで想像していると。

長妻 そうですね。ふざけた話だけど、そういうところまで考えるとさらに面白くなりそうだなと思って。

■「箱ミュ」は「星の王子さま」みたい

石川 毎回、1話の最後にその回のテーマについて話し合うコーナーがあるんですけど、そこで結構深い話になるんですよ。だから、意外と「箱入りミュータント」は壮大なテーマが隠されているのかもしれないです。

──観ている私たちは地球人だから当たり前に思っていたことも、ミュータントたちから見たら当たり前じゃない。だからこそ改めて考えるきっかけになる。それが「箱入りミュータント」の本質かもしれないですね。

長妻 「星の王子さま」みたいですよね。面白おかしく演じているけど、実は観ている人の等身大を写しているみたいな。自分でも刺さることが結構あるなと、演じながら思っています。

──お二人とも撮影が楽しいとのことですが、「箱入りミュータント」で難しさを感じるところはありますか?

石川 舞台っぽい作り方で、ある程度つなげてお芝居しなきゃいけないんですけど、舞台と違って稽古がない。舞台の大変さと、テレビの大変さが混ざったみたいな感じがあって、特に最初は苦労しました。

長妻 セリフ的な難しさはそんなにないですけど、映像といえども、細かくカット割りするわけじゃなくて、つなげて撮るので、そこは難しいですよね。どうしても、毎回どこかしらに反省点がありますね。本当はもっとテンポも速くしたいし。

石川 うまくいかなかったとき、怜央くんが一番悔しがっているんじゃないですかね。一回一回の撮影で経験値を上げようとしているのを感じます。

長妻  全然悔しがってないですよ!

石川 嘘つけ!(笑)ファンの方がそういう姿を見たらキュンとするんだろうなと思います(笑)。

■見てほしいのは「人生で発したことのないセリフ」「細部までのこだわり」

──お二人の良い空気感が伝わってきたところで、「箱入りミュータント」の見どころを教えてください。

石川 見どころは、予想のつかない展開と、個性豊かなキャラクターが織りなす、今までに見たことのない“ミュータント劇場”ですかね。きっと新しい感性に触れることができると思うので、期待して見てください。

長妻 ミュータントって、だいたい想像するのはグレーで、頭がデカくて目が真っ黒な見た目だと思うんですけど、ここに出てくるミュータントの見た目はほぼ人間。日本語もしゃべるし。そんなミュータントはここでしか見られないんじゃないかなと思います。

──お二人の「僕のこういうところを見てほしい」というポイントもあれば、ぜひ聞かせてください。

石川 今までの人生で発したことないセリフが結構あって。1話のピザを食べるシーンでは、長細く切ったピザを食べて「細うまい!」と言うんですけど、そんな言葉言ったことないし(笑)。演じていても面白いので、見てくださる皆さんにも楽しんでもらえたらうれしいです。

長妻 僕は衣装ですね。見えていないですけど、インナーがピチピチのキャミで(笑)。上に来ている衣装はスーパー銭湯の館内着をイメージしているらしいんですよ。

石川 へぇ!

長妻 細部までこだわりが詰まっているので、見ている方もいろいろ探しながら見ていただけたら何回でも楽しめるんじゃないかなと思い……思いたいです!(笑)。

石川 セットも小道具もかわいいしね。

長妻 そうそう!

■2人が考える2.5次元の魅力とは?

──この作品は、DMM TVオリジナル番組企画「2.5次元的世界」の1作です。普段から2.5次元舞台にも出演されているお二人は、2.5次元作品の魅力や面白さをどういうところに感じていますか?

石川 マンガやアニメの、想像の中にしかなかったものが、直接目の前で見られるというのが一番の大きな魅力だと思います。演じる側としては、キャラクターと同じ衣装を、しかも本気で作られた衣装を着られることですかね。こんな贅沢なことはないじゃないですか。着る側も「本物だ!」と感動しますし、お客さんにも本物感を感じてもらえたときに「2.5次元っていいな」と思います。

長妻 マンガとかアニメって、キャラクターに感情移入しながら観ることが多いけど、実際にそのキャラクターになってみると、意外とそうじゃないんじゃないかなと思うことが結構あって。2.5次元作品ではないんですが、以前出演した舞台『タンブリング』に、試合が終わって、勝ち負け関係なく達成感から全員が「よっしゃー!」と喜ぶ場面があって。そのときに「全員が全員『よっしゃー!』ってなるかどうかはわからないな」と思ったんです。喜んでいるにしても「よかった……」と噛みしめるように喜ぶ人もいるわけだし。物語は主役目線で描かれていますけど、キャラクターそれぞれに深みが出る。それが2.5次元舞台の魅力なのかなと思います。

──当たり前ですが、キャラクター1人1人に感情があるということを思い出させてくれるのが2.5次元舞台だと。

長妻 はい。マンガやアニメだと一枚の場面に切り取られるけど、舞台だと俳優がずっと舞台上に存在しているから、映っていないシーンや描かれていない瞬間に、あのキャラクターはどういう顔をしていたんだろうと考えながら演じることで、より深くなるなと思いました。

──では最後に、お二人の俳優としての今後の目標や展望を教えてください。

長妻 毎回、作品に出るたびに「お芝居、すごく大好きだな」って思うんです。中でも僕が好きなのは、お芝居なのか、お芝居じゃないのかわからないような作品。そういう意味では「箱入りミュータント」はそれに近くて。「本当に笑っているのか、お芝居で笑っているのかわからない」というのが僕にとって一番の褒め言葉。そういう言葉をもらえるような俳優を目指していきたい。自分が納得できるようなお芝居ができる俳優になっていきたいです。

石川 同じかも!僕は「男はつらいよ」シリーズがすごく好きなんですが、あれもセリフなのかアドリブなのかわからないなと思うシーンがいっぱいあるんです。ああいう芝居ができる俳優になりたいというのは、僕も理想像の1つです。“演技している”という感じじゃなくて、本当にそこに生きているような役者になれるように僕も頑張りたいと思っています。

■取材・文/小林千絵

撮影/友野雄

『箱入りミュータント』に出演の長妻怜央(左)、石川凌雅(右)/撮影=友野雄