(撮影=菊島明梨)

 Non Stop Rabbit(以下、ノンラビ)が、東京・豊洲PITで『PITやんなきゃ始まらねぇだろ TOUR2023〜あの日と違う事はたった一つ、俺たちはメジャーアーティストになった〜』を開催した。豊洲PIT公演は、当初2020年3月に予定していた公演で、新型コロナウイルスの感染拡大を考慮し、中止となった幻の公演。ツアーは1月27日名古屋ボトムラインを皮切りに、ツアーファイナル豊洲PITまで、全国8ヵ所を回るというもの。最新曲「吐壊」や「全部いい」など全20曲を披露し、今のノンラビを余すことなく届けた。笑いあり感動あり、喜怒哀楽が詰まった本公演の模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

今日の景色ハンパないな

(撮影=菊島明梨)

 赤い照明がサーチライトのように会場を照らす中、ファンは開演を待ちわびていた。開演時刻になり暗転。ミラーボールが光を反射させ高揚感を煽るなか、3人が登場し晴人(Ba.Vo)が「昔あるとこにウサギとカメがいました。あの日敗れたウサギはこう思いました。俺たちはもう止まらない――」と伝え、オープニングを飾ったのは、インディーズラストアルバム『細胞分裂』の1曲目に収録されている「PILE DRIVER」を投下。

 早くもクライマックスのような盛り上がりを見せ、オーディエンスのクラップの一体感が印象的だった「乱気流」と、ノンラビがこのライブにかける想いがひしひしと伝わってくるパフォーマンス。そして、バンドの決意表明とも言えるナンバー「BIRD WITHOUT」で、オーディエンスの心を掴んでいく。間髪入れずに「私面想歌 」へと流れ込む構成で、あっという間に序盤の4曲を駆け抜けた。

 達也と晴人の怪談話から、太我は安定の下ネタを混ぜたエピソードトークで楽しませ、達也が「僕らに愛を届けられますか?」とオーディエンスに投げかけ、「推しが尊いわ」を披露。続いて、太我によるずっしりとしたピートと、サビの音圧が心地よい「全部ブロック」とクールなナンバーでテンションは高まっていく。

 晴人は「初めてライブをした時にやった曲です。その時お客さんが1人2人しかいなくて、それと比べると今日の景色ハンパないな。(ステージに)出てくる前に話していたんだけど、一番始まりとあの時と同じ気持ちで今日やろうということで、あの時の気持ちを忘れずに心を込めて歌いいます」と「夏の終わり」を届けた。抒情的なギターアルペジオに、情感を込めた晴人の歌声が響き渡る。そして、「最後のキス」、ノンラビ初のアニメタイアップドラゴン、家を買う。』のエンディング主題歌の「静かな風」とミディアムナンバーで、エモーショナルなノンラビを提示し、オーディエンスを扇情。

 ここで、『デスゲームのコーナー』へ。クイズに負けた1人が虫を食べさせられるという過酷なもの。先に2問正解で免除されるのだが、このツアーで達也と太我は1回ずつ、残りの5回は晴人が罰ゲームを受けているという。ノンラビにまつわる質問で、大きな盛り上がりを見せ、最下位は一問も正解できなかった達也が、「めっちゃ毛が生えてるもーん」と、タランチュラのケーキをビビりながらも食す。咀嚼する音が会場に響くと、客席から悲鳴が飛び交った。達也は「あかーん!」と叫びながら袖に引っ込み、そのヤバさが伝わってきた。

 盛り上がりを見せたゲームコーナーに続いて、“壮大なナレーション!?”による前振りから人気ナンバー「豆知識」を披露。達也と晴人ははエイリアンに捕獲されたような着ぐるみを着用し、太我は金色の全身タイツで途中から合流。ためになる豆知識を音楽に乗せて届け、「偏見じゃん」と、わかりみが深すぎるナンバー楽しませてくれた。

(撮影=千佳)

 そして、ノンラビの本質ともいえるハードなロックチューンで、『転生賢者の異世界ライフ ~第二の職業を得て、世界最強になりました~ 』オープニング主題歌の「無自覚の天才」、さらにメジャー1stシングルとしてリリースされた「三大欲求 」で会場のテンションも爆上がりだ。

一旦全てをぶっ壊すのに相応しい場所

(撮影=菊島明梨)

 達也は「この豊洲PITは、一旦全てをぶっ壊すのに相応しい場所だと思うので、好き勝手歌って帰りたいと思います。次の曲はただただ俺たちが好き勝手いうだけの音楽です。どう聴いてもらっても構わない。これが俺たちなので」と語り、最新曲の「吐壊」を投下。パワフルなサウンドと共に今の心情をストレートに吐き出し、ロックバンドとしてのアイデンティティを全力でぶつけ、ライブは後半戦へ。

 「アンリズミックアンチ」、達也と晴人のツインボーカルで「Needle return」とダンサブルなナンバー続けて披露。オーディエンスもビートに乗って、手を掲げ盛り上がる。そして、「この曲でブチ上がりに来たんでしょ?」と達也が煽り「Refutation」で、ボルテージは最高潮まで高まっていく。

(撮影=菊島明梨)

 達也は「この景色が見たかった。感無量だね。昔から知ってる人はよく耐えたと思うし、新たに知ってくれた人もこんな世の中になってなかったら知ってくれなかったかもしれない。両者共に感謝したいと思います。3年前はここでやる予定だった。そんな状況で絶望に叩き落とされた記憶は消えないけれど、一生懸命ツアーを回ってきました。逃げなくて良かった。やめないで済んで良かった。まだ3人で一緒にいれて良かったなと本当に思います」と、再びこの場所でライブができたことを噛み締める。

 続けて「それと同時にここでやらなきゃいけない曲があったんだよ。この曲のために、このツアーを回ってきたと言っても過言ではない。この3年間嘘ついてばっかり、変に大人になることばかり上手くなって、大人の顔色を伺って、やりたい曲じゃなくても『これで売れるのなら』と身を削って作って。でも今日でやめる。やりたいことをやりたいと思ってここに立っています。そんな自白をしたのは俺が25歳の時。まだケツが青かった俺たち。でも、あの時の青さを俺たちは忘れてはいけない。まだ俺たちには足りていないことが一つあります。まだまだ売れたい。こんなもんじゃない。まだまだ足りないんだよ。曲を作ってから4年。僕も29歳、大人になりました。でも、今日だけは子供に戻ります。今年一生懸命に曲を作って絶対に大スターになるので、見ておいてください。このステージに立っている瞬間だけは、死ぬことよりも何かを残したい」と熱く語り、「二十五の自白」を届け、確固たる信念を我々に届けてくれた。

 達也は「今日という日がみんなにとって、何かのきっかけになりますように。そう願っています。すべてのことは何かに繋がっている。そう思ってお互い生きていきましょう。ここにいるすべての人の幸せにつながります」と、全てを肯定してくれるナンバー「全部いい」を披露。そして、路上ライブ時代からやっていたという「PLOW NOW」を最後に演奏。オーディエンスの振り上げられた手と歌声がえも言われぬ一体感を作り上げ、ライブは大団円を迎えた。

(撮影=菊島明梨)

 達也は「俺らが輝く場所はここだな。みんなと会えて良かった」と告げ、その言葉からもわかるように最高の一夜となった。さらに、12月1日にZepp Shinjuku (TOKYO) でのワンマンライブも発表された。このライブを経てどのようなどんな姿を我々に見せてくれるのか、ますます未来への期待を寄せずにはいられない。

セットリスト

Non Stop Rabbit『PITやんなきゃ始まらねぇだろ TOUR2023〜あの日と違う事はたった一つ、俺たちはメジャーアーティストになった〜』

3月11日@東京・豊洲PIT

1.PILE DRIVER
2.乱気流
3.BIRD WITHOUT
4.私面想歌
5.推しが尊いわ
6.全部ブロック
7.夏の終わり
8.最後のキス
9.静かな風
10.豆知識
11.偏見じゃん
12.無自覚の天才
13.三大欲求
14.吐壊
15.アンリズミックアンチ
16.Needle return
17.Refutation
18.二十五の自白
19.全部いい
20.PLOW NOW