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 お菓子の家ならぬ「じゃがいもの家」だ。そう遠くない未来、火星や月に基地や住宅が作られ、人類が移住するかもしれない。その建築材料として「じゃがいも」が注目されているのだ。

 とある研究チームが火星や月の基地を作る宇宙コンクリートを開発した。そのレシピが、食卓でお馴染みの「ジャガイモ」と「塩」、「月や火星の砂塵」なのだという。

 これらを組み合わせることで通常のコンクリートよりもはるかに強度の高いコンクリートになるのだそうだ。

【画像】 じゃがいもを使ったコンクリートに高い強度

 以前、月面基地に使うコンクリート宇宙飛行士の尿で作っちゃおうという研究があった。

 だがいくら最先端技術だったとしても、尿の建物はちょっと嫌だろう。今回、『Open Engineering』(2023年3月13日付)で発表された宇宙コンクリートは、もう少し衛生的なので安心だ。

 そのレシピこそが、「じゃがいも」と「塩」「火星・月の砂塵」なのだ。開発した英マンチスター大学の研究チームは、それを「スタークリート」と呼んでいる。

 しかも従来のコンクリートよりも高い強度があるという。

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じゃがいもで作った宇宙コンクリートスタークリート」のサンプル / image credit:Aled Roberts.

じゃがいもに含まれるでんぷんが接着剤代わりに

 なぜじゃがいもが硬いコンクリートになるのか? それはじゃがいもに含まれる「でんぷん」と塩が、火星や月の砂塵の粒子を結びつける自然な接着剤になってくれるからだ。

 そうしてできるスタークリートなら、厳しい宇宙の環境に耐え、人間が住めるしっかりとした建物になってくれる。

 それは妥協の産物などではない。なにしろ火星の砂塵から作られたスタークリートは、72メガパスカルの圧力に耐えることができる。これは通常のコンクリートの2倍以上の強度だ。

 月の砂塵で作ったスタークリートなら、91メガパスカルとさらに頑丈だ。

 ちなみに、研究チームが尿で作ったコンクリートは、40メガパスカルまで耐えたそう。こちらもかなり優秀だ。

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高い強度を持つ宇宙コンクリートを試作 / image credit:Aled Roberts.

材料の一部を現地調達。火星や月の資源を生かす

 だがスタークリート最大のメリットは、火星や月で材料を調達できることだ。砂塵ならその辺りにいくらでもあるし、じゃがいもも宇宙飛行士の食料として現地で栽培される。

 ちなみに乾燥させたじゃがいものでんぷん25キロで、200個のレンガを作れるという。

 3LDKくらいの基地を建てるには、7500個のレンガが必要なので、じゃがいもが900キロくらい必要な計算だが、乾燥重量なので実際はもっと多く必要だろう。

 だが火星で家一軒建てることを思えば、それほどの量ではないだろう。

 おかげで、地球から重い建設資材を運ぶ必要がなくなり、建築効率は大幅アップ、ついでにコストも大幅に下がる。資材を現地調達できるのだから持続可能でもある。

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高い強度を持つ宇宙コンクリートを試作 / image credit:Aled Roberts.

地球でも使用可能

 ちなみにスタークリートは、宇宙で使うだけでなく、地球上で使ってもかまわない。

 かまわないどころか、普通のコンクリートより強く、環境に優しく、しかも持続可能な建材であるとのことだ。

 じゃがいもで作られた宇宙のコンクリートは、まだまだ研究が必要で、火星や月で暮らす人類が本当にじゃがいもの家で暮らすかどうかはわからない。

 だが食べてよし、住んでよしなのだから、じゃがいもを見る目も大きく変わるんじゃないだろうか。

 問題なのは、地球でコンクリートにする場合、じゃがいもを大量栽培しなければならないことかもしれない。

References:Cosmic concrete made from salt, dust, and potatoes could build a base on Mars / Martian Cities Could One Day Be Built From Potatoes And Dust / written by hiroching / edited by / parumo

 
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火星の基地は、じゃがいもが原料の宇宙コンクリートで作られる可能性